閑話3 失った者の重み
陽の過去話です
九頭竜大和に会う1ヶ月ほど前まで、夕月陽には彼女がいた、
彼女の名前は
天城 照
活発な黒髪の少女だった
陽は彼女に告白されて付き合い始めた
その頃の陽は国への嫌悪はあったが、それほどではなかった
2人は休みを利用してあちこちに旅行したりしていた
しかし国は己のしている事を知っている陽を始末するために彼女を利用したのだ
それにより、彼女の家族は警察に冤罪で捕まり、国は彼女に陽を殺せば家族を解放するが、殺さなければ家族を拷問して殺人の濡れ衣を着せたあげくに殺すと脅したのだった
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「待て照、
何故私を狙う?」
ふりおろされたナイフをかわして陽は言った
「貴方を殺さなければ、わたしの家族が拷問されて殺されるの、
わたしの家族は国に捕まっているから逃げられない。」
照は掠れた声で言った
「無理だ、
お前では私を殺せない。」
「分かってる、
だけどわたしが貴方を殺そうとすれば、わたしの家族は殺されないの。」
「嘘に決まっているだろ、
国は真実を知る人間を生かしてはおかない、
私がその証明だ。」
「それでも……
それでもわたしは貴方を殺すしか道は無いの、
家族よりも貴方の事が好き、だけどわたしは家族を見捨てられない。」再び振られたナイフを陽は弾き飛ばした
「やっぱり勝てないのね………
もういいの、わたしを殺して。」
照は悲しげに言った
「何故君を殺す?」
「わたしが生きている限り、
わたしは貴方を狙い続ける、
そうしなければわたしの家族が死ぬから、
所詮わたしの恋は家族よりも軽かったのよ。」
「だが、
君は殺される為にきたんだね。」
「……………」
「私は君を殺さない、
いつでも命を狙うがいい、
私は常に防ぎ続けよう。」
「ありがとう…………
でも駄目なのわたしは貴方を必ず殺す事を魔術で誓わせられたの、
それは死ぬまで解けない、
わたしはそんな未来はいらない、
……だからこうするね。」
そう言うと照は落ちたナイフを拾うと、止める間もなく自分の胸に突き刺した
「照!」
「本当は分かってた、
わたしの家族はもう生きていない事を、
そしてわたしは貴方を殺そうとするわたし自身を認められないし、
貴方に愛する人に狙われ続けるような人生を歩んで欲しくない、
わたしの敵をとらなくても良いよ、
貴方は他に好きな人を作って幸せに暮らして、
でもこれだけは分かって、わたしはずっと貴方の事を愛していたよ、だからこうしたの、
これでいいのよ、これで…ね…………………………………………」
そう言い残すと照は血を吐いてその短い人生の終焉を迎えた
「照……………
君の事は永遠に忘れない、
そして己の欲望の為に私の家族、照の家族、そして照を死に追いやった者はその家族を全て殺し、私と同じ地獄を見せたあげくにゆっくりとなぶり殺しにしてやる、
それが神の意志に叛くのならば、神も天使も認めはしない。
これは照の為じゃない、私の復讐だ。」
陽は涙を流しながら空に浮かぶ満月に向かって誓った
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「これが私が大和に会う1ヶ月ほど前の事だ。」
話し終わると陽は言った
「だから貴方は実力主義なの?」「最初は無能が官吏にならないから良いと思っていたが、
今は分からないな、
尤も、今の政治家を殺す事は間違いないがな。」
「あたしに何が出来るか分からないし、
照さんの変わりにはなれないけど、
貴方の目的の為に手伝うし、
あたしはあたしとして貴方の傍ら(かたわら)にいるよ。」
「ゴホッゴホッ。」
突然口に手を当てて咳き込んだ陽の手は血で赤く染まっていた
「大丈夫!」
「大丈夫だ、
あの魔術の反動かな、
力には代償が伴う………か。」
「急ぐ必要は無いよ、
そこの椅子にでも座って休もう。」
アリスは優しく言った
「そうだね、休もうか。」
そうして2人は岩手県に行く前に、峠にあった椅子に座って休憩を取る事にした




