34話 籠女籠女
3人は峠を越えて岩手県に到着した
「陽、大丈夫?」
アリスが心配そうに聞いてくる
「ああ、今のところは大丈夫だ。」
「でもあんまり無茶したら駄目よ。」
「あそこか?」
陽の視線の先にはとても巨大な豪邸が建っているのが遠目に見えた
「大きな建物ね。」
「これも全て座敷わらしの犠牲の上に成り立っているのだな。」
「座敷わらしは一つの場所に留まらず、常に放浪していると聞いたわ、
そして留まる場合はとてもその場所が気に入ったか、囚われた場合だけだと言う事も。」
菖蒲の言葉は正しい、
座敷わらしは放浪癖のある妖怪で気に入った家にいる間だけ福を授ける妖怪だ、
座敷わらしが去っても不幸になる訳では無い、
ただ幸運が元に戻るだけだ、
しかし裕福な暮らしに慣れた人間は元の質素な暮らしを嫌がり、座敷わらしを閉じ込めて幸運を搾り取る様にしてきたのだ。
「愚かだな、
座敷わらしが去ると不幸になると言う話には真実が含まれている、
座敷わらしは自分に酷い事をした家を去る時に今まで与えた幸運に見合うだけの不幸を置いていくからな。」
「菖蒲さん、
座敷わらしはどれくらいの間、囚われているの?」
「確か100年位だったかな。」
菖蒲の言葉に陽が口を開く
「100年間奪われ続けた幸運に見合うだけの不幸か………地獄を見そうだな。」
「あの広い屋敷の何処にいるかな。」
「あそこだ。」
そう言って陽の指差した先には屋敷の中心にある全ての四方にある部屋から隔離されて一ヶ所だけ廊下で繋がった座敷牢のような場所だった
「あからさまに怪しいね。」
「それだけじゃない、
あの部屋だけ空間の歪みがうっすらとだがある、おそらく結界だろう、
他にも屋敷を取り囲む様に結界が張られているな。」
「用意周到ね、
座敷牢の結界は外に出られないようにして、内への干渉を妨害するもの。
屋敷を取り囲む様に張られている結界は多分侵入を感知するものね。」
陽の言葉を聞いた菖蒲が言った
「入ったらばれるの?」
「そうだな、
入っても感知されない場所が一つだけあるがな。」
「何処?」
「玄関だ、住んでいる人が出入りする度に感知していたらきりが無いからな。」
だが玄関には見張りがいるのだった
「当然見つからない様に侵入したい、
だから私とアリスが結界に穴を開ける、
後は天井裏を通って座敷わらしが囚われている部屋に行く、
そして座敷わらしを閉じ込めて居る結界を破壊する。」
「結界に穴を開ける……出来るの?」
「アリス…君が聞くなよ、
エペタムは人食い刀だ、
喰らう物は肉体だけでは無く霊力も奪う、
結界は霊力に防衛と言う定義を与えた物だからその霊力を除去すれば崩壊する。」
陽の説明にアリスは感心している
「詳しいね。」
「…………昔に少しな。」
「あっ、
今は座敷わらしを助ける事に集中しよう。」
「そうだな、
菖蒲、戦えるか?」
「勿論、
武器はこれよ。」
そう言って菖蒲が桐箱…今更だが菖蒲の桐箱は小さなタンスの上部分に取ってを着けたような形をしている。
そこから取り出した物はどうやってしまっていたのか分からないが細身の突剣、レイピアだった
「レイピアか、
空気抵抗が小さいから素早く攻撃が出来て、
しなるから折れる事も少ない、
さらにしなる為に刀身を刀等で払っても跳ね返ってくる、
扱いづらいが強力な武器だな。」
陽の意見に菖蒲が頷く
「その上私は医者よ、
人の体の何処が弱いか良く知っているわ、
でもってレイピアは小さい範囲を正確に攻撃するのに優れているのよ。」
「まさしく鬼に金棒ね。」
「座敷わらしが可哀想だ、早く行こう。」
「分かったわ。」
3人は作戦会議を終えて屋敷に向かって歩き始めた




