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ボッチVS蝙蝠軍団

 



 私はこちらに向かって飛んで来る黒い影……蝙蝠型の魔物、タイラスバットに向かって鞭を振るった。


 タイラスバットは他の魔物とは違い空を飛んでいる分スピードが速いのが特徴の魔物である。


 体長は1メートル超えるほどの大きさだが、その大部分は翼が占めているのでスピードが速い代わりに頑強さで劣っている。


 一撃さえ入れば簡単に地に落ちるので倒すのはそう難しい話ではない。


 無いのだが………



 「もう、いい加減、諦めて、くれない、かなっ!!」 



 パシンパシンと私が鞭が振るう度、タイラスバットが地に落ちていく。


 その数、既に10体以上。



 「ギギィーッ!!」

 


 甲高い鳴き声を上げて襲い掛かってくる蝙蝠達。


 一振りで数羽の蝙蝠を打ち落としているが、それでも一人で対処するには数が多すぎる。


 一斉に攻められ必死に健闘をするも、撃ち洩らした蝙蝠達が次々と飛びかかってきた。



 「あだっ!? あだだだだっ!!」



 うぎゃあ噛まれたっ!!


 痛い痛い………痛いってばぁっ!!



 痛みを堪え、噛み付いてきた蝙蝠をぶら下げたまま腕を振り回す。


 ブンブン振っても離れず、壁に叩きつけてようやく引き剥がす事に成功。


 しかし後続の蝙蝠達が次々に襲いかかってくるのできりがない。


 私は蝙蝠達を近づかせないよう素早く鞭を振るい牽制しながら、腕に巻きつけてある数珠に魔力を流し術式の形成する。


 形成するのは相手を縛り無力化する術式。



 「奴らを絡み取れっ!! 『絡みつく粘塊(スティッキー・ゼリー)』」



 指を間を閉じるチョキのような形で構えた手の先からまるでシャボン玉のように粘塊が膨らんでいき、バスケットボール程の大きさになった所で撃ち出された。


 放たれた粘塊は飛び交うタイラスバットの真上の天井に命中すると同時に破裂し、蝙蝠達に向かって降り注ぐ。


 飛び散った粘塊は蝙蝠達に付着するや否や強烈な粘着性を発揮し、蝙蝠達の動きを阻害する。


 結果、スティッキー・ゼリーを受けた蝙蝠達は満足に動くことも、まともに飛ぶことも出来なくなり次々と地面へ落ちていく。


 私は落ちた蝙蝠は無視し、スティッキー・ゼリーから逃れ無事だった蝙蝠を確認すると鞭を振るいつつ再び術式を形成、スティッキー・ゼリーをもう一度撃ち放った。


 ………

 ……

 …



 「あ”~……もう駄目だ、動きたくない」



 スティッキー・ゼリーを何度も連発し群れをだいぶ削った所でようやく蝙蝠達は不利を察したか逃げ出していった。


 なんとか追い払う事ができたがこちらもボロボロだ。


 噛み付かれた所は服の上からだったのでたいした傷にはなっていなかったけど、こんなにも魔法を使ったのは久々だったのでだいぶ疲れてしまった。


 お仲間探しにばっかかまけていたせいでちょっと鈍っちゃってたっぽいね。


 これからは気をつけないと。


 疲労で体が重く、もう休みたい欲求に駆られるがまだ休むわけにはいかない。


 辺りにはスティッキー・ゼリーに囚われた蝙蝠が未だジタバタしてるのだ。


 魔法が切れる前に止めを刺さないと。



 それから私は一体一体踏みつけて蝙蝠をしとめていった。


 無抵抗だけど数が多いからそれだけでも大変だ。


 しかも踏みつける度に蝙蝠の断末魔を聞かされ、私のSAN値がどんどん下がっていく。



 もうやだー、休みたい……。



 長い時間と私のSAN値を犠牲にようやく捕殺作業が終えることができた。


 だけどまだやる事が残ってるので休めないんだよね。


 残りの作業……迷宮探索で収入を得るために倒した魔物を解体して売れる素材を回収しないといけない。


 タイラスバットは皮膜と牙が売れるので一体一体丁寧に解体していく。


 皮膜を回収する時はいいんだけど牙を取る時に蝙蝠の苦痛に歪む顔を拝まないといけないのは勘弁して欲しい。


 精神衛生上、非常によくない。


 蝙蝠の血走った眼と眼が合う度、私の精神がゴリゴリと削られていくのを感じる。



 許せ蝙蝠、そして私の為に()となってくれ。



 私は余計な事は考えないよう無心になって解体を続けた。 






 「ようやく終わった……」



 ふう、と私は一息ついた。


 大漁にあった蝙蝠の死骸はすべて丁寧に解体され、私の目の前には大漁のタイラスバットの牙と皮膜が積まれている。


 予想外な災難には見舞われたがそれに見合うだけの対価を得る事ができた。


 一つ一つは安価でもこれだけあれば結構な金額にはなる筈だ。


 これを得る事が出来ただけでも迷宮に来た甲斐があったというものだ。


 街に戻ったらちょっと奮発してご馳走を食べに行くのもいいかもしれない。


 いや、絶対に食べに行く!!



 その後、しばらく休憩をして探索に戻るまでの間、私の顔からニマニマした笑みが止まる事がなかった。





 蝙蝠の群れを退けてからは魔物に遭遇するもそこまで危機的状況に陥る事は無く、順調に探索を進んでいった。



 「むふふ。 大漁大漁」



 ここまでに採取出来たのはタイラスマッシュの傘×3、タイラスバットの牙×56、皮膜×56、タイラスレッサーリザードの尾×16、ゴブリンの牙×21、スライムの核×17。


 大き目の荷袋を持って来たのにだいぶ埋まってしまった。


 換金するのが非常に楽しみだ。


 もう引き返してもいいかも……なんて思うが今回の探索は慣らしの意味合いや自分の実力でどのくらい潜れそうか調べるといった目的もある為引き返すのは我慢だ。


 もしいけそうなら五層目の攻略も視野に入れてもいいかも知れない。


 五層にはそれまでの階層にいた魔物より強力なボス級の魔物がいるが、そのようなボス級の魔物が守る階層には地上出口と繋がる転移陣が設置されてるらしい。


 それを使えば引き返すよりも早く地上に戻れるだろう。


 ソロで潜っているので無謀な事は避けたいが私で対処可能な強さなら挑戦するのもありだ。


 まあ、どうするかは五層を覗いてから決めても遅くない。


 そんなことを考えながら進んでいたら広間に出た。


 そして広間の奥に見えるのは下層へ続く階段。


 三層の出口に辿り着いたようだ。


 時計を見てみると予定時刻を大幅にオーバーしていた。


 原因は恐らく集団で襲いかかってきた魔物の討伐……じゃなくその後の解体作業に時間がかかりすぎたせいだろう。


 貧乏性な性質なもんで倒した魔物は全て解体して素材を回収してたからなぁ。


 でも、その労力に見合う分の収穫はあったから良しとしよう。



 私は広間に魔物避けの聖水を撒くと野営の準備を始めた。


 荷物を下ろすと鎧やポーチなどの体を締め付けるような装備を外していく。


 今まであった重りが無くなり、身軽になった開放感を感じながら食事の仕度を済ませる。


 荷物の中から取り出したるは黒パン、干し肉、水を出せる魔石、以上。



 ………ガジガジ、ガジガジ。


 あぁ、美味しい物食べたいなぁ。



 ひもじい食事は何故かいつも以上にしょっぱく感じました。





 これにて本日の探索、終了。



 

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