111話 陰陽寮
「その書類はそっち、それはあっちに運んどくれ。」
子鬼や式神たちに指示を出す声明に酒呑童子は眉を顰める。
「清明、一つ聞いていいか?」
「なんじゃ?言ってみい。」
「陰陽寮はいつから百鬼夜行の巣窟になった?」
「陰陽寮が再設されてからじゃのう。」
からからと笑う清明に酒呑童子は突っ込む。
「最近じゃねーか!」
「なに、わしが現役の頃はもっと多かったではないか。」
「現状でも陰陽生の十倍はいるじゃねーか。妖魔退治はどうした。」
「これらは悪い事など、なぁんもしとらんじゃろうが。」
「相変わらず陰陽師らしくねぇなあ。」
「わしは化け狐の子じゃからのう、陰陽師より妖怪に近いわ。」
「認めやがったよこのじじい・・・・・・」
「喋ってないで仕事じゃ、町外れのボロ屋敷に化け鼠が出るそうじゃ、ちょっと行って倒してこい。」
「ちょっと菓子買って来いって感じに言うな!お使いじゃねーんだよ!」
ぶつくさ言いながらも酒呑童子が駆けていくと清明は庭に出て三日月を見上げる。
「・・・来客があると出ていたがお前さんじゃったか。」
清明の視線の先には一匹の狼が塀の上に座っている。
「気配は断ててもその姿では結界に阻まれて入れんか、許可するから入ってこい。」
清明がそういうと狼はすらりと地面に着地する。
「現在の状況を聞きに来たのか?」
狼が首肯すると清明は器用な奴じゃと笑って話し出す。
「今の所は地磁気も龍脈も落ち着いておる、何もせずとも百年は問題ないじゃろう。
犯罪は相変わらずあるにはあるが、数は段々減ってきておる。
あとは・・・妖魔の被害か、それは増えてきてるのう、妖気が増えてるからじゃろうが、それでも平安京の大内裏などと比べれば可愛いもんじゃ、増えたというよりは正常に戻ったというべきじゃろう。」
それをきいて狼は頷く。
「そうじゃ、わしの母上は元気にして居るかのう?」
狼はその言葉にゆっくりと頷く。
「そうかそうか、今度行ってやらねばのう。」
狼は清明に背を向ける。
「他の者の所に行くのか?ならば小夜子の所に行ってやるとええ、塞ぎ込んでおったっからのう。」
狼は感謝の念を込めて再度頷くと夜の闇の中に消えていった。




