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戦慄の魔術師と五帝獣  作者: 戸津 秋太
一章 戦慄の魔術師の帰還
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十一話

「それで、どうして急に泊まりに来たの?」


 玄関で話すのも嫌なので、とりあえずメリアを部屋にあげる。

 メリアは遠慮がちに部屋の片隅に座った。


「ちょっと、あの屋敷に居づらくなりまして……」

「居づらく?」

「その、ブラム様が……」





――数時間前


「何があったの!?」


 話を聞いて駆けつけてきた生徒会副会長、セシリア=ボネットは、あそこを押さえて気絶している弟……ブラムと、その周りの穴だらけの地面を見てその場にいる生徒たちに聞いた。


「あっ、お姉さま……」

「エリス!何があったの?」

「えと、お兄様とお兄様が喧嘩をして……」

「お兄様とお兄様?」


 何を言っているのかよく分からず、セシリアは怪訝な顔をする。


「うっ……」


 その時、ブラムの意識が戻る。


「ブラム!何があったの?」

「……何でもない!」


 フェイにやられたと言うのはプライドが許さないのか、ブラムは何も言わない。


「何でもないって……まぁいいわ、後でゆっくり聞きます。とりあえず治療しましょう」

「この程度何でもない!」


 そう言ってブラムは立ち上がると、その場を立ち去ろうとする。


「ちょっと、待ちなさい!」


 セシリアたちはブラムの後を追いかける。


「もう!……詳しくは屋敷で聞くわよ!」





 屋敷に着き、セシリアはブラムでは埒が明かないと思ったのか、エリスに事情を聞く。


「えと、フェイお兄様が……」

「余計なことを言うな!」


 ブラムに怒鳴られ、エリスはビクッ!っと肩を震わせそのまま黙る。


「フェイ?フェイがどうしたの?」

「フェイ様が生きていたんです!」


 エリスの代わりに、メリアが答える。


「フェイが生きていただと!?」


 ブラムが怪我をしたことを聞き、部屋に入ってきたボネット家当主、アレックス=ボネットが声を出す。

 一緒にいた、アディ=ボネットも驚いた顔をする。


「ほ、本当にフェイが生きていたの?」


 セシリアが確認するようにエリスに聞く。


「はい、フェイお兄様は生きていました」


 それを聞き、セシリアが泣きかけたその時、ブラムが口を開く。


「あいつが俺たちに気づいた瞬間、急に魔法をうってきたんだ!よけたらエリスにあたると思った俺は、エリスをかばって魔法にあたって、気づいたら気絶していた……」

「そ、そんな事……」


 メリアが反論しようとするが、ブラムは声を重ねる。


「そうだよな!お前も俺が庇わなかったら危なかったもんな!!」


 ブラムの余りの剣幕に、エリスとメリアは俯く。


「そうか、フェイが生きていたか……。あれだけの事をされたんだ、お前たちに襲い掛かってきても不思議ではないな……。ブラム!よく二人を守ったな!!」

「妹達を守るのは、兄として……男として当然です!」





「……」


 あまりの茶番劇に、フェイは思わず黙る。


「あの、フェイ様?」


 心配そうにメリアが声をかけてくる。


「あ、ごめん。……それで、僕のところに来たのか」

「はい、ブラム様のところにいたくありませんでしたので……」

「いいよいいよ。それより、どうやって僕の家の場所を調べたんだい?」

「セシリア様に調べてもらいました」

「そうか、生徒会副会長だったっけ……。それで、ブラムは何をしてるの?」

「とりあえず安静にしておられました。ただ、精霊が顕現出来なくなっていたみたいで……」

「ああ、それはしばらくして魔力が回復すれば顕現できるようになるよ」

「そうでしたか……。あの、フェイ様はやってないと言えなくてすみませんでした!」

「ん?……ああ、大丈夫だよ。どうせブラムの事だから、何とかして押し通そうとしただろうしね……」

「本当にすみませんでした!」


ほっとした顔で謝ってくる。




「くきゅうぅぅ」


 気の抜けた音が部屋に響く。


「……メリア、お腹すいたの?」

「はう……その、えと……」


 顔を真っ赤にして俯く。


「パン、食べる?僕もお腹すいたし」

「ありがとうございます……」


 パンを受け取ったメリアは、ハムスターみたいに頬張る。

 そんなメリアを見て、とても懐かしく思う。



 メリアは風呂に入ってきたらしいので、僕は汗を流すためシャワーを浴びに行く。

 ……風呂に入ってきたなら、ご飯も食べてきたらよかったのに……。



 シャワーから上がると、メリアが荷物の中から学校の教科書を出して、読んでいた。


「メリアは真面目だね」

「あ、フェイ様」

「また、昔みたいに魔法の練習とかする?」

「はい!」


 目を輝かせながら言ってくる。


「変わらないな、メリアは……」

「えっ?」

「ああ、いや、それより僕はそこらへんで寝るからメリアは僕のベッドでよければ使いなよ」

「いえ!泊めていただいてるのにそんな事は!」

「……昔、女の子を床で寝かしたらダメって言われたことがあってね……」

「……?」


 誰に言われたか言うまでもないと思うが、もちろんラナさんだ。


「あの、それでしたら一緒に寝ますか?」

「いやいやいや、それはさすがにまずいって!」


 確かに僕のベッドは一人用にしては少しでかいけど……。


「その、私なら大丈夫です!」


 何が大丈夫なんだ、何が!

 心では突っ込みつつ、顔には出さない。

 これはラナさんとの生活の中で身に着けたスキル……『ポーカーフェイス』!


「女の子と寝るのはさすがにまずいって!」

「大丈夫です!私はフェイ様を信じてますから!」


 信じられても困る。

 僕も男だしね……うん。





 ……結局一緒に寝ることになった。


 よく考えれば、この状況ラナさんで慣れているような……。

 そうだ、思い出せ!ラナさんとの生活を!



 風呂に入っていたら突然入ってきたり、着替えを覗いてきたり、朝起きたらなぜか僕のベッドでラナさんが寝たりしていた、あの日々を!





……ラナさん、ろくなことしてないな……。


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