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戦慄の魔術師と五帝獣  作者: 戸津 秋太
二章 妄執の果てに
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六十二話

●――――――――――――――――――――――――●

◆人物まとめ◆

・生徒会補佐会メンバー

 ・グラエム=ネルソン

  魔術師、二年

  ゲイソンの髪より黒が強い、こげ茶色のような髪に黒眼、体は全体的に引き締まっている。

  フェイに対しては友好的


 ・セリア=ライリー

  魔術師、二年

  グラエムの幼馴染

  黒い眼に、眼と同じ色の髪はショートカットで活発的な印象

  フェイに対しては友好的


 ・ユニス=セスナ

  精霊術師、二年

  紫色のショートカットの髪に、髪と同じ紫色の目が特徴的な、女性と言うより女の子という表現があっている少女

  フェイに対して、少なくとも敵対心は抱いていない


※詳細は二十一話参照

●――――――――――――――――――――――――●

「片付け……ですか?」

「ええ。生徒会補佐会の導入により、どうしても生徒会室だけでは人数的に狭くなってしまったので。そこで、そのことを学園長にご相談したところ、空き部屋であれば自由に使って構わないと言われましたので、丁度生徒会室の隣の部屋が空いているので、ここを生徒会補佐会室として使おうと思いました」

「はあ……、まあ、それは構わないんですが……」


 昼休み、生徒会補佐会メンバーに招集がかかり、フェイを始めブラムやエリス、グラエム達は生徒会室に集っていた。

 生徒会補佐会としての初仕事があると言われ、幾分意気込んでいたのだが、その仕事内容が片付け、所謂掃除であると生徒会長であるレイラに告げられ、フェイを始め補佐会一同は少々落胆した。


「現在は空き部屋と言っても物置として使っていたので、物が無造作に置かれています。とは言え、生徒会のメンバーも勿論手伝いますので、そう時間はかからないと思いますが。ですので、今日の放課後、もう一度ここに来てください」

「分かりました……」


 自分たちに居場所を作る為ならば仕方がないと、フェイ達は首肯する。

 と、そのまま教室に戻る前に一度だけその空き部屋を見ることにした。


「こ、これは……」

「フェイ、これは結構大変そうだぜ」


 空き部屋の室内の状況に戸惑いの声を漏らしたフェイに、グラエムがそう呟く。

 机やソファの配置は生徒会室と同じであるとは言え、長年物置としてしか使われていなかった室内は埃がかぶっていて、何より散らかっている。

 机の上には幾つもの書物が無造作に積まれていて、少し触っただけで崩れてしまいそうな有様だ。

 その光景を傍らから見ていたブラムは、表情を引き攣らせながら悪態を吐く。


「何故俺がこんな汚いところを掃除しないといけないんだ。冗談じゃない!」


 そんなブラムを、フェイはちらりと見る。

 王城での一件以降のブラムとフェイの関係はといえば、全く改善されていない。

 両者とも、仲良くする気など毛頭ないのだから、当然と言えば当然だが。


 そんなブラムも、自身より強いと認める数少ない人物である父、アレックスがフェイに負けたことを目の当たりにして、ようやく自身の力量がフェイに劣ると自認したのか、あれ以降フェイに対して目立ったことはしていない。

 険悪な雰囲気はあれど、魔法の打ち合いにはなっておらず、それだけでも十分改善されたと言えるだろう。


 そして、そんなフェイとブラムの関係をはらはらしながら傍らから眺めるのは、今この場にいるエリスや、他の生徒会補佐会の面々、そしてセシリアだった。

 とは言えフェイ本人からすれば、ブラムから仕掛けてこないのであれば何もする気はない。

 そんなことよりも、ブラムよりも遥かに警戒すべき敵が生まれたばかりなのだから、それどころではない。


「会長はああ言っていましたけど、これはもしかしたら数日かかりそうですね……」

「だな……。あーあ、こっそり掃除をさぼる事とか、出来ないものかなー」

「そんなことを私が許すと思う?」


 グラエムが不意に漏らした言葉に、彼の幼馴染であるセリアが黒い笑みを浮かべながら囁く。

 そんな彼女に対して、顔を引き攣らせながらグラエムは弁解した。


「いや、冗談! 冗談だっつの! なあ、フェイ!」

「もしかしたら、あるいは……」

「おい、そこは先輩をフォローしてくれよ!」


 フェイに対して助けを求めたグラエムだが、それをフェイは真剣な顔で意味ありげに呟く。

 そんなフェイの言葉に慌てふためくグラエムを見て、フェイは頬を緩ませた。


「馬鹿馬鹿しい! 俺は戻るぞ!」


 そんな風に和気あいあいとしているフェイ達を見て気分を害したのか、ブラムは吐き捨てながらこの場を後にし、それを追うようにエリスもまた、立ち去った。


「たくっ、自分勝手な奴だ……」


 そんなブラムに、グラエムは悪態を吐く。

 この場にいる誰一人として、そんなグラエムの言動を否定することなく、苦笑いを浮かべる。


「フェイ……」

「はい、何ですか?」


 突然、今まで黙っていたユニスがフェイに声をかける。

 彼女自身、口数はそれほど多くない。


「あなた、強い……?」

「……、急にどうしたんですか」

「ブラム、あなたを恐れてた」

「……! 気のせいですよ。ブラムが僕を恐れるはずがない」

「そう……? ならいい」


 勘の鋭い人だなと、フェイは思いながら部屋を出た。






「……ということだから、今日は流石に先に帰っていてくれないかな?」


 放課後に用事があることをメリアに説明し、先に帰るように促すフェイ。

 そんなフェイの事情を聞き、メリアは渋々といった感じで首肯しながら口を開く。


「分かりました……補佐会の用事でしたら仕方がありません。夕食も用意しておきますね」

「うん、悪いけど、よろしくね」


 そんなこんなでメリアの説得を終えたフェイは、メリアと共に教室へと足を運ぶ。

 いつもであればゲイソンたちと共に食堂で昼食を済ませるのだが、今日ばかりはフェイは一人で食事をとった。


 普段通りの学生生活を送っているわけだが、この数日間でフェイの立場は激変している。

 国王陛下から爵位を賜り、領地を得る。

 加えて闇の帝級精霊とその契約者の襲来。


 これからのことへの不安ばかりがフェイの胸中を占めているのだが、少なくとも学校にいる間だけは、そんなことを忘れられる気がした。


 学校にいる間だけは。

 五体もの帝級精霊と契約しているフェイが、精霊学校内に置いて平穏な暮らしを続けることが出来るはずがない。

 魔術師と精霊術師の軋轢、そしてフェイの現在の立場は、魔術師たちにとっては歓迎されないものであると、そして、それはゲイソンたちをとっても例外ではないと、そのことをフェイは数か月後に否が応でも知ることになる。

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