1 「ホラ王」
ドイツのヴェルトリンゲンという村には、こんな話が伝わっています。
月の無い暗い夜、しかもゴウゴウと風が吹き荒れる暗い夜には、骸骨にぼろ布をまとった幽霊たちの集いがあります。
幽霊たちは黒馬に引かれた馬車に乗り、その真ん中にはホラ王という幽霊たちの王様が座っています。
王様は幽霊たちと共に森や草原を駆け、出会った人間は死か褒美かを受けることになるそうです。
善良な農夫ハンスは病気の母を見舞った帰り、嵐の夜にホラ王に出くわしました。
ホラ王は一目でハンスが何故こんなところに一人で歩いていたのかを見抜き、ハンスを黒馬の馬車に乗せて母の家まで戻らせると薬草を与えました。
ハンスがホラ王を恐れながら母に薬草を飲ませるとすっかり元気になりました。
ホラ王は薬草の種も与えたので、ハンスの家の庭には薬草の小さな白い花が今でも咲いているそうです。
世界のお話をすこしアレンジしたものを書いていこうと思います。第一話はドイツから。手元にある資料が日本とドイツ、イギリスのテールものが多いので、そのへんの話が多くなるかもしれませんが・・・。世界で一番好きな物語は何かを問われたら、「ハチドリのクリキンディ」を答えると思います。ヴェルトリンゲンという村名はフィクションです。