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次の日。


お弁当を食べ終わってメグちゃんとおしゃべりをしていると


「琴美!二人三脚の練習しに行こうぜ!」


と、宗が目の前にやって来た。




ひぇー。


女子の視線がすごいんですけど?




「た、体育祭までまだ日にちあるしー・・・。」


「何言ってんだよ。そんな暢気な事言ってたら、


 1位なんて獲れないぞ?」




ぐは・・・っ。


1位取る気?




「やるからには1位にならないとな?」


宗はニッと笑い、


「というワケでさーさー練習、練習。」


・・・と、あたしの手首をガシッと掴んだ。


そしてそのまま、あたしは宗に手を掴まれたまま


教室から連れ出されてしまった。






宗はあたしを屋上に連れて来ると、


「もしかして怒ってる?」


と、あたしの顔を覗き込んだ。




「・・・。」


あたしは無言で宗を睨みつけた。




「あ、別にいいよ?琴美が嫌なら誰かと変わってもらっても。」


宗はそう言うと、


「そのかわり・・・俺とキス。」


翡翠色の瞳を意地悪く輝かせて、


あたしの顎に手をかけると、クイッと軽く顔を上に向かせた。




このチャラ男め・・・。




「・・・する。」




「え・・・キスする?」


宗はニヤッと笑って顔を近づけてきた。




ばか。




「二人三脚。」


あたしはスルリと宗の腕の中から抜け出した。




「あ、二人三脚ね。」


すると宗はちょっと残念そうな顔をした。




アタリマエダロ・・・。




「・・・んー、それにしても、やっぱ屋上は気持ちいいなぁー。」


宗は軽く伸びをしてフェンスに寄り掛かり、空を見上げた。




そーだねー。


今日はいい天気だしねー。




・・・て、あら?




「宗、練習やらないの?」




「えー、だって体育祭までまだ日にちあるじゃん。」




・・・おぃ。




さっきあたしが同じ事言った時、なんて言ったのよ?




「1位獲るんじゃなかったの?」


「大丈夫、大丈夫。」




・・・何が?




「俺と琴美なら練習しなくても1位獲れるって。」




こらこら。




「あたし、運動神経皆無なんだけど・・・。」


「そこは俺の愛でカバーするから平気。」




・・・よくもまぁ、そんなセリフがしれっとした顔で言えるなぁ・・・。




「じゃ、何の為にココへ来たの?」


「琴美とおしゃべりする為。」




・・・へ?






・・・で、結局、あたしと宗は練習もしないで他愛もない話をした。


青空が広がる屋上で。




まぁ・・・たまにはこーゆーのもいいかもね。


あたしも別に二人三脚の練習がしたかったワケじゃないし。






それから一週間後、私と宗はようやく真面目に二人三脚の練習を開始した。


体育祭の3日前になってから・・・というのはもちろんクラスの女子達には言えない。






―――体育祭当日。




二人三脚しか出ないあたしは、ひたすらみんなの応援。


うちのクラスのチャラ男二人は結構いろんな種目に出ていた。


その度に黄色い声援が飛び交う。


チャラ男は基本的に運動神経がいいのか、


高杉くんも宗もだいたいどの種目に出ても1位か2位でゴールしていた。




そういえば中学の体育祭では高杉くんが何かの種目に出る度に


一々ドキドキしてたっけ・・・。




今はなんとも思わないなー。




こんなにすんなりと高杉くんのコト、吹っ切れたのはなんでだろう?


高杉くんの為に伸ばしてた髪を思い切ってばっさり切ったからかな・・・?


それとも・・・あの翡翠のストラップの人のおかげかな・・・?


そーいえばあの人、あの恋愛成就のストラップどうしたんだろ?




「・・・美。」




まさか携帯に着けてるワケないよね?




「・・・琴美。」




てゆーか、そもそもなんで貰ってくれたんだろ?




「琴美!」


名前を呼ばれておでこを指でコツンと叩かれた。




「・・・っ!?」


びっくりした・・・。


いつの間にか目の前に宗が立っていた。




「・・・あ・・・何?」




「何?じゃねぇよ。二人三脚、


 次だからそろそろ準備しとかないと。」




「・・・あ、うん。」




「高杉に見惚れてたみたいだけど何考えてたの?」


宗はあたしの顔を覗き込んだ。




「・・・え・・・あー、なんでもない。」


あたしはなるべく平静を装った。




やばい、やばい。


傍から見れば見惚れてるように思われたのかな?




「・・・。」


宗が黙ったままじっとあたしを見つめていた。




「宗?」


あたしが名前を呼ぶと宗は黙ったままあたしの手を取って歩き始めた。




なんか怒ってる・・・?




「宗・・・なんで怒ってんの?」


「怒ってない。」


「怒ってるよ。」


「怒ってないってば。」


「だって言い方がすでにもう怒ってるもん。」


「そんな事ない。」


「そんな事あるから言ってんだけど?」




「・・・。」


宗がまた黙り込んだ。




「・・・確かに・・・さっきは考え事してたよ。」




「やっぱしてたんじゃん。」


拗ねた口調で宗が言う。




「でも・・・しょーもない事だから。」




「・・・高杉の事?」


「違うよー。」


あたしはクスッと笑った。




「ホントに?」


宗がまたあたしの顔を覗き込んだ。




「ホント。」


あたしがそう言うと


宗は「そっか。」と言った。




変なの。




なんでそんな事気にするんだろう?

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