姉妹と剣
「つ、疲れた……」
隣で千草が大きな溜息を吐く。後ろを歩く佐藤と鈴木も溜息は吐かなかったが、同じように疲れが見えていた。
あれから無事に誕生日プレゼントを舞に渡し、なんとか誕生日会を終えることが出来た。舞はプレゼントを喜んでくれたし、誕生日会はなかなかに盛り上がった様子だった。が、周りの人間、特に千草はかなり疲れているのがわかった。
「こう言っちゃあなんだが、舞ちゃんと対等に接することができるのは高村くらいだよな」
佐藤は苦笑にも近い笑いを含んで言った。
「そう、なのかな?」
実際のところ、俺が舞のテンションについていけているのかと言えばそうではない。わけがわからないこともある。それでも彼らのように疲れをあまり感じないのは、幼馴染だからだろうか。昔から彼女を知っているからそれに慣れてしまったのか。
「まぁでも、無事に終わってよかったわよ」
千草は安堵とも取れる声で言うと、鈴木も同じようにホッと一つ息を漏らした。
「だよね。千草さんから高村が来ないかも、って聞いた時はどうしたものかと思ったけど、それがある意味でサプライズになってたからね」
鈴木曰く、最初は普通の誕生日会だったらしい。ケーキを食べて、いつも通りに話をしてと。それでも舞の相手は疲れたようだが。
そして、俺が戻ってきてからは普通を超えた更なる普通になったわけで、舞にとってはよいサプライズになったようである。その結果が、今の彼らということだ。
予定とは異なるが、成功したことに変わりはない。そもそも、舞の誕生日の事は忘れていて、彼らのおかげで思い出すことが出来たのだ。そして、その誕生日を祝うことができた。
「うん、そうだな。みんな、ありがとう」
振り返って立ち止まり、皆に向かって軽く一礼する。
それを見た皆は互いに顔を見合わせた。
「こんなことで感謝されてもな」
と鈴木。
「普通のことだし」
と佐藤。
「まぁ、高村君らしいけど」
と千草。
そんなに変なこと言ったのだろうか。ただ、ありがとうと言っただけである。
「別に変じゃないわよ。いつもの高村君だと思う」
千草はそう言うので納得したが、どうにも腑に落ちない。
「まぁいっか」
「そうそう、気にしてもしょうがないわよ」
そうして、再び歩みを進める。
何はともあれ、今は無事に誕生日会を終えた安心感に浸ろう。これからまた、何が起こるかわからない。そう思うと、今のこの時間がとても優しく感じられた。そしてそれを感じている自身の心は、心苦しくもあった。
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深緑の間から僅かに光が差し込み、少女たちの顔を照らす。少年が飛び立つと、それはゆらゆらと静かに揺れていた。
「彼は妙に勘が働くというか、頭の回転が早いというか」
フレッドは差し込む光を避けるように、木の側へと移動した。彼女のその言葉は、ルースへ直接テレパシーとして送り込んだものだったが、かなり声をすぼめていた。
『そうですね、感づかれるのも時間の問題でしょう』
返すルースの言葉もかなり小さく、アレスにはその声は届いていなかった。しかし、テレパシーは魔法の一種。こんなに間近で使われれば、アレスならばすぐに気付いてしまう。そのため、二人はそれ以上の言葉は発しなかった。
代わりにフレッドは、自らの口で一つの疑問をルースに投げかけた。
「ルース、君のことについて聞きたいことがあるんだが」
そう言うと、フレッドは先日高村月海から聞いた剣の話を二人に聞かせた。
そして、フレッドが全て話し終え寸刻。ルースは考えをめぐらせているのか、はたまた単に言葉が出ないだけなのか、暫く沈黙が流れた。
そして発した言葉。
『ゲレータの仕組みについては二人ともご存知ですね?』
何故そんなことを聞くのか。二人は疑問に思いつつ、フレッドがそれに答えた。
「ゲレータは人間の体内の魔力を吸収、変換し、それを様々な「魔法」として発することの出来る機械」
『ええ、そうです。そして、人語を発することの出来る機械です』
付け足すようにルースは言った。
ガラシアに存在する魔力変換機は全て人語を話すことができる。しかし、人語を話しコミュニケーションのようなものはとれても、実際は機械に意思はない。幾通りの言葉に対し、幾通りの返答の中から相応しいものを発する。それは人工知能とさして変わらないものだが、機械である以上人間を越える感情表現は不可能だ。そこが、人間味がないと言われる理由の一つである。
『不思議に思いませんでしたか? なぜ機械であるゲレータに人語を話す機能が備わっているのか』
「言われてみればそうだな。翻訳機能も君たちが訳してくれるのではなく、ゲレータ自身の機能として働き、直接僕たちに意味が伝わってくる」
ガイドとしての機能もあるが、それは実際には不必要なものだ。ゲレータとしての機能は自身の魔法を効率よく使用するところにある。つまり自身の魔法を使うのにガイドが必要なのか、ということである。
