十二話
「んっ……」
意識が徐々に覚醒してくる。
隣でメリアが寝息を立てながら静かに寝ていた。
一緒のベットで寝ていたことを今更ながら再認識し、フェイは顔が赤くなるのを感じていた。
軽く伸びをしながら今日の予定を考える。
学校が終わったらギルドにでも行こうかなと思いながらベッドから出る。
まだ登校するのには早すぎるので、メリアは寝かしておく。
コーヒーを飲みながら焼きたてのトーストをかじっていると、メリアがその匂いにつられたのか目を開けた。
「おはよう、メリア」
「あ、おはようございますフェイ様」
「簡単なものしかないけど朝ごはん食べる?」
「はい!」
朝食と聞いて目を完全にあけ、体を起こす。
……こういうところも昔と変わらない。
パンをかじっているメリアを横目で見ながら支度する。
メリアも食べ終わったのか、荷物の中から制服をだし始めた。
「あれ?服、直ったんだ」
「いえ、数着持っていましたので……」
さすがに僕がいると恥ずかしいのか着替えようとしない。
僕は言いにくそうにもじもじしているメリアに「外で待ってるよ」と言い、外に出る。
数分後、制服に身を包んだメリアが出てきた。
学校につくと、道端の土が穴だらけになっているのに気付いた。
……だれだ、こんな事したの。
怒られないよね?呼び出しとかくらったりしないよね?
教室に着くとゲイソンとアイリスが声をかけてくる。
「あ、フェイ君おはよー。っと、メリアさんだっけ?二人仲良く登校とは羨ましいなー」
それを聞き、メリアが頬を赤くして俯く。
「からかわないでよ、アイリス」
「それより聞いたぜ!」
ゲイソンが唐突に言ってくる。
「聞いたって、何を?」
「何って、お前昨日ボネット家の長男とやりあって倒したんだろ?」
……どうやら、僕がフェイ=ボネットであったことは広まってないらしい。
誰かが情報統制でもしてるのかな?
まあ、時間の問題だと思うけど。
「なんか、アーロン先生が上機嫌だったぜ!」
「アーロン先生が?どうして?」
「おいおい、魔術師が精霊術師に勝ったんだぜ!史上初の快挙に魔術師である奴はみんな喜んでるぜ!」
通りでクラスの人たちが僕を見てるわけだ……。
突如、教室の扉が開く。
「おお、フェイ来てたか。待ってたぞ!」
「あれ?アーロン先生、どうしたんですか?」
「どうしたも何も、精霊術師に勝ったんだぞ!史上初だぞ!ついに俺の夢が!!!」
「はあ……」
よかった、呼び出しとかの話ではなさそうだ。
「ん?どうした、安心したような顔をして」
「いえ、僕はてっきり昨日のことで呼び出しをくらうのではないかと思っていたので。……地面とか穴だらけになりましたし」
「ああ、そういえば学園長が呼んでたな。忘れてた」
「ええ、そう思っていた時期が僕にもありました。あれだけのことをして呼び出しくらわないわけないですもんね。……先生、僕の安心を返してください」
「わるいわるい」
「絶対思ってないでしょ!それで、いつなんですか?」
「今だ、今!」
「えっ!?」
急いで僕は学園長室に向かった。
学園長室の重厚な扉の前についた。
緊張しながら「コンコン」と、扉をたたく。
中から、「どうぞ」と声が聞こえた。
――その声は、この重厚な扉の奥から聞こえるには余りにも不釣合いな、幼さの残った声だった。