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実力主義への道  作者: 酒呑童児
第十章 唯一神との闘い
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97話 上に立つ者として

「兄様、お時間をよろしいでしょうか?」

「聞かなくてもいいよ、君は私の妹なのだから。」

陰は小夜子が相変わらず寝ているのを確認した上で質問する。

「兄様が女性の心を持って居る事は薄々解って居ました。そして人に酷い事をされた、ですがそれなのに何故人に尽くそうとするのですか?」


陽は優雅に星空を見上げる。

「そうだな、人を信じたいという思いもあるが、ひとえに上位的存在としての責務の様な物かな。

人より多くの知識を持ち、異常な程高い身体能力を持ち合わせる、それが運命だとしても私は完全に神として人を考えないような事をしたくない。

・・・寧ろ人の為に尽くすべきだと思っている。」

「その結果が残虐な扱いを受ける事でもですか?」

「ああ、ニュクスがしてきた事はこの程度では済まないしな。」

「神の力を持って居たとしてもその神の罪に対する罰を受ける必要があるのですか?」

陰の言葉は悲痛な叫びにも似ていた。

「本来は無いよ、その必要は。でも望まなくてもそうなって行くんだよ。」

「では、兄様はこの戦いをどう思いますか?」

「自由と規律の争いに私は見えるね。」

「負けた場合は?」

「全てが神に管理される世界が訪れる。

その世界では自由な選択などない、職業、思想、表現、労働、子供の人数、結婚相手、恋愛対象、趣味、その何から何までが強制的に決められ、与えられる世界がね。」

陰は顔をしかめる。

「・・・それは人なのですか?」

「そうなったら人は人ではなく家畜に成り下がるだろうね、神の望む世界を実現するための畜生に。」

「・・・人の終わりですか、何一つ認められない世界、異端分子、反対する者も皆殺しにし、幸福まで決められ、与えられる偽りの安寧。」

「そうだね、こんな英語のことわざを知っているかい?

Live in a fool,s paradise(愚者の楽園に住む)

何も知らないでつかの間の幸福に酔う、という意味のことわざだ、私達が負ければこれが文字通りの意味で実現するだろう。」


陰は陽に対し自分の思いを告白する

「・・・私は世界がどうなろうとどうでもいい、ですが兄様と共に居られないのであれば、その世界は私にとって何の価値もありません、男、女、そんな事は関係ありません、私のこの恋情は不変です。

その思いを認められないのであれば、神であっても私は殺します。」

「そうか、なら共に行こうか、新たな世界を築きに。」


陰はその言葉と差しのべられた手のひらを見て、目に涙を浮かべながら頷いた。

「・・・はい、当然です。」

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