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戦慄の魔術師と五帝獣  作者: 戸津 秋太
一章 戦慄の魔術師の帰還
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四話

教室の前に着き、ドアを開けて教室に入ると中の生徒たちが一斉にこちらを見た。

しかし、誰も声をかけず目をそらしていく。


黒板を見ると、『自分の名前が書かれた紙が貼られている席に座って待機しておくように』……と書かれているので、それに従うことにする。



自分の席を見つけ座ろうとしたとき、前の席に座っていた茶髪?の男子生徒が声をかけてきた。


「よぉ、お前の黒髪綺麗だよな……」

「初対面の……それも、男に向かって初めていうセリフがそれか……」

「おいおい、勘違いするなよ。俺はゲイじゃねえ!!」

「分かった分かった」


苦笑しながら、そう返す。


「おっと、自己紹介がまだだったな……。俺はゲイソン=ダウナー。ゲイソンって呼んでくれ!」

「ゲイ……ソンか……」

「おいそこ!ゲイを強調するな!」

「ごめんごめん!僕はフェイ=ディルク……僕もフェイでいいよ」

「んっ?……フェイ?」

「どうした?」

「いや……昔そんな名前を聞いたことが……。まぁいいか」

「あ、ああ」


前の席の人が気さくな人でよかった……。


「ところで、知ってるか?」

「ん……何を?」

「この学校の生徒会長と副会長……すっげえ美人らしいぜ!入学式の時に拝めるらしい……楽しみだよな!スタイルとかすっげえらしいぜ!」

「へ、へえ……」


いつどこで誰からそんな情報を仕入れたのか気になったが……あえて聞かないことにする。

そんなことを考えていると、横から声が飛んできた。


「あぁーやだやだ。どうして男ってこういうことばっか考えてるのかしら?」

「あぁ?んだてめえ!ケンカ売ってんのか?」

「あら、聞こえてたの?ごめんあそばせーー」

「て……てめえ」


どうやったら、初対面でケンカできるんだろう……。



「あ、私はアイリス=メアリー。名前で呼んでいいわよ、フェイ君」

「え……うん、よろしく」

「おい!おれのことは無視かよ!」

「あんな下品なことを言う男と話したくないもの」

「あれのどこが下品なんだ!……ったく、まぁ女には男のロマンは分からねえわな」

「そんなロマン、分かりたくもないわよ!」

「んだと!?」

「何よ!」

「二人とも、そろそろやめときなよ」

「ちっ……、まぁ、フェイに免じて許してやるよ」

「しょうがないわね……許してあげるわ!」


……言葉では二人ともこんなことを言っているが、まだ睨み合っている。



ふと、アイリスが何かを思い出したように声をかけてくる。



「そういえば、フェイ君の名前ってどこかで聞いたことあるんだよね……」

「あぁ、俺も」

「……へ、へえーそうなのかー。気のせいじゃないかー?」

「んーそうかな?」

「そうだって!ほら、先生来たよ!」



いいタイミングで先生が来てくれた……。



……先生Good job!





――僕は小さい頃、父が屋敷で開いたパーティによく参加させられていた。

父がパーティを開く主な理由は、僕の自慢をするためだったのだろう。

そのためフェイ……という名は、ほかの名家たちの間でも有名だった。


僕の魔法は、同年代でも秀でていたため、僕の名前を使われることはよくあったらしい……。


「ボネット家のフェイという子は、お前と同じ年なのにもう中級魔法を使えるぞ!……それなのにお前は!」


……といった感じで。



僕の名前に聞き覚えがあるということは、この二人もそれなりの家の出……なのかな?





教卓の前に若い男の先生が立った。

そして、教室を一望し終えると、自己紹介を始めた。


「俺がE組担任のアーロン=ガヴィルだ。お前たちと同じ魔術師だ、よろしく」


生徒達からは、「よろしくお願いします」といった声が聞こえてくる。


「さて、今日ここにいるお前たちに言っておくことがある。この学校は学園長の方針で、精霊術師と魔術師の差別が無いように配慮されている。だが、先生方はともかく、生徒の中にはお前たちのことをごみのように見る生徒もいる……分かるな?」


その言葉を聞いた瞬間、ほとんどの生徒たちが目を伏せる。

だが、フェイには彼の言っている意味がよくわからず、頭上には「?」が浮かんでいた。


「毎年、入学式の後に絡んでくる連中がいるが、手は出すな。相手が先に手を出した後なら校則が何とかしてくれる」


その言葉に生徒たちが一斉に頷く。


「いいか、今は耐えろ!強くなるんだ!そして、あいつらを見返してやるんだ!!」


生徒たちは、先生の目に涙がたまっているのに気づいて、肩を震わせる。

そして一斉に、「はい!」と言った。



……その中でフェイは唯一人、現状を理解できず呆然としていた。





――魔術師は精霊術師に勝てない……。

長い間変わることのなかったこの事実が、一人の少年によって虚構になるとは、この時……誰も知らなかった。

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