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戦慄の魔術師と五帝獣  作者: 戸津 秋太
一章 戦慄の魔術師の帰還
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二十一話

 午後の授業も無事終わり、僕は生徒会室に行かなくてはならないので、メリアに「先に帰ってていいよ」と言って鍵を渡そうとしたが、「いえ、待っています」と言われ鍵を返された。

 早く済ませないとな、と思いながら生徒会室に向かう。

 だが、その足取りは重い。


「はあ、ブラムは絶対に面倒なことしてくるよな……」


 憂鬱だ……と呟きながら廊下を歩く。





 いつも通り生徒会室の前につき、ドアをノックして中に入る。

 そこには生徒会長と副会長、そして見慣れない生徒が二人いた。


「遅れましたか?」

「いいえ、大丈夫ですよ」


 彼女の性格を知らない人ならころっといってしまうであろう笑みを浮かべて、そう答えてくる生徒会長。

 事実、その笑みを見たひとりの男子生徒の鼻が伸びていた……が、横にいた女子生徒に足を踏まれていた。


「あの、この方たちは?」

「残り二人の魔術師枠に入る方ですよ」


 会長がそう言うと、二人の生徒が僕のほうを向いてきた。


「俺はグラエム=ネルソン、二年だ。よろしくな」


 男子生徒のほうは、ゲイソンの髪より黒が強い、こげ茶色のような髪に黒眼、体は全体的に引き締まっていて武の心得がそれなりにあるように思える。


「私はセリア=ライリー、同じく二年よ。よろしくね」


 女子生徒の方は黒い眼に、眼と同じ色の髪はショートカットで活発的な印象が持てる。


「あ、僕はフェイ=ディルク、一年です。よろしくお願いします」

「ああ、お前のことは知ってるぜ」

「知ってる?」


 面識はなかったような……フェイは頭の中で彼らと会ったことがあったかどうか記憶を探る。

 すると、考えていることが分かったのかグラエムが苦笑しながら言ってくる。


「面と向かって会ったことはないが、先日俺たちもあの場にいたからな」


 先日というのが、ブラムとやり合った時のことを言っているのが分かったフェイは、得心がいった。


「なるほど、道理で会った覚えがないわけですか」

「それに、私たちはボネット領内の小さな村の出身だからね」


 女子生徒、セリア=ライリーが言ってくる。


「と言う事は、あなたたちも……」

「ああ、大体は知ってるつもりだ。まあ、学園長とかに口止めされているから誰にも言ってねえがな」

「助かります」


 口止めされただけで本当に言わないでいられる人はあまりいないだろうと思い、この人たちはいい人だなとフェイは心の中で思った。


「それにしても、ブラム君たちは遅いですね」


 セリアとグラエムが、ブラムと聞いた瞬間それに反応する。


「ブラムが入るんですか?」


 グラエムがレイラに向かってそう言う。

 敬語を使っているのはレイラが年上だからだろうが、自分の住んでいる村の領主の息子を呼び捨てしていいのかな?と思ったが、学校だから問題ないかと考え直す。


「ええ」

「あいつが何をしたのか知っててですか?」


 その言葉に、セシリアはどういう意味だろうと怪訝な顔をした。


「私の推薦ではありません。いくら私でも、彼を進んで入れたがるほど性格は悪くありませんよ」


……もう手遅れです。


「彼を推薦したのはほかの生徒会役員や、先生方です」

「だからって!」


 グラエムの語気が次第に強くなる。


「彼は、実力ではあなた以上ですからね」

「それは……」


 悔しいが認めなければならない事実を言われ、俯くグラエム。

 自分は魔術師であると、再認識したのだろう。


 そんな彼が急に顔を上げ、真剣な顔で僕を見てくる。


「フェイ、何かあったら俺に言え!何ともならないと思うが、何とかしてやる!」

「あ、私も!」


 あまり期待ができない言葉だったが、近頃生徒会長たちと接してばかりいたフェイには、自分を気遣う言葉が何よりうれしく、ありがたかった。


「ありがとうございます!」


 心からの感謝の言葉とは、この事を言うのかと思った。


 不意に、ドアが音を立てた。

 一瞬ブラムかと思ったが、控えめな、小さな音だったので考えを変えた。


「失礼します」


 小さい声が聞こえた後、ゆっくりと扉が開かれた。

 中に入ってきたのは紫色のショートカットの髪に、髪と同じ紫色の目が特徴的な、女性と言うより女の子という表現があっている少女だった。


「来ましたか」


 会長が彼女を見て、そう言った。


「すみません、遅くなりました」


 会長に謝罪を述べると僕たちの視線に気づいたのか、自己紹介を始めた。


「私はユニス……ユニス=セスナ。二年生です」


 魔術師枠はグラエムたちで埋まっているので、彼女は精霊術師か……と思いながら、先ほどしたのと同じように僕も自己紹介をした。

 同学年とはいえ関わり合いがなかったのか、グラエムたちも彼女に向かってしていた。

 今のところ彼女はそれほど魔術師を蔑んでいないように思える。


 ふと彼女からの視線を感じ見返すと、やはり彼女は僕を見ていた。


「あの、どうかしましたか?」

「何も……」


 よくわからない人だな……というのが、僕が彼女に抱いた第一印象だった。


 そして、先ほどとは違い大きな音で扉が叩かれ、


「失礼します!」

「……失礼します」


 案の定、ブラムとエリスが入ってきた。

 ブラムが会長に挨拶をしようとして口を開けた時、視界の隅に僕が見えたのか、言おうとしたであろう言葉を飲み込み僕に言ってきた。


「何故お前がここにいる!!」




……頭が痛い。

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