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     5

 李と慈海は、驚きのあまり大きく目を見開き、佐々木の顔を見詰めていた。


 大角と小角も驚いた表情で、互いの顔を見合わせている。


「やはりな……。殺り合った時、奴らの動きや銃の扱い方が素人じゃねえと思っていたんだ」


 獣吾は、佐々木の推測に賛同した。


「じゃがその根拠は何じゃ?」


 李が、細い目を見開いたまま尋ねた。


「奴らの持っていた装備です」


「装備?」


「はい。奴らが持っていた銃は、SIG・SAUER・P220と言う銃で、陸上自衛隊でも正式採用されている銃なのです」


「だが奴らなら銃など幾らでも手に入るだろうし、それが自衛隊で正式採用されている銃だからとて、奴らが自衛隊の隊員だと言う確証にはなるまい」


 佐々木達の会話に、慈海が横から口を挟んだ。


「無論その可能性も否定出来ませんが、奴らの内の一人を、以前市ヶ谷で見た記憶があるのです」


「な……」


「……」


「なに…」


「何と……」


「……」


 李達五人は絶句した。


「見間違いではないのか?」


 李が尋ねた。


「いえ、私の旧くからの知り合いで、現在陸自で組織された極秘部隊の隊長をしている男がいるのですが、以前私が『C・V・U』の新隊員スカウトの為彼に相談していた時、彼と共に居た男がその男に似ているのです」


「ふむ……」


 溜息と共に慈海は腕を組んだ。


「極秘部隊だと?」


 獣吾が怪訝な表情で佐々木に見た。


 自衛隊の極秘部隊と聞いて、獣人族の村を襲撃した強化人間の部隊の事を思い出したのだ。


「極秘部隊とは言っても、以前君達獣人族の村を襲撃した強化人間の部隊とは違い、隊員は全員普通の人間だ。主立った任務は、この国の有事や敵対する組織からのテロ行為が行われた際、報復や対抗処置としての破壊工作や首謀者の暗殺と言った、極秘で非合法な作戦を秘密裏に実行する部隊だ。表向きには全員死亡した事になっていて、通称“ゾンビ部隊”等と呼ばれている。まあ実際のゾンビとは全くの別物だがな……」


 佐々木は、獣吾の視線の意味を察して補足説明をした。


「もしそれが本当なら、自衛隊ってトコは本当に目茶苦茶で何でもアリな所だな。まあそれだけこの国の政治自体がデタラメって事なんだろうが」


 獣吾が辟易する様に言った。


「だがな、実はこの部隊は、以前アメリカと合同で進めていた強化人間の部隊が未完成のまま中断する羽目になった為、それに代わる部隊として陸自独自で極秘に組織された部隊なのだ。最も現実には、裏で強化人間の部隊も秘密裏に組織されいたのだがな……」


「じゃあさっき俺がブッ殺した奴は、その極秘部隊の一員だったと言う事か?」


「まだ確証は無いがな……」


 そう答えながら、佐々木は旧くからの知人が、ヴァンパイアと関わっているのでは無いかとの疑念に刈られ、落ち着いてはいられなかった。


「じゃがその者が、もしその極秘部隊の隊員だとしたら、現在自衛隊の中に吸血鬼共の息の掛かった者がおると言う事になるぞ」


 李が呻く様に言った。


「それだけでは無い……。残る二人もその部隊の隊員であれば、その極秘部隊そのものが吸血鬼共の手先と言う事にもなりかねん……」


 慈海も、深刻な表情を浮かべている。


「じゃあ、オメエの知り合いとか言う奴もまさか……」


 獣吾は、佐々木が抱いている疑念を思わず口にした。


「信じたくは無い事ですが、もしも先程の者達がその部隊の現隊員であれば、組織ぐるみでヴァンパイアの『使い魔』と化している可能性もあります。そうなれば、私の知人も恐らくは……」


 佐々木は、悲痛な表情を浮かべた。


「ふうむ……。これは確かに深刻な事態だが、それと我が門徒の中に奴らの内通者がおる可能性と、どのような関係があると言うのだ? まさか自衛隊の中に内通者がおるからと言って、この御山にも内通者がおると言う事にはなるまい」


 慈海が話を引き戻した。


「いえ、私が言いたいのはそう言う事ではありません。最も、こうなるとあらゆる組織の中に奴らの『使い魔』が居る可能性も出て来ますが、今私が言いたいのは、ただの偵察ならば彼ら程の者を寄越さなくとも、普通の『使い魔』を寄越せば済むと言う事です。確かに鑑定はまだですが、もしも彼らがその極秘部隊の一員であれば、先程も申し上げた通り彼らの得意分野は破壊工作や暗殺です。ならば今夜の事も、御山への攻撃か、その為の下準備。もしくは……」


