Sの驚愕
Sは母から見合いを勧められた。
Sの母曰く、高身長、高収入、外科医とはいえ、ぼやぼやしていると結婚なんてできないということらしい。
「良い家のお嬢さんで、学歴もあなたに釣り合っていますよ。」
「会うだけなら。」
「では、来月6日の日曜日、空けておいて下さいね。」
そう言い切るとSの母は通信を切り、Sは溜息をつく。
見合いの席で会った彼女は、ふくよかな可愛い若い女の子だった。
Sの下らない話を興味深げに聞き、コロコロと体を揺らし笑ってくれた。
別れ際、Sは勇気を出した。
「私とお付き合いをしていただけませんか。」
「喜んで」
そのはにかんだ笑顔もSは可愛いと思った。
半年ほど付き合い、Sは彼女にプロポーズした。
彼女がそれを受け入れてからの、結婚式準備、新居の準備、新婚旅行は怒涛の行程だった。
まだ新婚の期間と言える頃に、彼女の希望で、子供を作り、彼女は妊娠した。
Sは煙草を止めた。Sは煙草を止めた己自身に驚いた。
今日、Sの子が産声を上げた。Sは自身の母性本能が疼くのに驚愕した。
もちろん女の子である。母子ともに元気だ。
Sは、出産直後も微笑む彼女に声をかける。
「がんばったね。ありがとう。」
「ええ。」
3日後、Sの母二人と彼女の母二人が、初孫を抱きに来た。
女だけが生まれるこの地球で、和やかな雰囲気の中、Sは幸せを噛みしめている。
千年程、地球全体で平和が維持されていることからも、古の母達は正しかったと思える。
外科医で煙草を嗜む女性も存在するかと思います。
私見ですが。