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戦慄の魔術師と五帝獣  作者: 戸津 秋太
三章 縋りついたその先に
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八十三話

「「「「市内見回り!?」」」」


 生徒会室でのミーティングは、一同の困惑の声で始まった。

 ここ最近の生徒会補佐会の活動はといえば、掃除や資料整理の雑務を多少するだけだった。

 そんな中で、今日のミーティングでレイラが唐突に、生徒会補佐会の面々に告げたのだ。


「そうです。皆さんはいずれ生徒会になるのですから、その仕事を今からやっておくのがいいと思い、学園長に相談したところ了承してくださいました」

「それで、市内見回り……?」


 フェイと同じ魔術師で補佐会の二年、グラエムが聞く。


「はい。生徒会が兼ねてから行ってきた辺り一帯の巡回。それを皆さんにはやってもらいます。あぁ、勿論補佐会の方だけでというわけではありません。暫くの間は生徒会も付き添って行っていただきます」


 市内見回りは別に指示されていることでもないので、他にやることがあればそちらを優先する。

 とはいえ、数年前の生徒会会長がそれを始めてからは慣習のようになっている。

 実際に、暴漢を捕まえたりとか、実績も一応あるらしい。


「ということで、今から人員の配置を発表しますね」


 レイラの言葉に、フェイたちは頷く。


「一週間ごとのローテーションで、四人ずつ行ってもらいます。あぁ、そのうち二人は生徒会の中から選ぶことになります」


 四人。

 フェイはレイラの説明を聞きながら、少し考え込む。

 補佐会といえば、フェイ、ブラム、エリス、グラエム、セリア、ユニスの六人。

 そのうち魔術師は二年のグラエムとセリアになる。

 個人的には、ブラム、そしてエリスと組むのは論外。

 可能であれば同じ魔術師の二人のどちらかと組みたいところだ。


 レイラがどういう意図で人員の割り当てをしたのかは知らないが、ひとまずそれを聞こうと耳を傾ける。


「まず今日から一週間は、フェイ君とエリスさん。生徒会からは私と、そしてグレン君で行います」


 いいですね? と、目で問い掛けてくる。


(エリス……)


 何となく予想はついていたと、フェイはため息をつく。

 レイラの人選だ、こういうことはしてくるだろう。

 そして、グレン。


 グレン=マーソン。

 七公家の一角を担うマーソン家の一人息子。

 生徒会の五年生。

 フェイも昔何度か話したことがある。

 きっぱりとした七三分けの黒髪に黒縁メガネ。

 その容貌通り真面目だ。

 その上精霊術師としての力も優れている。

 そして、レイラ。

 彼らの共通点が全く分からない。


 フェイは考えるのをやめる。

 レイラがどんな考えを持っていたとしても、どうせ放課後一週間過ごすだけだ。

 別段何も起きないだろう。

 自分は、努めて巡回に集中すればいい。


 そう心に決めて、レイラに向き直った。


 ◆ ◆



「どうして、この人選なんですか?」


 放課後。

 市内の巡回のためフェイは校門にいた。

 集合時間までまだ時間があるので、フェイの他にレイラしかいなかった。

 下校していく生徒たちがフェイたちの方を奇妙なものを見るような目で見つめながら門を抜けていく。

 そのことに多少の居心地の悪さを感じながら、フェイはすまし顔で横に立っているレイラにそう聞いた。


 人選を聞かされた時はするべきことに集中すればいいと思っていたが、せっかく二人きりなのだ。聞いて見る分にはいいだろう。


「どうして、とは?」


 赤髪を自身の右手で梳きながら、レイラは返す。


「エリスさんを入れてきたのはなんとなくわかります。そしてあなたの性格なら、グレンさんのところにセシリアさんを入れるはずだ。なのにあなたはそうしなかった。どうしてですか?」

「どうしても何も、純粋なくじの結果ですよ」


 肩をすくめながらレイラはそう返した。

 今回の人選に自分の意思は介在していないと。

 だが、そんなことをフェイが信じるはずもなかった。


 レイラを睨んだままのフェイ。

 やがて、レイラは深いため息をついた。


「…………。セシリアさんは、ブラム君と組んだ方がいいと思いましてね」

「ブラムと?」

「最近、色々ありましたからね。セシリアさんとブラム君の間も何かと問題が生じているんですよ。勿論、それはエリスさんにも言えることですが、彼女の場合ブラム君よりもあなたの方が遥かに気になるようですしね」

「……?」


 あまり要領を掴めないレイラの言葉にフェイはただただ首を傾げた。


「それに、グレン君もあなたと面識があるそうではないですか。これを機に話してみては?」

「昔、ちょっとしたパーティで挨拶を交わした程度ですよ」

「男爵位を得て貴族になられたのですから、貴族の人間と話す練習はしておいた方がいいと思いますが?」

「間に合ってます……」


 息を吐き捨てながらフェイはそう返した。

 どうも、フェイは彼女と会話するのが苦手だ。

 何もかも見透かされているような気がするから、というのもある。

 それ以上に、自分に必要以上に干渉してくることが気に食わないし、気持ちが悪いのだ。


「あ……っ、お待たせしました」


 レイラとの会話が途絶えたところで、エリスが到着した。


「集合時間までまだ時間がありますし、グレン君もまだですから気にしないでください」


 申し訳なさそうにしているエリスに、レイラは気にするなと声をかける。

 やがてグレンも到着し、フェイにとって居心地の悪い市内の巡回が始まった。

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