「要人の暗殺か!」


 李が大声を上げた。


「そうです。その何れにせよ、これは奴らの明確な攻撃の意思の現れであり、ならば奴らは、既に真の三種の神器がこの高野山に保管されているのを知っていると言う事です。更に来たのがヴァンパイアだけではなく、彼らの様な特殊なスキルを持った“人間”が来たと言う事は、奴らが今張られている結界の事を知っていたと言う事になります……」


 佐々木は、“人間”の部分を殊更強調して言った。


「……座主様に命じられ、結界をこの御山全体に張り巡らせたのは昨夜からの事……。それに真の三種の神器の事を聞かされたのも昨日……。流石に昨日の今日と言う事であれば、内通者の存在が無ければ説明が尽きません!」


 それまで黙っていた大角が思わず叫んだ。


「阿闍梨様、大角や佐々木殿が言われる通り、やはり御山には内通者が……」


 小角も、大角や佐々木の意見に賛同し身を乗り出す様に言った。


「ふうむ……、確かにな……」


 慈海は呟く様に言った。


 実際、慈海は納得しているのだ。


 ただ信じたくないだけである。


 論理と気持ちが乖離して、小角への返答を鈍らせただけなのだ。


 慈海は、しばし目を閉じ逡巡した。


「これは、やはり内通者の仕業と見るべきであろうな。しかも信じ難い事に、内通者は昨日我らと共に座主様の話を聞いた阿闍梨の位にある者達か、結界を張る為に選ばれた法力僧達の中におるようだ」


 慈海は、自分の気持ちに決着を付けた。


「慈海、お主……」


 李は、慈海の瞳を見詰め低く漏らした。


「大角、小角! 最早一刻の猶予も無い。奴らが仕掛けて来る前に、一刻も早く内通者を見付け出して捕らえるのだ。恐らく内通者は、昨日呼ばれた者達の中におる。阿闍梨の位にある全ての者と、結界を張る為に選ばれた法力僧を全て洗うのだ。しかも奴らがその極秘部隊を送り込んで来るのであれば、今張っている結界など何の役に立たぬ。儂は至急この事を座主様に報告し、御山の防御体制の強化と座主様の身の安全、それに真の八咫鏡を護る為の方策を協議する。分かったな!」


 慈海は、先程までの態度とは一変して、大角や小角に戟を飛ばした。


「ははっ!」


「直ちに!」


 大角と小角は慈海に頭を下げると、おもむろに立ち上がった。


「では老師、それに佐々木殿、獣吾殿。我らはこれにて失礼致します」


 二人は再度李達に頭を下げると、勢い良く部屋を飛び出して行った。


「阿闍梨様、この様な事態となった限りは、我が『C・V・U』の実働部隊を、至急御山へ派遣するよう久保に進言しましょう」


「確かに……。結界がある限り吸血鬼相手なら何とかなるでしょうが、もしも佐々木殿の推察通りであれば、我々の力だけでは戦力不足は否めません。敵が銃や火器を使用してくるのであれば、やはり銃火器や爆弾等にも詳しい『C・V・U』の部隊の方が頼りになりましょう。申し訳ありませぬがよろしくお願いします」


 慈海は、神妙な面持ちで頭を下げた。


「分かりました。では久保には電話で報告するとして、私は此処に残り部隊の指揮を執ります」


 佐々木が勇んで応える。


「老師、申し訳ありませんがそう言う事ですので、東京へはお二人でお戻り下さい」


 佐々木がそう言うと、獣吾は身を乗り出した。


「馬鹿言ってんじゃねえぜ。そんな奴ら俺一人で十分だ! 俺も残るぜ」


 獣吾が鼻息を荒げて言った。


「ダメだ。私の推察通り攻めて来るのがその部隊だったとしても、ヴァンパイアが共に攻めて来る可能性は捨てきれん!」


 佐々木はきっぱりと拒んだ。


「だったら尚更!……」


 獣吾が食い下がる。


「いやそうじゃない。君の能力は認めるが、その部隊と共にヴァンパイアが攻めて来た場合、やはり結界は奴らに対して有効な武器となる。その場合、強力な結界が張られていては、君は戦うどころでは無くなってしまうだろう。それに我々も戦闘のプロだ。戦力的に考えても敵部隊に後れを取る事など決して無い。それに対ヴァンパイアの戦闘においては、御山の法力僧の戦闘力は我々『C・V・U』の部隊をも凌ぐ程だ。だから大丈夫だ」


