93話 鬼灯螢
先へと廊下を進む陽の前に土人形が道を阻むが一撃の下に葬り去られその歩みを止める事は出来ない。
「来ましたか、他のメンバーは既に敗れた様ですね。」
陽がたどり着いた魔方陣が床に描かれた円形の部屋には鬼灯螢が薙刀を持ち、沢山のゴーレムと共に待っていた。
「奪命の法」
そこに居たゴーレムたちが全て崩れて土塊と化す。
「ゴーレムは術師の魔力を籠めて動かす人形、それを奪いとる貴方には意味がありませんか。」
「解ってるだろう?早く降参してくれないか?」
「そうですね、私は貴方に勝てない、それでも私は貴方と戦う。
それが・・・鬼灯家最後の当主としての務めですから。」
「妖魔人は子を作れない、一種の制御装置の様な物だな。なら、始めようか。」
陽は目に見えない速さで距離を詰め抜刀術で斬りかかるが、螢はそれを薙刀で受け流し切り付ける。
その間約一秒であった。
「やはり勝てませんか。」
そう言った瞬間蛍の薙刀は砕け散り、すかさず首に当てられた冷たい感触の前に彼女は動くことは出来なかった。
「気にする必要は無い、どのみち国があの方陣を使おうとした時点で負けは決まっていたからな。」
「・・・そうですね、あの術式が貴方が居る事が前提で作られていたことに気付いた時は負けを悟りましたよ。」
「私の命を奪う術式を龍脈をもって強化する、それがこの術式だからな。」
「用意周到、その言葉が脳裏をよぎりましたよ。」
陽は刀をしまい、手を差し伸べる。
「協力してくれ、国の結界を築く必要がある。」
「聞いています、私の私用のパソコンに貴方が送ったメールを読みましたから。確かにあの方法なら私にだけ伝わりますね。」
「神話の頃のギリシャ語を簡単に読めるのは私やお前でもなければ無理だからな。」
「それでは行きましょうか。」
そう言って歩き出そうとすると陽は足を止める。
「どうしました?」
「危険だ、大阪の皆の所に急ぐぞ!」
外に出て陽の呼び出した一羽の梟に一緒に乗りながら螢は尋ねる。
「何がありました?」
「天界の軍が迫ってきている、まあ、大和なら既に気付いているはずだが。
それでも殆どが来ているな、四天使に天使長もか、本気で人間を滅ぼす気だな。」
「そんな・・・」
「認めんさ、人は人の歴史を紡ぐべきだ、私達は手を貸すだけ、ましてや滅ぼすなど認めない。
そしてここで奴らの憂いを絶つ。滅びるのは奴らの方だ。」
「人の為・・・昔から変わりませんね。」
「神の力を持ったのだからな、せめて人の為に使おう。」
そして陽と螢を乗せた梟は大阪に降り立った。




