60話 闇
戦車の軍を滅ぼし、ゆっくりと降りてくる少年の姿に陰は思わず呟く
「あの方はもしや、でも何故私たちを。」
「陰、あの子供を知ってんの?」
史の問いかけに陰は首を振る
「いえ、ですが兄様に似た魔力を持つ存在など一人しか知りません。
それは強大で、恐ろしい原初の力。」
「それは買い被りだよ。
それに彼女だって怒ると恐ろしいんじゃないかな?」
その言葉に三人が振り返ると、少年が静かに立っていた
「貴方は一体何者ですか?」
「僕かい?
解らないな、人は自分が何者か解らないのに他者が何者か知ろうとする・・・でもそれこそが人間なのかもしれないね。
でも、僕の名前か・・・・そうだ、僕の名前はエレボス、よろしくね。
それと君たちの定義を用いるなら妖魔人だよ。」
少年の言葉に史は驚く
「エレボス、ギリシャの闇を司る原初の神があたし達に何の様だい?」
史の全く恐れのない言葉にエレボスと名乗った少年は薄く笑みを浮かべる
「礼くらい言ってくれても良いじゃないか。
でも良いよ、僕も堅苦しいのは好きじゃないしね。
本題だけど、僕は大和とニュクスに頼まれて君たちの手伝いに来たんだ。」
「兄様を知っているのですか?」
「ああ、何度か話した事がある位だけどね。
最も神としての基準でだから人間の基準なら結構な回数になるのかな?}
「兄様に初めて出会ったのはいつですか?」
陰の言葉に少年は首を傾げる
「さあ、いつだろうね?
もう随分昔の事だから忘れたよ。
でも彼女は僕の良い友達だよ。」
「そうですか、あなたにとって兄様は女性なのですね。」
「彼女が本来は男なのは知っている、もちろんただの友達だよ。
でもニュクスだと知っているからか彼女と呼んでしまうんだ。」
「兄様は一度も言わなかった事ですが、貴方達には神としての記憶があるのですね。」
「ああ、あるよ。
僕達には世界が生まれた時からの記憶がある。
でも僕達は神とは違う一人の人間だ。
理由は僕の口から語る事は出来ない。
特別な理由は無いよ、ただ彼女の方が説明が解りやすいだけさ。」
「最後に一つ聞かせて下さい、貴方は兄様の事が好きですか?」
「言ったはずだよ、僕はただの友達だとね。
確かにエレボスはニュクスとの間に子を創ったけど今それは関係ない。
さあ、行こうか、東大寺に行くんだよね。」




