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週末の日曜日。


あたしはクッキーを焼いた。


別にあの後、拝み倒されたワケじゃないけれど。




遠足の時、滑りやすい所や段差の激しい所で手を貸してくれたから。


校外学習の登山の時も絶景ポイントを教えてくれたし。




・・・というのは、こじつけ・・・かなぁ?




調理実習で作ったのはただのバタークッキーだった。


同じクッキーだと芸がないから、今回は紅茶クッキーにした。


一応、プレゼントだからきれいにラッピングもした。




ここまで気合を入れなくてもいいよーな気もするけど・・・。




さて・・・問題はどーやって渡すか。




教室ではもちろんみんながいるから渡せるワケがないし、


わざわざ呼び出すのも・・・ね。


かといって机や下駄箱に突っ込んだまま放置・・・てのも・・・。




・・・うーん・・・明日・・・考えよう。






翌日、月曜日。


授業を受けながら一日中考えた結果、


宗の部活が終わるのを待つコトにした。




美術室からは第一体育館がバッチリ見える。


今までは部活に夢中になっていて、目を向ける事がなかったけど、


気をつけて見ていれば、部活が終わったタイミングがわかる。




男子バスケ部が第二体育館の方でやっていたらアウトだけど・・・。






先週、偶然一緒になった時間より少し前に


あたしが第一体育館の方をチラリと見ると、


ちょうど男子バスケ部が出てくるのが見えた。




・・・あ、出てきた。




その中に宗もいる。


あたしは急いで帰り支度を済ませ、美術室を後にした。






正門を出ると宗はすでにかなり前の方を歩いていた。




足・・・早っ!?


さすが男子・・・。




というか、先週あたしと一緒に歩いていた時は


歩調を合わせてくれてたんだな・・・と思った。




さて・・・渡さないと・・・。




いざ、追いかけて渡そうとするとなかなか勇気が出ない。


でも、せっかく今まで待ってたんだし、


何よりクッキーを作った意味がなくなる。




「宗。」


あたしは思い切って、声をかけた。


すると振り向いた彼はちょっと驚いた顔をしていた。


考えてみれば、あたしから声をかけたのって初めてかも。


驚くのも無理ないか。




宗は立ち止まってあたしが追いつくのを待ってくれていた。




「今日も遅くまでやってたんだね。」


宗は柔らかい笑みをあたしに向けた。




「・・・うん。」




・・・てゆーか、待ってたんだけどね。




「宗、いつもこの時間までやってるの?」


いきなりクッキーを渡したらバレバレになりそうな気がした。


とりあえず、ちょっと会話をしてみる。


「うん。」


「よく体力続くね。」


「まぁ、中学の時からやってるからね。」


「そーなんだ。」


「琴美はずっと美術部?」


「うん。」




・・・て、あれ?




「あたし美術部って言ったっけ?」


「いや、聞いてないけど、武田が言ってたから。」




あ・・・なるほど。


てか、二人の間であたしの話が出てくるのか。




「武田と仲良いんだね。」


「真後ろの席だから。」


「そーゆー問題?」


「うん。」




他に何が?




「・・・あ、そうだ。コレ・・・」


会話が途切れた所であたしは例のクッキーを宗に渡した。




「?」




なんだろう・・・?


と言った感じの顔をしている宗の顔がなんだかすごく可愛かった。




「クッキー。」


あたしがクスクス笑いながらそう言うと、


「マジッ!?」


と言って、大きな翡翠色の瞳をパチパチとさせながら驚いていた。




「マジ。」




「やったーっ!!」




そんなに喜ぶとは・・・




「ありがと!」


宗はそう言うと「最高の誕生日プレゼント!」と嬉しそうな笑顔をあたしに向けた。




・・・へ?




今度はあたしがキョトンとしていると


「実は今日、俺の誕生日なんだ。」


と言った。




「そうなのー?」


「うん。」


「だったら、もっと豪華なお菓子にすればよかった。」


「でも、コレ俺の為に焼いてくれたんでしょ?」


「うん。」




・・・まぁ、確かにそーだけど・・・。




「だから最高の誕生日プレゼント。」


宗は満面の笑みで言った。




・・・チャラ男は意外なもので喜ぶ。




5月17日・・・5月生まれ・・・


そういえば・・・




「翡翠って・・・5月の誕生石だよね?」


「うん。」


「じゃあ・・・誕生石と同じ色だね。」


「うん?」


「宗の瞳の色。」


「うん。」


宗はまた嬉しそうに笑った。






・・・もしかして、あの翡翠のストラップをくれた人も5月生まれなのかな・・・?

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