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戦慄の魔術師と五帝獣  作者: 戸津 秋太
一章 戦慄の魔術師の帰還
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閑話 ゲイソンの災難

 俺は職員室に来るようにアーロン……先生に呼ばれ、向かっている道中、【エンチャントボディ】のテストの時のことを思い出していた。


 ファミスは魔力を極限まで薄く放射し、魔力の少なさを補うことで合格していた。


 アイリスも……合格していた。


 その中でも圧巻だったのがフェイだ。

 白い綺麗な魔力を全身にむらなく、均等に張り巡らし、文句なしで合格していた。

 あの魔力量と純度でどうして精霊と契約できないのかが、クラスメートの間での謎になっている。


 えっ、俺?

 もちろん合格したぜ!


……あれから数日、ブラックって呼ばれ続けたがな、畜生!


 アーロンもアーロンだぜ。俺が【エンチャントボディ】を使うと、「まあ、合格だな……一応」って、あいまいな感じで言ってくるんだぜ!

 何だよ一応って!こちとら苦労してんだ!

 フェイの魔力純度が日に日にうらやましく感じる。





「失礼します」


 職員室に入る。

 精霊術師の教師の目が気になるが、無視してアーロン……先生のところに向かう。


「……来たか」


 睨みつけながら、低い声で言ってくる。

 こええ、まじこええ。宿敵と邂逅したかのような目で生徒を見てくるよ、この教師!


「あのー、何の用でしょうかー、アーロン先生様」


 出来るだけ丁寧な口調で、敵……先生の機嫌を損なわないように聞く。


「自分の胸に手を当てて考えてみろ」

「……優秀な生徒を呼び出し、何かご褒美的なものを?」

「なわけないだろ!」


 こめかみに青筋を立てながら机をたたき、怒鳴ってくる。


「これを見ろ、これを!」


 アーロンが、9点と書かれたテスト用紙を俺に見せてくる。

 名前は、ゲイソン=ダウナーと書かれている。


「……10点満点ですか?」

「100点満点だ!!」

「嘘だ!」

「嘘じゃねえ!よく見ろ!」


 怒鳴り声が職員室で応酬する。

 いつの間にか、職員室にいたはずの先生方はおらず、この部屋にはアーロンと俺の二人きりとなっていた。


「お前、寝てても満点をとれるって言ってたよな!俺の授業なんか寝てても満点取れると!」

「……これには、理由があるんですよ」


 意味ありげな表情で、重々しく口を開く。


「ほう……言ってみろ」


 すると、それが功をなしたのか一応聞いてやる……といった顔で俺を見てくる。


「テストが……テストが難しかったんですよ!」

「当たり前だ!テストを簡単に作ってどうする!」

「えっー」

「何だその声!」


 やれやれ、といったように首を振る。


「フェイに、お前の勉強を見るように頼んだんだがな……」


「それならやりましたよ、フェイと勉強」

「それで、どうしてこういう結果になった」

「いやー、勉強をすると睡魔が……」


 てへ、といった顔をすると、ものすごい形相で睨まれる。


「そうか……やはりお前は俺が直接手を下すしかないようだな」

「えっ……」


 急に何かを決意したような顔で俺を見てくる。


 てか、手を下すってなんて物騒な言い方だよ!


「ここに、問題用紙がある」


 そう言って取り出したのは、山積みにされている紙の束。


「ま、まさか……」

「さて、今からこれをやっていくか」

「くっ……先生、俺この後用事が!」

「何があるんだ?」

「か、彼女とデートが」

「はい、嘘だな。補習やるぞー」


 即答!?

 俺に彼女がいないと決めつけてやがる、この教師。

 いや、いないけどよ……。


「いや、他にも用事が!」

「聞いてやる」

「家で、復習をしようかな……と」

「安心しろ、今すぐここでしてやる!」

「やめてーー!!」


 職員室に、悲鳴が響いた。

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