表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦慄の魔術師と五帝獣  作者: 戸津 秋太
一章 戦慄の魔術師の帰還
22/199

十八話

 魔力は赤血球と同じく血液中を循環しており、酸素を運んだりもする。

 そのため、魔力を使いすぎると魔力切れを起こし、貧血や酸欠を起こしたりする。

 魔力量が多い術師はその分赤血球の数が少ないため、魔力切れを起こすと魔力量の少ない術師より症状が重くなる。



 僕の前ではゲイソンが右手首に左手を添え、「魔力よ、我が右腕に集え!」とか言いながら、魔力操作を行っている。

 アイリスは右手だけでなく左手にも魔力を出している。


「あの、フェイ様」

「あ、ごめんごめん。それで、今はどこまで出来るの?」

「その……」


 そう呟き、メリアは右手に魔力を集め始める。

 しばらくして白に近い灰色をした靄のようなものが、メリアの右手の親指と人差し指、中指に集まり始める。

 魔力は純度が高いほど白に近く、逆に低いほど黒に近くなる。


「三本まで出せるようになったんだね!」

「はい!」


 五年前まではメリアは親指でしか魔力を出すことが出来なかった。


 アイリスはメリアより少し純度は低いが、両手に出せるほど魔力操作がうまい。

 ゲイソンは……何、あのどす黒い魔力……。


「ふう、やっと出来たぜ!」

「あんたの魔力純度、低すぎない?」


 近くにいたアイリスがゲイソンにそう言う。


「そうなんだよなー、純度が低いせいで精霊と契約できねえんだよ」

「ふーん」

「ま、俺はこの魔力結構好きだぜ!」

「どうしてよ?」

「黒色って、何か男心をくすぐるだろ?」

「……私は女だからわからないわね」


 二人の話を聞きながらメリアに言う。


「メリアの魔力純度は高いね」

「放出できる量が少ないんですけど……」

「うーん、昔みたいに僕の魔力を流して少しずつ魔力の流れをつかんでみる?」

「え、ここでするんですか?」

「何か問題でもあるの?」

「いえ、その……」


 顔を赤くして俯くメリア。


「まあいいや。それならまた今度にしよう」

「すみません……」



「あー、よく聞けお前ら!」


 全員、先生のほうを見る。

 それを確認して、先生が続ける。


「一週間後にテストを行う」


 生徒たちがざわつく。


「テスト内容はいたって簡単だ。【系統外魔法 エンチャントボディ】を使うことだ」


【系統外魔法 エンチャントボディ】

 身体中に魔力を流し、細胞を活性化させ通常なら不可能な身体能力を身に着ける魔法。

 これは、身体中にまんべんなく魔力を流す必要があるため、高度な魔力操作技術が必要となる。


「不合格のものは、放課後出来るようになるまで俺と一緒に補習だ。安心しろ、回復魔法なら使える」


 それを聞き、冷や汗をかく生徒達。


「よし、今日はここまでだ!各自練習をして合格するように頑張れよ!」


 そう言って【エンチャントボディ】を使って実技室を出ていくアーロン先生。

 僕は視線をゲイソンたちに戻す。


「フェ…………フェイ、俺はどうすれば……」

「フェイ様、私まだ三本の指にしか……」


 二名ほど焦りを顔に募らせていた。


「アイリスは使えるの?」

「使えるわよ」


 平然と言いきるアイリス。


「くっ、お前にできて俺にできないわけが!」


 そう言って、ゲイソンは両足を肩幅に開き、「黒き魔力よ、我が身に宿りたまえ!!」と言っていた。

 しかし、魔力は右手にしか宿らない。


「……あんた、恥ずかしくないの?」

「言うな、それ以上は言ってくれるな……」


 ゲイソンの声が、空しくあたりに響いた。





 学校を出たフェイたちは、喫茶店に入った。

 と言うのも、アイリスが「テストに向けて作戦会議しようよ!」と言い出したからである。


 アイリス達はすでに頼むものを決めている中、フェイだけはメニューを凝視していた。


「イチゴのチョコレートケーキ、ベリーケーキ、ミモザケーキ、アップルクランブルケーキ……あ、フィナンシェもいいな……」

「ふふ、フェイ様は相変わらず甘いものお好きですね」

「あ、待たせてごめんね」

「大丈夫です」

「それにしてもフェイ君がこんなに甘いものが好きだとはね」

「ああ、俺も意外だ」


 フェイは結局抹茶フィナンシェを頼んだ。

 最近はほのかに甘いものが好きなのだ。


 ケーキが来るまで、テストについて話し合う。

 結果、毎日朝練をすることになった。


 フェイのもとに抹茶フィナンシェが届いた。

 抹茶のいい香りがする、フェイはそれを一口。

 口の中で抹茶の濃厚な味とバターの風味が漂い、それでいてしつこくない甘さがあり、程よくふんわり、しっとりとしていた。

 フェイは無言で咀嚼する。

 食べ終えて一息つくと、アイリスたちが僕を見ていた。


「どうしたの?」

「いやー、うまそうに食うなって思ってさ」

「だって、おいしいし……」

「そりゃ、そうだけどよ」





 フェイは一週間に一度この店に通う、そう心に決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