 佐々木は胸を張って言った。


「チッ、分かったよ」


 獣吾は渋々承諾した。


「それに真の三種の神器は八咫鏡だけでは無い。儂らは一度東京へ戻り、残りの三種の神器の一つである天叢雲剣を探す事が急務じゃ!」


 李は、獣吾を諭す様に言った。


「分かった。なら急いで東京に帰るとしよう」


 獣吾は、思い立った様に立ち上がった。


 その時、四人は部屋の外に人の気配を感じた。


「誰だ?」


 部屋に近付いて来た者が声を掛けるより早く、慈海はその者に声を掛けた。


 襖の向こう側で、その者が“びくん”と驚く気配があった。


「失礼します。お話中申し訳ありません。只今李老師に東京から電話が入っております」


 一言断りを入れ、若い僧が襖を開け李に声を掛けた。


「東京から? して電話掛けて来た相手は誰じゃ?」


 李が若い僧に問い掛ける。


「はい、森下様と言う男性からです」


 若い僧が答えた。


「何じゃと?」


 李は、怪訝そうに白い眉を上げる。


「分かった。で、どうすれば良いのじゃ?」

「回線をお繋ぎしますので、お部屋の電話でお取り下さい」


 若い僧がスラスラと答えた。


「分かった」


 李はそう答えると、部屋に設置されている電話の受話器を取った。


「もしもし……」


 李が電話に出る。


『もしもし、森下です。老師の携帯に電話したのですが、お出にならなかったのでそちらに直接電話しました』


 電話の相手は、陽子の父親=森下勇三だった。


「勇三殿か、何かあったのか?」


 李は、嫌な予感に捕われた。


『それが、今仕方黒田君と言う恭也君の友人が老師に会いにやって来て、私が代わりに応対した所、どうやら恭也君が奴らの下へ連れ去られたと言うのです!』


「何じゃとう!」


 李は、思わず大声で叫んだ。


 慈海や佐々木、それに獣吾の視線が一斉に李へと向けられた。


 受話器を持った李の手がブルブルと震えている。


 いや手だけではない。


 李の全身が、ガクガクと震えていた。


『……ろうし、老師!』


 受話器の向こう側で勇三が叫んでいる。


「お、おお……、済まぬ……」


 李は、慌てて返事を返した。


『それで、恭也君の事はどうしますか?』


 勇三も興奮で声が大きくなっている。


 勇三は、李に今後の指示を仰いだ。


「どうするかと言われても……、儂はまだ高野山じゃし……」


 李は、返答に困り声を詰まらせた。


「連れ去られたと言っておったが、どう言う状況だったのじゃ?」


『いえ、実際は連れ去られたと言うより、奴らに同行を求められた恭也君が、自らの意思で付いて行ったようです……』


「あの阿呆が……」


 李はぼそりと呟いた。


『私が行きましょうか?』


 勇三が言った。


「いや、それには及ばぬ。幾ら勇三殿でも、奴らの下へ赴けば絶対に生きては帰れぬ。それに、奴らもすぐ殺したりはすまい。殺すつもりなら、わざわざあの阿呆に同行を求める様な間怠っこしマネなどせず、直ぐにその場で殺しておろう」


『しかし……』


「何故奴らがあの阿呆に会いたがったのかは分からぬが、あの阿呆ももう子供ではない。自らの意思で奴らの下へ赴いたのであれば、自分の身は自分で護るじゃろう」


 そうは言いながらも、李の胸中は、直ぐにでもヴァンパイアの下へ赴き、恭也を救出したい気持ちで一杯だった。


『……』


 李の心情を察したのか、勇三は掛ける言葉を失っていた。


「とにかく儂も急ぎ東京へ戻る。勇三殿は、家で恭也が帰るのを待っておってくれい」


『……分かりました。では気を付けてお戻り下さい』


 勇三は、懸命に言葉を絞り出した。


「勇三殿にまで心配を掛けて済まぬ。じゃが良く知らせてくれた。では頼んだぞ」


 李は、そう言って電話を切った。


「老師、まさか恭也君が!」


 佐々木が声を掛けた。


 獣吾や慈海も心配そうな目で李を見詰めている。


「あの阿呆が、どうやら自分からノコノコと奴らに着いて行ったらしい……」


「そんな、馬鹿な……」


 佐々木は言葉を失った。


「お主、恭也と言うのはあの恭介の息子の事か?」


 慈海が尋ねた。


「そうよ。あの阿呆、いったい何を考えておるのやら……」


「では私が奴らに連絡して、直ちに恭也君を解放するよう奴らに言いましょう」


 佐々木が進言した。


「いや、そんな事をしても無駄じゃし、お主から連絡すれば、恭也と『内調』の関係が奴らにバレてしまう事になる。そうなれば、この大事な時に恭也が人質として利用される恐れも出て来る……」


「確かに……」


 佐々木は唸った。


「それに、恭也を呼んだのは恐らく闇御前じゃ。どうやってバレたのかは分からぬが、恭也が恭介の息子だと知ってただ顔を見てみたくなったと言う事かも知れん。ならば恭也が殺される心配は殆ど無い。じゃが……」


