恐怖
宇宙には円の法則というものがあるらしい。
自分のやったことは帰ってくる。
良いことをすれば良いことが帰ってくる。
悪いことをすれば悪いことが帰ってくる。
地球が時計の針が回ってるように今やっていることは巡りめぐって後で自分に帰ってくる 。
この原理原則を悟った男は人生の前半戦の記憶を残りの後半戦で全て良きものに変換する覚悟を決めた!がもうちょっと後のお話。
ただ毎日を目標もなく、人生こんなものかと生きていくとこんなものじゃないよ!っというお知らせがやって来るようである。
男は術後の後遺症や免疫力の低下によるアレルギー体質の悪化などいろんなことがありながらも一軒家を持つことができ、二人目の子供も授かり一見何処にでもある幸せな家族に見えた。
しかし男はこの十年間を体の不調のことで家族や回りの人たちに嫌な思いをさせ続けてきた。
体調が悪いのは病気のせい!
思い通りにならないのは環境のせい!
人の悪口!愚痴!泣き言!
悪いことが起きれば輪をかけて大袈裟に悪いことに変換し!
普通のことでも悪いことに言い換え!
良いことか起きても!
例えばアイスの当たりが来ても「もう運を使い果たしたな!」とか「あっちのアイスの当たりが欲しかった!」とか何が起きても悪いことに変換する達人になっていた!
そんな生活をしているなかで男はある異変に気がつき出す。
体の動きがおかしい!
初めは疲れや昔からある腰痛による動きの悪さだと思われた。
それが半年、一年と体の痛みや動きの鈍さが増して来た。
病院や整体に行っても原因がわからず昔からの腰痛が悪いんでしょう!という診断を受けるばかり!
二年くらいたつと普通に歩いていても何もないところにつまずき転倒するほど体の変調が見られ出した。
ここからはもう自分の体がどうなってるかわからないくらい痛み夜も眠れない毎日を送っていた。
男の機嫌は以前より増しに悪くなり、家のなかも殺伐としてきた。
よくピンチがチャンス!などと言うが、あのときはそうは思えなくても後々思うとあれがチャンスのきっかけ!!
体の痛みがいつまで続くのだろうと暗い気持ちで町の通りを男はとぼとぼ歩いていた。
その時、チャンスはやって来た!
横から軽自動車が右折してきた!
男は時速5㎞でてるかどうかのスピードの車を避けきれず接触事故!
車から出てきたのは年老いたお爺さん
。
ただ男は一瞬に5年前に他界した親父に見えた。
よく見ると似ても似つかない顔だったが「お前!いい加減に気づけよ!」と親父の知らせだったのかもしれない。
警察を呼び事故処理を済ませ病院へ。
検査のため一日検査入院。
軽い接触事故だが、それまでの睡眠不足と体調不良!
そんな体で無理して仕事!無理して格闘技の指導!
痛み止の薬をもらい久しぶりにこの日は寝れた。ほんとに二年ぶりくらいに熟睡した。
この後、ほんとに眠れない毎日がくる。
そのためのちょっとした小休止だったのかもしれない!!
事故がなぜチャンスなのか!
事故に遭うと体の全体を検査してくれるから!
次の日、一応肩、腰、頭と打撲してるのでMRIを撮ることになった!
この時に事件が起こった!
男も気づかなかった閉所恐怖症。
何年も睡眠不足と原因不明の体の痛みで自律神経がおかしくなっていたと思われる。
検査が始まりものの五分で発作が起き、たまたまその時に担当医が部所離れてたのかブザーを押しても叫んでも助けが来ず、中で暴れ助けが来たときはものの見事な閉所恐怖症患者が出来上がっていた!
その日からまた眠れない毎日が続く。
天井を見るだけでも気分が悪くなる。
次の日、先生から呼ばれ検査の結果を聞く。
先生
「昨日は大変だったね!!」
男
「・・・・」
先生
「ところであなた事故とは別に体に変調はない?」
男
「ちょっと体の動きがおかしいです。」
先生が体の反応チェックをやると、先生は「これおかしいとかじゃなくて麻痺してるよ。原因はこれだろうね!」とMRIの写真に指を指したとき!!
男は青ざめた!
脊髄を腫瘍が押し潰している!!
あの白い影が!また!
この十年間怯え続けてきたことがまた現実となってやって来た!!
腰が抜けたとはこの事なのか足に力が入らず立てない。
こちらの尋常ではない反応に先生も「大丈夫ですか」と在り来たりな言葉!
男はこの十年間の話を先生にすると先生も困った顔をしながら、まだ悪性って決まった訳じゃないから!と言うくらい!
ナースさんに車椅子に乗せてもらい病室に戻り男は今世味わったことのない恐怖感を感じていた。
つづく