少年との出合い
男は格闘技の世界に入って30年以上になる!
選手だったのが10年!
指導者になってから20年!
この間に所帯をもって行けなくなったり
病気になって行けなくなったり
後遺症がひどくて行けなくなったり
体が不自由になって行けなくなったり
何度も何度も縁が切れそうになっても戻ってきた!
トレーニングの資格もたくさん取った!
それを実践で生かそうとした!
だが実践ではうまくいかなかった!
やはりこれまで格闘技で培った体の動きや軸の取り方、メンタルのコントロールなどが全てにおいて役に立った!
トレーニングで得た知識も格闘技の動きと合わせて実践で生かすと他のスポーツでもうまくいった!!
その大変役に立つ格闘技もいろんな経験を得て進化していった。
格闘技だけでなく他のスポーツやスポーツとは全く関係のない一般の運動不足の方々の運動指導までたずさわるようになった!
こんな人生になるとは夢にも思ってなかった男である!!
いつか必ず来る人生最後の日。
人生最後の日に、「あーお もしろかった」と笑って死ねるか。
そこから逆算して、 「では今日は何をすべきか」
病室の白い天上を動かない体で見つめながら生きていることに感謝して目の前のことを楽しんで生きる!と覚悟した!
「何かのために何かをやる!!」
自分自身との約束を守る人生
これは専門分野である格闘技での物語である。
男が病気から生還し後遺症と戦っていた頃、一人の少年が格闘技の門を叩いた!
格闘技の経験がありセンスもあった。
基本的な動きは直ぐに覚えた!
そしてスパーリングが始まる!!
ほぼここで続くかどうかが決まる!
ミットを打ったり蹴ったりするのは気持ちが良くストレス発散になる。
だが相手も打ってきたり蹴ってきたりするとなると話は別になる!
とにかく初めは痛い!
思った以上にキツい!
何百人!もしかしたら千人以上の人たちが門を叩いた!
しかしほとんどがここで脱落していく!
少年も例外ではなかった!
まだ10代の少年が大人にかかっていって通用する訳がなく、いつも面白いようにやられてダメ出しを言われの繰り返し!
この頃、男は格闘技の塾の師範代として指導をしていた!
指導方法はダメ出しのオンパレード!
ダメなところを探してはダメ出し!
誉めることもなく自分のしたいように言いたいように勝手気ままに顔をだす名前だけの師範代だった!
塾長はトレーニングの仕事を始めたときに一緒にやったが心折れて挫折した幼なじみの先輩である!
先輩の指導は飴とムチだった!
飴1:ムチ9
スパーリングで塾生をボコボコにやって相手に良いところが一つも無くても「あの時のお前のパンチが効いたな~」と必ず一つは誉めていた!
毎日ボコボコにやられている人間の心理からすると何が良かったのかわからないが誉められるとまたやろうという気がするらしい!
後々その先輩のやってた誉める指導は参考になった!
男の場合、飴9:ムチ1だがこの境地になるまでまだまだ何年もかかる。
その少年はだんだんスパーリングの時間になるとスパーリングの場所から居なくなり逃げるようになった!
男はこの少年ももうじき来なくなるだろうと思いながら自分の練習と塾生たちへのダメ出しをして自己満足の毎日を送っていた!
その少年も学生時代が終わり普通の工場に就職し仕事をしながら塾を続けていた!
あるときその少年がアマチュアの格闘技の大会に出ると言ってきた!
塾生の誰かが格闘技の大会に出ると言うとトレーナーとして練習に付き合うのは男の役目だった。
その練習して強くなろうとしている塾生をスパーリングでボコボコに痛めつけるのは塾長の先輩の役目!言葉で心折るのは師範代の男の役目!
こんな塾で強い塾生が出るわけもなかった!
それでもその塾生は大会に出る練習をして塾長とのスパーリングも体痛めながらもなんとかしのぎ大会までたどり着いた!
この頃、男の体は腰痛が以前より悪化して練習に付き合っても走ったりは出来なくなっていた!
ミットでパンチやキックを受けても腰に痺れと痛みが走りかなり無理をして練習に付き合っていた!
男は肺の病気から五年以上たち定期検診は終了していた。
しかし術後から悪化したアレルギー皮膚炎、鼻炎、気管支炎、腰痛、肩こり、手術箇所の痛み、とにかく病院依存で薬漬けの生活だった!
そんなボロボロの体でも格闘技にたずさわっているときは少しは心が紛れた。
そしてその塾生の試合、スピードで圧倒して判定で勝利した。
塾長は勝利を褒め称えていた!
男は勝っても尚且つ試合の中でのダメ出しを言っていた!
その後この少年はある決断をする!
プロになる!!
少年といっても、もう二十歳、将来を考える年頃!
少年もいろんな意見を聞いただろう!
出した決断は都心のジムへ行き住み込みでプロになる!
その話を聞いて無理だろうと思った!
だが現役引退と命の危機が同時に来た経験から悔いだけは残さないようにと伝えた!
それから二年間の月日が流れ、あの少年はアマチュアでも良い成績を残しプロになっていた!
田舎で塾長のスパーリングパートナーで終わるより都心に出て自分の可能性を試そうと思ったかつての少年は正解だった!
その頃、男は脊髄の病気が見つかり自分の将来に不安と恐怖と戦っていた!
そんな男にかつての少年(仮名)拓也がお見舞いにやって来た!
拓也は入院中の男にこの間の試合を見てほしい、とアドバイスを聞きに来た!
試合は負けた試合だった!!
男は今はそれどころではないと思ったが少しでも気が紛れればと思い試合のアドバイスを言った!
今までだったらダメ出しを言っていただろう!
だかもう拓也にアドバイスを言うのが最後かも知れないと思ったときダメ出しは探さなかった!
動きや攻撃のよかったところを誉めて、その動きが最後まで続くように練習したらいい、と伝えた!
拓也は今の境遇やこの二年間の出来事を話し出した!
最初行ったときそのジムに有名な先生がいるということで行ったが、その先生は直ぐに地元に戻りジムにちゃんとした指導者がいなかったこと!
この二年間も勝ち負けを繰り返し、まだランキングにも入っていないこと!
男はただ今の環境に不安があることを誰かに聞いてほしいだけだということに気づいた!
男は怒る気もしなかった!
自分を鏡で見ているようだった!
男は拓也に言った!
「俺も先が見えずに不安はあるけど諦めてはないぞ!」と心にもないことを言った!
拓也は「来てよかったです!話せてよかったです!元気にしてもらいました!」と言って帰って行った!
俺でもまだ人を元気にする力があったのか!と思いながら拓也を見送った!
ここから男は言葉を変えて未来を人生を変えていくことになる!
そして今はまだ勝ったり負けたりを繰り返し上がったり下がったりの人生を送っているこの拓也という格闘家と日本一を目指すことになろうとは夢にも思わなかった!
つづく!




