21話 黄泉津大神
イザナミは神話では全身が腐り落ちていたと書かれていますが、この物語ではそう言う事にはなっていません。
恐山の邪気が晴れ、
2人は恐山の山頂付近に出来た黄泉の国へ続く洞窟にきた、
そこには、黒い着物を着た25歳程に見える女性がいた
「私の名は夕月陽、
貴女は何者ですか?」
陽はその女性に話しかける
「妾は黄泉津大神、
お前らは何故ここへ来た?」
女性は冷たい声でこたえる
「あたし達は貴女に人間を襲う事を止めてもらう為に来ました。」
アリスが言った
「断る、
妾の土地に穢れを持ち込んだ人間を許しはせぬ、
……それに人間を殺せば、人間を大切にしている夫もこちらに来てくれる筈じゃ。」
後半は一人言のようなものだったが陽は聞き逃さなかった
「そんな事で貴女は人間を苦しめるのですか。」
「うるさい、
お前なぞに妾の気持ちは分からん、妾はあの人がいてくださればいいのじゃ。」
その言葉にアリスは怒った
「貴女は自分の欲の為に人間を殺すのですか、
大切な方を思う気持ちは分かります、しかし貴女は相手の気持ちを考えていない、
イザナギは貴女に人を殺してほしくない筈です。」
それを聞いてイザナミは顔を歪める
「そんな事知らぬ、夫は妾だけを見ていればいいのじゃ。」
その言葉に今度は陽が諭す
「この国を創った方の言葉とは思えないな、
この国の為に動く事がイザナギの為になるのではないか?」
「約束を破り、妻を捨てた夫の為にか?」
「それでも、イザナギの事が忘れられないのだろう?」
それを聞いてイザナミはたじろぐ
「じゃが………」
「なら、
イザナギの為に動けばいい、
そうすればいつか、イザナギも貴女の事をもう一度好きになってくれるだろう。」
イザナミは首根っこを掴まれた猫の様に大人しくなった
「言われてみれば、汝の言う通りじゃ
しかし……」
「しかし、なんだ?」
「妾はまだ信用できん、
汝ら2人もいつかは恨み会う事になるかもしれんぞ?」
挑戦的にイザナミは言った
「なら、あたし達はここで誓うわ、
それで信じてくれる?」
アリスが言った
「私もそのつもりだ。」
陽も賛成する
「ならば、
今ここで誓いなさい、神の前での誓いを破る事は出来ないからのう。」
そうして2人は誓い合う
まず、陽が誓う
「私、
夕月 陽はこれから先、
アリスと共に敵対することなく、
君の事を第一に思い続ける事を誓う。」
それにアリスが続く
「あたし
アリスはこれから先、
夕月 陽と敵対せず、
貴方と幸せを分かち合い、
貴方の事を一番に考え、そして
[貴方を愛し続ける]
事を誓います。」
それを聞いてイザナミと陽はあっけにとられている
「ま、待つのじゃ、
それを誓っては、これから先愛を誓いに強要されるのじゃぞ。」
慌てたイザナミが言った
「いいのよ、
あたしの思いは絶対に変わらないから。」
微笑んだアリスが言った
「アリス、
これは結婚式じゃ無いよ、
……でもありがとう。」
陽がそれに応える
「それほどの思いとは思わなんだ、
じゃが、汝らの思いは分かった、
汝らに免じて人間の事は許そう、
そして礼を言いたい、妾に愛が空虚な妄想では無いことを教えてくれた事にな。」
生きていた頃の優しさを取り戻したイザナミは微笑んだ
それは、昔のアリスのような影のある物では無く、
鈴音のような心からの笑顔であった
「ふふっ、
それでは行くがいい、
夕月 陽、そしてアリスよ、
汝らの願いを探すと良い、
今の実力主義以外の新たな願いをな、
汝らが選んだ道なら、例え汝らが全ての人々を敵にまわしても妾は汝らを応援しよう。」
そう言いながらイザナミは小さな黄玉でできた玉飾りを取り出してアリスの簪の穴に嵌め込んだ
「これは?」
「女子なら宝石の一つも持っておけ、
その玉飾りを地面に刺せば、
妾が出来る限り駆けつけよう、
本当に窮地に陥った時に使うといい。」
照れた様子のイザナミが言った
「ありがとう、
大切にします。」
「構わんよ、
さぁ、行きなさい。」
「色々とありがとうございました。」
「彼女を大切にな、
どうじゃ、全てが終わったら一緒に酒でも飲まんか?」
「その頃には20歳になってるだろうし、いいよ、
それじゃあまたお会いしましょう。」
「楽しみに待っとるからのう。」
そうして
イザナミに真実の愛のありかを教えた2人は青森県を制圧下に置くために暴徒化した民衆を鎮める為に恐山を後にしたのだった。
最早あれは結婚式の誓いだと作者も思います。




