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次の日。


放課後、部活に没頭していたあたしは


昨日よりも遅い時間に美術室を後にした。




集中してた所為かなんだか疲れたなぁ・・・。




そんな事を思いながら正門まで来ると、


門柱によりかかって立っている人影が見えた。




誰だろう?




薄暗い灯りに照らされて男子生徒という事だけはわかった。


そして段々と正門に近づくにつれ、男子生徒の顔が


ハッキリと見えた。




・・・あれ?・・・宗?




彼女でも待ってるのかな?




そう思っていると


「遅かったね。」


宗は門柱から体を離してあたしの目の前に来た。




・・・へ?




あたしはキョロキョロと周りを見回した。




あたししかいないよね・・・?




あたしのリアクションが面白かったのか宗はプッと吹き出し、


「琴美の事、待ってたんだよ。」


と、あたしに爽やかな笑顔を向けた。




えええぇぇぇぇぇっっ!?




・・・あたし?




「・・・な、なんで?」




「昨日のクッキーのお礼が言いたかったから。」




「べ、別によかったのに・・・。」




「どうしても直接言いたかったし・・・かといって、


 教室で言うと女子が騒ぐと思って。」




そこまで気を使ってくれなくても・・・。




「あのクッキーすごくおいかったよ。ありがとう。」


宗はにっこりと笑った。




「・・・あの場所・・・教えてくれたお礼だし。」


あたしもちょっとだけ笑みを返した。




「あれ紅茶が入ってた?」


「うん、バタークッキーは食べ飽きたかな・・・と思って。」


「そっか、あーゆーのも作れるのってすごいな。」


「そぉ?」


「うん。」


「普通だよ?」


「そうか?クッキーくれた女子のほとんどは“初めて作った”とか言ってたぞ?」


「ふーん。」


「てか、みんな家で料理とかしないみたいだし。」


「そーなの?」


「この間の校外学習の時だって最悪。」


「・・・?」


「俺でも作れるメニューばっかだったのに。」


「そんなに酷かったの?」


「卵割れないヤツまでいたし。」


「え・・・。」




確かにそれは酷いかも・・・。


だからあんなに時間かかってたんだ。




「武田がさー、琴美と藤村さんが同じグループでよかったって言ってた。」




・・・へー、そんなコト言ってたんだ。




「高菜おにぎりまで作ってくれたって喜んでたし。」


「あれは、ご飯が中途半端にあまっちゃったから。」


「俺んトコの女子共はそんな事してくれなかったぞ?」


「ご飯が余らなかったとか・・・。」


「めちゃめちゃ余ってた。」


「そんなに余るほど炊いたの?」


「炊く量はフツーだったんだけど、水加減間違えたらしくて


 固くて食えなかった。」




・・・え。




「カレー・・・どうやって食べたの?」




「最初の一杯目はなんとかご飯と一緒に食べたけど、


 二杯目からはルーだけ。」




「うゎ・・・。」




「まぁ、その後武田の高菜おにぎりを半分もらったけど。」


宗はニッと悪戯っぽく笑った。




「飯盒で炊こうと思ったら意外と難しいから仕方ないよ。」


「でも、武田はずっとご飯がおいしかったって言ってた。」


「・・・たまたまだよ。」


「俺も琴美と一緒のグループがよかったなー。」


「今回がたまたま酷かっただけだよー。」


あたしはクスクスと笑って宥めるように言った。




「他のグループも同じ様なもんだったぞ?」


「けど、女の子の所為だけじゃないトコもあったよ?」


「・・・というと?」


「あたしの左隣のグループの男子なんて女子を放ったらかしにして


 ずっと遊んでたし。あれじゃ、出来る物も出来ないよ。」


「はは、そりゃ確かにそうだな。」


「でしょ?けど、あたし達のグループは何も言わなくても


 武田くん達がすごく手伝ってくれたから。」


「俺だってちゃんと手伝ってたぞ?


 けど上手くできなかったってコトはやっぱ女子の問題。」


「・・・そんなに言わなくても。」


あたしがそう言って笑うと


「・・・そういえば・・・」


宗は不意に何かを思い出したようにあたしの顔をじっと見た。




「・・・?」




なんだろ?




「琴美・・・最初、高杉と同じグループにならなかったっけ?」




・・・ギクッ。




「なんで変わったんだ?」




・・・聞くな。




「アイツのコト、嫌いなの?」




「別に・・・嫌いじゃないよ。」




むしろ好き・・・だった。


2ヶ月前までは。


今はどちらかと言うとどうでもいいと言うか・・・


出来れば顔を合わせたくないだけ。




「・・・変わって欲しいって言われたから。」




この答えはちょっとズルいかな?




「それであっさり変わっちゃったんだ?」


「うん。」


「じゃ、もし俺と同じグループになって、誰かに変わってくれって


 言われてたら変わってた?」




・・・多分。




「うん。」


「えー、それじゃ今度またこーゆーグループ分けとかあっても


 琴美と一緒になれる確率超低いじゃん。」


「宗も競争率高いもんね?」


あたしはちょっと意地悪く言ってみた。




「じゃあ俺が琴美を指名するとしたら?」




「んー・・・。」




「それでも断る?」




「んー・・・断る理由がなかったら断らない。」




「絶対?」




「・・・う、うん。」




「おっし!その言葉忘れんなよ?」


宗はそう言うとにやりとした。




・・・え?


なんか・・・嫌な予感・・・。




・・・とは言え、この後の行事でグループ分けするような事なんて


すぐになかったよーな気がするし・・・あるとすれば11月の学園祭?




・・・ま、いっか。


その頃には宗も忘れてるだろうし。




「約束な?」


宗はさらに念を押した。




「う、うん。」


あたしはとりあえず“うん”と言った。




「破ったら俺とキス。」




・・・はぁ?




唖然としたあたしに宗は「破らなきゃいいんだしー。」


と言ってにやにやしていた。




・・・なんか・・・ハメられた?




そして約一ヵ月後・・・、あたしはとんでもなく後悔するハメになった・・・。

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