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玲奈へのお願い

 玲奈と俺は幼馴染。

 小学校の頃までは特に仲がよかった。

 その証拠の一つが俺の自宅の机の引き出しの中にしまってある玲奈が書いて、タイムカプセルに入れたラブレターだ。


 あの頃は、確かに俺の事を好きだった。俺も玲奈の事は好きだった。

 両想いになるチャンスだった。


 そんな二人だったが、中学になってからは同じクラスになる事もなく、疎遠になってしまった。なので、俺は玲奈の携帯の番号もメアドも、何も知らない。


 不便だ。

 個人的に玲奈に連絡を取りたいと思っても、その手段が無い。

 そんな俺ができる事。

 それは玲奈にメモを渡す事くらいだ。


「二人だけで話したい事がある。大事な話なんだ。二時間目の授業が終わったら、旧校舎の図書室側の階段に来てほしい」


 幸い、玲奈は隣の席だ。俺はそう書いたメモを玲奈に渡した。


 旧校舎。

 今の校舎と校庭の間に建つ二階建ての小さな校舎。そこの二階にあるのは音楽教室と図書室だが、それぞれ使う階段が別々になっている。

 授業と授業の合間のほんの短い休憩時間に図書室に行く者はいない。


 玲奈は俺が渡したメモも開いて、中をまじまじと見ている。


「分かったわ」


 視線を向けている俺に、玲奈はそう小さく呟いた。

 俺は視線を正面に向けた。

 英語の先生がなんだか長々とした英文を黒板に書いていた。



 二時間目の授業が終わった休憩時間。

 その時間は10分。


 旧校舎の階段と自分の教室の往復だけで5分ほどは見込まなければならない。

 俺は授業終了とほぼ同時に、どうしたの? と言う表情で俺を見つめるのんちゃんに、にこりとわずかな微笑みだけを残し、慌てるようにして、教室を出た。


 図書室につながる階段の一階と二階の踊り場に来た。

 玲奈が俺より1分遅れて到着すると仮定すると、玲奈に話す時間は4分ほどしかない。

 時間が無さすぎじゃね? と、今になって、この計画の詰めの甘さを後悔した。


 俺が到着してから、ほぼ一分ほどと思われる頃、玲奈が姿を現した。

 踊り場にいる俺を見つけて、階段を駆け上がって来る。


「何? こんなところに呼び出して?」


 ちょっと警戒気味? 少し辺りをきょろきょろして、他に誰かいないか? 何か隠してやいないか? 的な感じで、様子をうかがっている。


「時間がないので、いきなり本題。

 中里に付き合っている奴はいるのか?」

「何で未生なのよ」


 顔つきは厳しく、口調もきつい。


「誤解するな。実はだな。石橋が中里の事が好きらしいんだ」

「へぇ。そうなんだ」


 玲奈の顔が緩んだ。


「好きな男の子がいるかどうかは聞いたことないけど、今は付き合っている子はいないはずだよ」

「じゃあさ。協力してやってくれないか?」

「うーん。どうしよっかなぁ?」


 じらしだ。じらしだ。ちょっと、意地悪っぽい表情がそれを物語っている。


「お願い!」


 一応、手を合わせて、拝んでみる。


「分かったわ」

「ありがとう。じゃあさ、近いうちに、二人で俺んちに来てくんない?」

「まーくんちに?」


 その言葉に、俺が頷いて返した。


「分かったわ」

「ありがとう」


 思わず、玲奈の手を握りしめて、ぶんぶんと振って感謝の気持ちを表してしまった。


「な、な、何、勝手に人の手をつかんで振り回してるのよ」


 玲奈の頬が少し赤い気がする。怒らしてしまったのか?


「ご、ご、ごめん。ついつい。なっ」


 そう言って、にこりとしてみる。


「私、もう戻るから」


 玲奈はぷいと横向きながら、そう言って階段を駆け下りて行った。

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