109話 刑部
天軍との戦いから約半年、日本の復旧と改革は着実に進んでいた。
元々あった法の内、有用な物を残した上で実力主義に不要な法などを排除していった、勿論最初は反対派も居たが、それを武力などで戦う事こそが実力主義を認める事になると気付き、反対派も次第に減っていった。
「刑部殿、国の武器庫が襲撃を受けました、犯人は全員捕縛、双方に怪我はありません。」
「最近は実力主義だから力で奪う事も正当化されると思っている輩は減って来たと思っていましたがね。
確かにそれは実力主義の基盤ですがそれはある程度の秩序の下に成り立つ物、正々堂々と立ち向かって来ればいい、それすらできない様では問題ですね。」
「それで、裁判は・・・」
「今の作業が終わったら直ちに開始します、用意を頼みます。」
「はい。」
報告に来た人がその場を後にすると、仮の刑部尚書となった陰は口を開く。
「兄様が居て下さればこの程度の厄介ごとは無くなるのですがね。」
それを聞いていた補佐官のアリスは苦笑いする。
「後大体半年だって、小夜子ちゃんが言ってたよ、テレパシーが来たって、まあこっちからは出来ないみたいだけど。」
「そうですか、ならばそれまでにある程度は整理をしておく必要がありますね。」
「それと冤罪で捕まっていた人は全員出所したよ。」
「小夜子様のおかげですね、あの方が居れば証拠を探す手間が省ける。」
「一応証拠は集めていたけどね。」
「まあ犯人が自分の記憶を無くしている可能性がありますからね。」
「そうだね。」
「あの子は拷問官ですがそれを行う必要がありませんからね。
・・・さて、この仕事にも区切りがつきました、裁判まで屋上に行きませんか?」
「そういえばもう夜明けだね、別に眠くないけど。」
「そうですね。」
「綺麗だね。」
「・・・そうですね、殺人者の私には相応しくないほどに。」
「それを言ったらあたしもだよ。」
「ですが私たちは基本的に殺せない、罪滅ぼしには人の為に働くしかありません。」
陰の口調はどこか自分に言い聞かせている様だった。
「そうだね、それしかないよね。」
「はい、と言っても兄様の受け売りに過ぎませんがね。」
「それでもいいじゃん、自分の生きる道がしっかりしていれば。」
「良い事いいますね。」
「伊達に千三百年生きてないからね。」
「年の甲ですか、最も私と兄様はもっと生きていますがね。」
「・・・え?」
思わず絶句しているアリスに陰は説明する。
「私と兄様はもっと昔の日本に生まれました、それを除けば後は殆ど知っている事と同じはずです。」
「って事は螢さんもか、すごいんだね。」
「刑部は千九百年代くらいに無くなっていますからね、それに気付いてない者はあまり居なかったでしょう。」
「・・・そういえばあたしが陽の先祖だって話は?」
「あれは逆です、貴方は陽の家系の親族の子孫ですよ、最も傍系ですが。」
「そうなんだ。」
呟いてアリスは再度夜明けの陽光を眺める。
「吸い込まれそう。」
「兄様もそうですね、様々な者が集まって来る、そんな人です。」
「・・・そうだね、そろそろ戻ろうか。」
「はい、裁判が始まります。」
「うん。」




