86話 史と御菖蒲八橋
滋賀県、琵琶湖付近、人口の洞穴に入りながら史はため息をつく。
「研究の途中だったんだけどね、さっさと帰って続きをするか。」
洞窟に入っていくと大柄な男が戦槌を持って待ち構えていた。
「・・・・・」
相手が居る事に気付いた史はいきなり銃を放つ。
しかしそれは気付かれて回避される。
「いきなり物騒な事だな御神楽史、探究者よ。」
「あ~はいはい、どうでもいいからさっさとやるよ。」
史は話しながら機械で出来た三つの頭を持つ犬を作り出す。
「その程度か?弱いな。」
一瞬でそれを砕いた八橋は槌で殴り掛かる。
しかし一撃で頭蓋を砕くという確信は打ち破られる。
「危ないね。」
史の体が爆発し、八橋は吹き飛ばされる。
その後には先ほど居たはずの場所より遥か後ろに史が立っている。
「オートマタ、自動人形だね、爆薬を持たせたものを一つ作って置いたのさ。」
飄々とした口調で史が言った瞬間八橋は走り出す。
「なっ、油断したね。」
史は地面に押し倒され銃口を向けられる。
「でも、あんたも油断してたね。弾は抜かせてもらったよ。」
そう言って史は握っていた弾丸を見せびらかす、そして驚きで八橋の動きが止まった瞬間蹴りで吹き飛ばし、足で踏みつけて動きを止め、銃口を向ける。
「・・・私の負けだな、だがいつ弾を抜いた?そんな隙は無かったはずだ。」
「うん、無かったね。」
史は地面に落ちた八橋の銃を拾い上げると中を見せる、そこには全ての弾が収まっていた。
「・・・・なるほどな、嘘か、一瞬で銃の種類を見極め、それと同じ弾を生成したか。
全ての面で勝てなかったな。」
それを置いて史は歩き出す。
「もう行くのか?」
「研究の途中なんだよね、さっさとそれを終わらせたいわけ、だから無駄話している暇は無い。」
「お前は不死になったのだろう?」
ぴたり、と史は足を止める。
「だから、何?
あたしは知りたいだけ、好きでやってるんだから口を出さないで。」
それだけ言うと史はそこを立ち去る。
「私が負けた理由はそれか、無限にある時間にかまけて自分の本質を見失っていた。
いや、彼女が珍しいだけかもしれんな、現在この国には皆と同じ事を学ぶ事だけに集中して自分のやりたい事も解らない者が多い、それは単に教育の影響かもしれないな、周りと同じようにする事を強要し個人の意思を無視するが如き勉強法、喧嘩などが起きてもどちらかが悪いか全く吟味しないで両方を罰する、もしくは教師の偏見で罪の無い者が罰せられる、そんな世で生きて居たら自分を見失う事も無理はない。
私は彼らが国を変えたら学校でも創るか、皆が自分のやりたい事を見つけられる、そんな所を。」
そう一人呟いた八橋は疲労からくる眠気に身を任せ、未来に思いを馳せながら眠りに落ちた。




