33話 薬師寺菖蒲
大和が地獄の訓練を初めた頃、陽とアリスはあの後木陰に座って休んでいた。
「あれ、誰かこっちに来るよ。」
アリスの視線の先には20歳位で、麻の葉模様の着物を着て、桐製の箱を持った女性が走って来ていた。
「貴方は誰?
敵なら…容赦しない。」
アリスは女性に刀の切っ先を突きつけた
「はぁはぁ、ちょ、ちょっと待って。」
女性は肩で息をしながら両手を上げて言った、
……その時に手に持ったままの桐箱を頭にぶつけてたのは見なかった事にした
「私は薬師寺菖蒲
菖蒲と書くけど菖蒲です。
ポラリスの薬師をしていて、大和さんに言われて来ました、
さっそく陽君を診るわね。」
そう言って菖蒲は陽に質問や触診をした
「やっぱり予想通りね、
陽君の体は今、過剰な力に耐えられていない状態なの、
今までは力を使わなかったから問題無かったけど、使った事でバランスが崩れて体の許容量を越えたのね。」
「どうすればいいんだ?」
少し落ち着いた陽が聞くと
「本来なら力が増せば少しずつ許容量は増えるんだけど、急激に力が増えすぎたのね…
とりあえずこれを飲みなさい。」
そう言って菖蒲は桐箱から白い錠剤を取り出した
「これは体の霊力を抑える薬、
あくまで一時しのぎよ、
だから早く力をつけなさい、アリスちゃんのエペタムの力で悪魔の力を奪って糧にすると良いわ。」
「わかった、
あたしの力で悪魔の魔力を陽にまわすよ。」
「それでは逆効果ではないのか?」
頷くアリスをよそに薬を飲んだ陽が聞くと
「本来はね、
だけどエペタムは力を奪って変質させる力があるから、
その力で魔力で陽君の許容量を少しずつ広げるのよ。」
「それなら可能かな。」
「全部史ちゃんの受け売りだけどね、
理論的には大丈夫だって。」
「何だろうな急に不安になって来たよ。」
菖蒲は笑った
「史ちゃんも悪気は無いから許してあげてね、
そうそう大和さんに伝言を頼まれて居たんだった。」
「何だ?」
「岩手県の妖怪だけど殺さないでって。」
「何故だ?」
「岩手の妖怪はもう何年も人間に囚われているの、
その妖怪は[座敷わらし]幸運を呼び込む妖怪なの、
だけど人間は座敷わらしが居なくなるのが嫌で無理やり結界に閉じ込めて居るの、
岩手県を相手にするなら座敷わらしを解放すれば勝手に滅びるわ。」
「人間は自分達のためなら何でも出来るのね。」
アリスは悲しそうだ
「座敷わらし…昔は人の幸せを願って死んだ子供の魂が集まって産まれた妖怪………それを傷つける事は自分の子供を傷つける事とかわりないのにな。」
「だから私も貴方と一緒に行くわ。」
菖蒲は言った
「大丈夫か?」
「もちろんよ、
お医者さんって強いのよ。」
最早暴論だが菖蒲の言葉には説得力があった
「そろそろ大丈夫そうだ、
さぁ岩手県に向かおうか。」
3人は囚われた座敷わらしを救う為に岩手県に向かって歩き出した




