女の子は柔らかい!
初めて、女の子に告られた。
これで、俺ももうカノジョ持ち確定。
後は、俺が「Yes」と言うだけだ。
だが、その答え方はどうしたものか。
即答か?
じらしか?
即答は軽い感じに思われそうだ。
だが、じらして、まさかとは思うが気が変わってしまえば、元も子もない。
玲奈にだって、もっと早くに俺から告っていれば、何とかなったかも知れない。
そう思った瞬間、俺はこのチャンスに飛びつくことにした。
「あ、あ、ありがとう。そんな事言ってくれて、うれしいよ。
俺も藤田の事、かわいいとずっと思っていたんだ」
「本当に?」
「ああ。もちろんだよ」
「うれしい」
藤田が俺のところに飛び込んできた。
藤田の勢いに押されて、石橋のベッドの上に倒れ込む俺。
これって、逆押し倒し?
藤田の髪のあまい香り。
藤田の顔は俺の胸のあたり。
俺の胸のさらに下の辺りで、触れている事を感じる藤田二つのふくらみは。
欲情しそうになるが、ここは石橋の部屋。
生唾を飲み込み、理性をフルパワーで働かせながら、藤田を俺の両手で包み込む。
初めて女の子を抱きしめた。
やっぱ、女の子は柔らかい。幸せとしかいいようがない。
思いっきり、藤田の髪の香りを吸い込み、目を閉じた時、ドアの開く音がした。
慌てて藤田が俺から離れる。
俺も慌てて起き上がる。
だが、遅かった。
「お邪魔だったかな。もうちょっと、ゆっくりした方がよかったかな?」
「な、な、何を言ってるん。そんな事ない」
全力で否定する俺の声はどこかきょどっている。
「まあ、今日はそのために、お前を呼んだんだから、いいんだけどな」
やっぱ、そう言う事だったのか。
そう思っている俺から石橋は視線を藤田に向けた。
「うまくいったみたいで、よかったじゃん」
「うん。ありがとう」
微笑み合う二人。しかし、この二人の関係も気になるじゃないか。
「ところで、石橋、お前は藤田とどう言う関係?」
「おっ。のんちゃん。早速やきもちやいてるみたいだぞ」
「ば、ば、馬鹿な事言うな」
そう言ってみたものの、それに近い感情なのは確かだ。
疑り? そんなところだ。
俺も恋する男になったと言う事か?
なんて思って、自分に酔っている場合じゃない。
「のんちゃん?」
なんだ、その呼び方は?
「ああ。学校では藤田って、呼んでっけど、俺たち従兄妹同士なんだ」
「そうなの?」
初めて知った。俺が藤田に目を向けると、頷いた。
「だから、秋本くんも、私の事、藤田じゃなくて、下の名前で呼んでくれたら、うれしいな」
なにが「だから」なのか、よく分からないが、それはぜひともさせていただきたい事だ。
俺が下の名前で呼ぶ女の子と言えば、幼馴染の玲奈くらいだ。
藤田の事を下の名前で呼ぶなんて、カレシ、カノジョらしいじゃないか。
「俺も石橋に合わせて、のんちゃんでいい?」
少し照れ気味の俺に、藤田改め、のんちゃんは頷いてみせた。
少し頬が赤い気がするのは、のんちゃんも照れているのかも知れない。
ついに、俺にも春が来た!
そう思うと、うれしくて仕方なかった。