112話 医部
「改革によって省の役割が解りやすくなった物だね。」
「そうね、研究や開発の為の援助も増えたし、お薬を開発することも随分と簡単になったわ。」
「昔は違ったのかい?」
「そう、研究の時間も資金も少ない状況で尚且つ失敗も許されなかったの、それが随分と良くなったと思うわ。」
「そうか、僕は別に何処に就きたいとかの望みは無いけど彼女が帰って来るまでは此処にいるよ。」
「あっ、そろそろ史ちゃんが来る頃ね、セキュリティーを解除しないと。」
それを見て薬草を整理しながらエレボスは苦笑する。
「その必要は無いんじゃないかな?」
彼がそう言うと同時に扉が開き史が入って来る。
「やあやあ、エレボスに菖蒲さん、頼まれてたもの出来たよ。」
そう言って史は新薬とその他薬剤、薬草が詰められたダンボール箱を床に置く。
「それは良いけどどうやって入って来たの、史ちゃん。」
「そりゃあハッキングだよ、呼ばれたのに開いてないんだから。」
「ごめんね史ちゃん。」
「それにしても驚いたね、エレボスが医部に属すなんてさ。」
「言われてみればそうだね、でも大した理由は必要かい?」
薄く笑いを浮かべながらエレボスが言うと史も苦笑する。
「それあたしの論法だわ、まあ必要ないね、あたしだって研究したいって思いに理由は無いし。
それにしてもあんた随分と人間臭い事言うね。」
「・・・・・・そうかい?でもそれなら悪くはないね。」
そう呟いた時エレボスは窓の外の木に一羽の梟が止まっていることに気付く。
「おや、君か。」
エレボスは短く呟くと窓を開け放つ、すると梟は飛び込んできて机の上に降り立つ。
「あんたもしかして陽?」
「そうみたいだよ、動物の中に自分の意識を入れる術か、随分回復してきたようだね。」
「・・・何か様ですか?」
菖蒲が聞くが梟はただ何も言わない。
「まあ、声帯は梟の物だからね、話は出来ないさ、インコとかなら別だろうけど。」
そう言って見ると梟は闇を操り空中に文字を綴っていく。
「・・・何語?」
史の呟きにエレボスが答える。
「ギリシャ語だね、それも古代の、今の暮らしはどうかだって。」
「あたしは良いと思うよ、好きなように研究出来て。」
「私もそう思います、実力主義であってもそれなりには平和で治安も良いですから。」
「僕も同じ気持ちだよ。」
それを聞くと梟は再び文字を綴る。
「今度は現代のギリシャ語か・・・螢に料理をさせるなって?」
梟は更に文字を付け足す。
「確実に未知の生命体を生成するだって。」
「そういや此処に来る前あの人料理の準備してたかも。」
「・・・ごめん僕行ってくる。」
エレボスが出て行くと梟は再び文字を綴ってから窓から飛び立って行った。
「今度は英語だね、次は宇迦之御魂の所に行く・・・か。」
「それは良いとして史ちゃん、仕事があるんじゃないの?」
「そうだった。」
史も部屋から出て行き、菖蒲は一息吐いて呟いた。
「私も頑張らないとね。」