 そこまで言って、李は声を詰まらせた。


「心配は、アイツがどう出るか……。だろ?」


 獣吾が含む様に言った。


「あの阿呆、友達の仇だとか言って短気を起こさねば良いが……」


「だがアイツは俺やヴァンパイアを超えた化け物だ。しかも今夜はまだ満月から一日経っただけで、アイツの能力は今最高潮の筈だ。今のアイツを殺れる奴なんてまず居やしないだろうぜ」


 獣吾は、李を元気付けようと、努めて明るく言った。


「そうじゃな。あの阿呆は殺されても死ぬようなタマではないしのう」


 李も努めて明るく振る舞った。


「ですが、森下さんに恭也君の事を告げたその友人は、何故ヴァンパイアの事を知っていたのでしょうか?」


 佐々木は首を傾げた。


「奴らの方から自分達の事を吸血鬼と名乗る筈も無い。恐らくあの阿呆が教えたのじゃろう」


「では、これ以上機密が漏れるのを防ぐ為、『内調』に報告してその友人を確保しなければなりません」


 佐々木が“ガン”として言った。


「それは待ってくれんか? 黒田と言う男の名に聞き覚えがある。確か以前恭也が事件を起こし、儂が警察へあ奴の身柄を引き取りに行った時に一度会うた事がある筈じゃ」


「しかしこれは、『内調』の憲章第十六条の三項に抵触する事態です」


 佐々木は食い下がった。


「お主らの取り決めは知らぬが、ここは儂に任せてはくれぬか?」


 李は、神妙な面持ちで頼んだ。


「……」


 佐々木は、しばらく黙って逡巡した後に、ゆっくりと瞳を開いた。


「分かりました。この件は全て老師にお任せします」


 佐々木は静かに語った。


「済まぬのう。では儂らは今から急ぎ東京へ戻る。良いな!」


 そう言って李は、獣吾の顔を見遣った。


「ああ、全力で飛ばすぜ」


 獣吾は、心得たとばかりに胸を張った。

「では老師、獣吾君も、気を付けてお帰り下さい」


 佐々木は、その場に立ち李達に声を掛けた。


「何から何まで済まぬのう」


 李は、申し訳なさそうに佐々木の目を見詰めた。


「いえ。ですがくれぐれも早まった行動はお控え下さい。何かあれば、すぐ久保にご連絡下さい。『内調』や『C・V・U』が力になります」


「うむ。その気持ち、有り難く受けておくよ。それよりも御山の事、くれぐれも頼んだぞ」


「心得ております。阿闍梨様や座主様、それに真の八咫鏡は命に代えても必ずお護り致します」


 佐々木は、覚悟を決めた眼差しで答えた。


「じゃが命だけは大切にな」


 李は、佐々木の身を気遣った。


「有難う御座います。老師もお気を付けて……。恭也君の事を頼みます」


 佐々木は手を伸ばした。


 李と佐々木は、堅い握手を交わした。


 李との挨拶を終え、佐々木は獣吾にも手を差し出した。


「獣吾君、老師や恭也君の事頼んだぞ」


 獣吾が、差し出された手を力強く握り返す。


「ああ、分かってるよ。オッサンも命だけは大事にしろよ。何たってオッサンはただの人間なんだからよ」


「ああ、そうするよ。だが君も不死身と言う訳では無いのだから、命だけは粗末にするんじゃないぞ」


 そう言って二人は挨拶を交わすと、互いにニヤリと笑った。


「慈海、御山の事頼んだぞ……」


 李は、慈海に向き直って言った。


「任せておけい。儂もまだまだ現役よ。儂の実力を知らぬ訳ではあるまい。座主様と真の八咫鏡は、儂がしっかりとお護りするわい」


 慈海はそう言って胸を叩いた。


「お主との決着がまだ着いておらぬ。それが着くまでは、決してくたばるでないぞ」


「応よ! お主に勝って、お主の奢りで溺れ死ぬまで酒を飲んでやらねばならぬからな。それまでは死なんよ。それに儂は、悟りを開く為にはまだまだやり残した事や欲が多過ぎてな、それらを全て叶えてからでないと悟りを開く事が出来ぬ。だから今は死ぬにも死に切れぬのよ」


 慈海が笑って言った。


「ふん、お主の様な生臭は、永遠に悟りなど開く事は出来ぬわ」


 李がいつもの悪態を付く。


「へっ、お主こそただの助平爺の癖に良く言うわい。その老い先短い命を、無駄な事で擦り減らすでないぞ」


 慈海も、笑って言い返した。


「ふん!」


「へん!」


 二人は互いに鼻を鳴らした。


 互いの目が笑っている。


 だが、その笑顔の奥には、覚悟を決めた者の厳しさと、それを知りながら敢えて顔には出さぬ者の悲哀が微かに浮かんでいた。

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません。

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