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トラブル続きな俺

 知り合いの立ち話。

 そんな風に思って、眺めていたが、どうも違う気がしてきた。女生徒の方は何かおろおろと困っている感じだ。

 何なんだろう? そう思っていると、女生徒と目があった。


 女生徒が俺のところに走り寄ってきた。

 俺は石橋と一緒に帰宅してから、着替えていなかった。同じ高校の生徒。

 そう思って、駆け寄ってきたのかも知れない。だが、何の用だ?


「助けて」


 マジかよ? これは事件なのか? 玲奈のストーカーみたいな奴の事件を思い出してしまう。

 ここのところ、俺はトラブルに縁があるらしい。

 だが、玲奈の時と違って、これは自ら飛び込んだトラブルじゃない。

 巻き込まれたトラブル。そんな気分だ。


 女生徒は俺の背後に回り、俺の両肩に両手を置いた。

 おでこか何かが俺の首の後ろ辺りに触れていそうだ。

 顔を隠して、怯えている。そんなイメージが浮かぶ。


 相手の男は逃げ去る事もせず、女生徒を追って、俺の前までやって来た。

 痴話げんかなら、関わりたくない気分だったが、男の顔を見て気付いた。

 玲奈を狙っていた男だ。

 としたら、これは痴話げんかなんてものじゃなさそうだ。


 こいつはつけ狙う相手は誰でもいいのか?

 だとしたら、ストーカーと言うより、変質者に近いかも知れない。


「また、お前か」


 こいつも俺の事を覚えていたらしい。

 勝てそうにないが、女の子に頼られて逃げる訳にも行かない。足止めしている間に、逃がすしかない。


「大丈夫」


 少しだけ横を向いて、そう言った。

 その女生徒を安心させるためだけじゃない。自分自身への言い聞かせのつもりでもあった。

 ストーカーみたいな奴改め、変質者が一歩踏み出してきた。


 拳の力を込め、身構えた時、変質者の顔が固まって、立ち止まった。

 そして、次の一瞬、身をひるがえして、小走りで立ち去って行った。


 何だ? 俺が振り返ると、玲奈が立っていた。

 やっぱ、あの日、あの後、あの変質者は懲りずに玲奈に付きまとい、逆襲されたに違いない。

 玲奈の強さを知っているだけに、逃げ出した。そんなところだろう。


「何これ?」


 またまた、そう言った玲奈の顔つきが厳しい。誤解だ。

 俺の背後に引っ付いていた女生徒が、俺から離れた。

 玲奈の声で、状況が変わった事に気付いたのかも知れない。


「助けてくださって、ありがとうございます」


 女生徒はそう言って、俺に頭を下げた。

 これも、誤解だ。俺は結局、何もしていない。


「何があったの? また、あいつ?」


 玲奈の誤解は解けたらしい。俺は頷いてみせた。

 あの変質者が玲奈を諦めて、この子にターゲットを変えたんだとしたら、今はしのいだとしても、まだまだ危なすぎる。


「あいつは君のストーカーかなんか?」

「いいえ。今日初めて見た人です。強引に、私をどこかに連れて行こうとして」

「送っていこうか?」

「ありがとうございます。でも、家はすぐそこなんで、大丈夫です」


 そう言って、女生徒は何度も振り返っては、頭を下げながら、立ち去って行った。


「どうして、あの男、逃げるように立ち去って行ったのかなぁ?」


 答えは推測できているが、とりあえず玲奈に聞いてみた。


「そんな事、本人じゃないんだから、分かる訳ないじゃない」


 きつい口調。だが、冷たくは無さげ。いつもの玲奈の口調なだけだ。


 結局、石橋のための俺たちの作成は不発だったが、失敗ではなかったらしい。中里からはいきなり付き合うなんて、考えられない。まずは友達からねと、石橋は言われたらしい。

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