記憶にない手紙の中身は?
俺が玲奈に手渡した、タイムカプセルの中にあった玲奈の手紙。
玲奈は、それは俺が玲奈に宛てた手紙だと言った。
俺には記憶が無い。玲奈に手紙を渡した事は。
正確に言えば、渡そうと書いた手紙はあったが、それは玲奈に渡していない。
あの手紙が何なのか、そしてタイムカプセルの中に入っていたもう一通の俺宛の手紙。
そこに書かれていた内容を玲奈は知っていながら、気持ちが変わって、俺に告ろうとしていないのか?
そこが知りたい。
玲奈の中に、俺への想いが全くない。
そう分かれば、きっと膨れ上がったのんちゃんへの想いが、一気に俺の心の中を満たし、玲奈への想いを消滅させるはず。そんな気がしてならない。
俺は決意した。玲奈にきっぱりと振ってもらう。
「なあ、あの手紙の事なんだけど」
小声で玲奈にたずねてみた。
「何よ?」
冷たい、睨み付けるような目だ。
どうも、手紙の事になると、態度が冷たくなる気がする。
もしかして、冷たい態度をとる事で、気が変わってしまった事を俺に示そうとしているのか?
「あ、あのさ。何が書いてあったのかなあ?」
「まーくんの私宛の手紙の事?」
そう言った玲奈の瞳は俺を睨み付けているかのようだ。
「そう」
「もう今じゃあ、意味ないし。言っても仕方ないよ」
何なんだ?
今じゃあ意味ないとは。俺がもらった物と誤解しているのか?
もう私の気持ちは変わったの。だから、あの手紙は意味無いの。
俺宛の方だったら、そう言う意味にもとれる。
が、玲奈の手に渡ったのは、記憶にない俺の玲奈宛ての手紙。
すっきりしない。
「意味無くてもいいから、教えてくんない」
俺が玲奈に顔を近づけ、小声で言った時、教室の中に怒声が響いた。
「こらあ、そこ。
さっきから、何をこそこそと話している。
今は授業中だぞ」
先生の目線を追って、教室のみんなの視線が俺れたちに集まった。
振り返って俺たちを見ている中里はにんまり顔。
のんちゃんは怒った顔。もちろん、先生も怒った顔。
他のみんなはと言うと、真面目な奴らは授業の邪魔すんなよなと言う顔。
そうでない奴らは、なんだなんだ? 的な興味津々顔。
「すみませんでした」
とりあえず、謝っておく。
「授業中、いちゃいちゃするなよ」
先生はそう言うと、自分の右手に持つ教科書に目を戻した。
教室の中に、一瞬俺たちを冷かす声が巻き起こった。
「秋本ぉ、それは浮気なんじゃね?」
「なんで、秋本ばっかもてるんだぁ? 少しは俺にも分けてくれよぅ」
まずいじゃねぇか。
横を見ると玲奈は頬を赤らめて、俯き加減で、じっと固まってしまっている。
玲奈と噂になる事は俺としては悪い気はしないが、玲奈にとったら、迷惑な話であって、これがきっかけで、逆に俺が嫌われてしまうかもしれないじゃないか。
「んな訳、ねぇだろ。今は授業中だろ。静かにしろよ」
ちょっと怒鳴り気味に言った。
「秋本。それをお前が言うとはなぁ」
先生の言葉はちょっとからかい気味だ。
「すみません」
もう一度、謝って、正面に目を向けた俺の視界に、怒った顔で俺を見つめているのんちゃんの姿があった。
まずい。
授業が終わると、これは叱られそうだ。なんら、やましいことはしていないというのに。
これがカノジョ持ちの宿命か。




