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なんで、藤田希未がいるんだ?

 俺の街は東西に走る電車に貫かれている。

 街のほぼ中央の駅から徒歩で通える位置に、俺たちの学校はある。


 俺の家はその駅よりも東側に向かって電車に乗る。石橋の家は逆に西側も西側。この街のほぼ西の端の駅を降りたところにある住宅地だ。


 何度か行った事があるので、一人でも行ける。

 とは言え、俺を自分の家に誘ったんだから、普通は一緒に下校するもんだろ?

 いや、今まではそうだった。

 だが、今日はなぜだか掃除当番の俺を残して、一人帰って行った。「俺んちで待ってるから」と言う言葉を残して。


 なんじゃそりゃあ。と言いたかったが、速弾きの練習につられて、おれは不満も言わず、石橋の家の近くまで、一人で来ている。


 石橋の家が目に入ってきた。

 カーポートに車は止まっておらず、その横にある門扉は閉じられていた。


 門扉の横にあるインターホンを押す。

 正面の二階の窓が開いて、石橋が顔を出した。


「鍵開いてるから、入って来いよ」

「おお」


 門扉を開いて、玄関を目指す。ドアのノブを手に取り、ドアを開く。

 ドアの横に設けられたすりガラスから、外光が導かれているとは言え、照明が消された家の中は薄暗い。


 人気を感じられない一階。石橋の家族は不在っぽい。

 靴を脱ぎながら、玄関の隅にちょこんと揃えられた女の子の靴らしきものが目に留まった。


 石橋には弟しかいないはず。しかも、この靴はうちの学校のか?

 女の子を連れ込んでいる?


 そんな疑問を抱きながら、二階にある石橋の部屋を目指す。

 薄暗い階段に、どんどんと言う少し重ための足音が響いた。

 二階に上がったところのすぐ右のドアが石橋の部屋だ。

 ドアの取っ手を握り、ドアを開けた。


「ちーすっ」


 そう言って、石橋の部屋の中に目を向けた瞬間、俺の目が点になった。

 石橋の部屋のカーペットの上に、紺のブレザーに白のブラウス、赤いチェックのリボンの制服姿の女の子が座っていた。

 でかいとまではいかないが、制服の上からでも分かる大きめの胸にまず視線が向かう。

 背中まで伸びたストレートの髪は、濃いめのブラウン。


 その子が俺に振り向いて、にこりとした。

 同じクラスの女子。藤田希未だ。

 大きな瞳と柔らかそうなほっぺには、にこやかな笑みが浮かんでいる。


 一度、石橋の部屋に踏み入れた足を再び、引き戻して廊下に出た。

 ドアも閉めようかと、戸惑うシチュエーション。


「お邪魔しましたぁ」


 なんで、藤田希未がいるんだ?

 俺を呼んでおいて、これはどう言う事だと思いながらも、この場で言う言葉はこれがお約束だ。

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