7 「鳳凰(ほうおう)」
日本のお話。あるところに輿入り前の娘がいました。娘は若者と恋に落ち、互いに歌まで交わすようになりました。
けふ(今日)とても 汝が名を呼びし 空に息(娘)
あの雲なりしか 君の横顔(若者)
娘には頑固な父親がいました。父親は娘が可愛くて仕方がありませんから、若者に無理難題をふっかけます。
「鳳凰の羽を取って来い。そうすれば娘と祝言を挙げさせてやろう」
鳳凰は伝説の鳥です。火に包まれた体をしており、高らかに鳥の歌を歌うといいます。
美しい火山である富士山の火口に住んでいるというので、若者は旅支度をして出発しました。
山を登っていると、確かに歌声が聞こえてきます。
「鳳凰よ、鳳凰よ、汝が羽の一枚を頂きたい」
若者は鳳凰を呼び止めました。
真っ赤な体をした鳳凰はうなずいたかのように見えました。
ぱっと鳳凰が飛び立つと、羽根が残されていました。
若者は意気揚々と山を下り、娘の父親に羽根をそっと差し出しました。
「間違いないな」
さらに問題を吹っかけようとする様子の父親を、娘がいさめました。
「父上様。わたしはこの方に嫁ぎたいのです」
娘は若者と共に屋敷を出て行きました。後に父親が亡くなる前に鳳凰の羽根を二人に渡したため、今でもその一族は羽根を持っているそうです。
竹取物語の婚姻譚はアレンジがしやすかったです。若者と姫君、そして姫君の父親との確執は物語の格好の題材かもしれません。