行きつくところまで
授業が終わり、校舎を出た。
俺の横を歩くのは当然、のんちゃん。
「でねぇ。未悠ったら、さあ」
うれしそうな笑顔で、俺に話しかけている。
「へぇ。そうなんだ」
相槌を打ちながら、笑顔でのんちゃんに目を合わせる。
幸せそうなカップル。
そんな感じだ。そう思うと、何だか得意げな気分。
近づく校門。
もしかして、昨日と同じように小嶋さんが待ってなんかしていたら。そんな思いが頭をよぎり、ちょっと緊張感に包まれながら、校門を抜けた。
小嶋さんは昨日と同じ姿勢で、校門の壁にもたれかけていた。
ちらりと目が合った。
小嶋さんは少し残念そうな表情を浮かべただけで、俺のところに来ようとはしなかった。
横にのんちゃんがいたからだろう。
だけど、予想外な行動をのんちゃんがとった。
俺から離れて、つかつかと小嶋さんに向かって行った。
「昨日、まーくんと帰ったんですか?」
「えっ? えーと」
突然、のんちゃんに突っかかられて小嶋さんは戸惑い気味だ。
どう答えていいのか分からず、ちらりと俺に視線を向けた。
俺が首を横に振れば否定するだろう。縦に振れば肯定するだろう。
今、否定する理由はない。すでに露見してしまっているのだから。
俺が首を縦に振るのを見てから、小嶋さんがのんちゃんに答えた。
「そうなの。一緒に帰ったの」
「どうしてよ」
のんちゃんは相手が年上の先輩だと言うのに、きつい口調だ。
「友達だから?」
疑問形で、首を傾げてにこりとして小嶋さんが答えた。
「友達だったら、腕組むの?」
そこまでばれてるの? そんな感じで、一瞬どきっとした表情が小嶋さんに浮かんだ。
「えっ? 何の事かな?」
小嶋さんは首を傾げて、とぼけてみせた。
「ばれてるんだからね。
私のまーくんに近寄らないでよ」
のんちゃんの横顔はぷんぷん顔だ。のんちゃんはちょっと、こう言った話になると攻撃的になる気がする。やっぱ独占欲?
俺はのんちゃんだけのもの。それが付き合うって事なんだ。
恋する者の不自由さ。
恋人のいない自由より、この不自由さの方がいいに決まっている。
そう頭の中で思って、一人力強く頷いてみる。
今日はこれで2度目か?
さっきまでのぷんぷん顔は何だったのかと思うような笑顔で、のんちゃんが俺のところにやって来た。
「行こう」
そう言って、俺の左腕に絡みつくように腕を組んできた。
左腕の後ろ部分に感じる柔らかさは、あの日俺が直接手で触れたのんちゃんの胸だ。
少し左に顔を向けると、のんちゃんの顔がすぐそこにあって、甘いのんちゃんの香りが俺の鼻をくすぐる。
逆に、こののんちゃんは俺だけのもの。
むふふふ。と、いやらしい感情がむくむくと沸き起こって来る。
さっきまで、ちょっと不自由さに苛立ち気味な感情を覚えたりもしたが、そんな思いはこれで吹き飛んだようなものだ。
小嶋さんの事が気になりはするが、ここで振り返ったりすると、またまた面倒な事になる。
俺は今、のんちゃんだけの俺であり続けることにした。
一人の女の子に縛られる状況に、ちょっとした戸惑いもあったが、げんきんなものだ。
今はのんちゃんが俺のものだと言う思いに胸が満たされると、会話も弾みまくる。
「で、俺、思う訳よ。それは」
絶好調で喋りまくる俺。
くすくすと楽しげな笑いを交えながら、俺を楽しげに見つめるのんちゃん。
楽しいひと時。
昨日の小嶋さんとのひと時以上な気がする。
それは俺の心の奥がきっとピンク色に染まっているから。
いつだったか、のんちゃんにキスをしたくても、できなかったのんちゃんの家の近くまで二人はやって来た。
あの日、キスを戸惑った場所を通り過ぎて、のんちゃんの家にもっと近づいていく。
なんだか、懐かしいじゃないか。
ちょっと初心だった俺。
今、俺はのんちゃんともっと先に進んだ。そして、行きつくところまで行きたいじゃないか。
それも夢じゃない。すぐそこの現実だ。
のんちゃんの家の前に立った。
まだ、のんちゃんの家に上がった事はない。
「ねぇ、寄ってく?」
のんちゃんが微笑みながら言った。
「家の人は?」
「今日はいないよ」
その言葉に、俺は生唾を飲み込んだ。
それって、この前の続きをしていいって事なんじゃね?
妄想と欲望が大きく沸き起こってくるじゃないか。
しかし、即上がるなんて答えたら、飢えているみたいじゃないか。ここは一つ、悩んだふりの一つくらいは必要だ。
「うーん。どうしよっかなぁ? のんちゃんとは一緒にいたいけどさ、誰もいない女の子の家に上がっちゃあ、まずくね?」
「そんな事、気にする方がおかしいよ」
「じゃあぁ、上がろっかなぁ」
「うん!」
のんちゃんがにこりとして、俺の手を掴んで、自分の家に引っ張って行った。