「まぁ、最近では特殊な魔法を使うためにインストールし、説明が必要なものもあるが」
しかし、ゲレータができた頃にそのような技術は存在しなかった。それが果たして言語が必要な代物であったのか。フレッドの頭の中に浮かんだ疑問である。
『では、もう一つ。ゲレータの歴史ですが、もちろんこちらもご存知ですよね?』
続けて聞くルースにフレッドは答えた。
「ゲレータは朱暦二八一〇年、今からちょうど千百年前に初めて造られた。その初号機は「ルース・ド・ソル」と「ルーナ・ド・ブイオ」。つまり君たちだ。その後、二つのゲレータの量産型としていくつものゲレータを製造し、改良を重ねて今に至る」
フレッドが語ったことは、ガラシアの歴史では当然の如く知られることである。それが今彼女の話したことと関係があるのか。フレッドは問い直した。
『その歴史、実は少し間違っているのです』
この言葉を聞いた二人は、「驚く」というより「どういうことなのか」という思いが勝っていた。常識として知れ渡っている歴史が実は違っている。言葉通りに受け止めるならばそうなのだろう。いや、事実そうなのだろう。ただ、急にそんなことを言われても、どう返してよいのか二人は戸惑っていたのだ。
『二つのゲレータが初めて造られたのは、いえ、発見されたのは朱暦二八〇〇年。つまり、今から千百十年前のことです』
「発見……された……?」
造られたのではなく発見された。ゲレータとは人類が発明した機械では無いというのか。信じられないことだが、当の本人が言うのだから事実なのだろう。フレッドは頭の中から一つの歴史が崩れていくような感じがした。
『その二つのゲレータの名前は「アメノムラクモ」と「エクスカリバー」。ご存知の通り、我々の真名と呼ばれるものです』
ようやく出てきた二つの言葉。そして地球に存在する二振りの剣。
ルースはその後も淡々と続けた。
『この時点では、まだこれだけが剣の名前だと認識していました』
「それは当時の人達が名付けたのか?」
『いいえ、名付けられたのはそれよりももっと前。時代はわかりませんが、発見される以前より名前は付けられていました』
発見された場所は、今はもう存在しないとある民家の中だという。何故そんな場所にあったのかは不明とされた。そして、その二つを発見した人々は、研究、解析し、それが魔力を吸収し変換させる機能を持った機械であるとわかった。
当時の人々にとって、それは世紀の大発見であった。それとともに、何故こんな物がただの民家にあったのか、という疑問を残すことになる。
しかし、そんな疑問も忘れ去るように、人々はただそれを研究し続けた。そして、今ガラシア中に普及している数多くのゲレータのプロトタイプとして、二振りの剣の複製として一つのゲレータが造られたのだ。それは複製としては質の劣るものだったが、それでも人々にとっては十二分に価値のある物であった。そして、それは瞬く間に世に広まることになる。
『これが、ゲレータが世に広まる原因となった出来事です。もちろん最初の部分を知っているのはごく一部。現在ではヴァレンティーナただ一人にしか、話をしたことはありません』
「――――――ルース、一つ聞きたいんだが、もしかして君は……」
フレッドが問おうとした瞬間、それを遮るようにルースが言葉を発した。
『ゲレータが開発された当初、ゲレータに人語を話す機能は備わっていなかった。それは当然です。オリジナルである二つの剣に、人語を話す機能なんて無かったのですから』
「それはつまり……」
あまり想像したくないことだったが、彼女はそうせざるを得なかった。今の話を聞いてわかること。それは――――――
『私は、いえ、私たち姉妹は、その当時を生きた二人の姉妹。その二人は二つの剣に自らの人格を投影した。それが、物言うゲレータの始まりです』
「しかし、どうして……」
どうしてそんなことをしたのか。フレッドは言葉を詰まらせながら言った。それに対し、ルースは嘲笑するように言った。
『単純な理由ですよ。いつの世も人々は争いを続けてきた。その争いがいつしか無くなることを願い、私たちはこの身をコレへと移した。例えどれ程の時間が掛かろうとも必ずそれはやってくる、必ずそれは叶うと信じて。結局、それを見ることは未だ叶わず、現状が最も平和に近いものだと知ったのは、コレの中に入ってから数百年後のことでしたけどね』
「……」
二人は言葉が出なかった。遥か千年以上の時を過ごしてきた少女たち。今こうして話をしている人物は、それだけの時を生き続け、そして未だ叶わぬ夢を追い続けている。
しかし、ルースはそんな二人を気にも留めず話を続けた。
『二つの剣があったのは民家だと言いましたよね。その民家は私たちの祖父母の家だったのです。ですが、その時にはすでに二人とも亡くなっていました。その剣を発見したというのはつまり、遺品としてそれを取りに行ったということです』
そして、その二振りの剣が未知なる能力を持つと気付いた少女たちは、紆余曲折を経てそれを研究機関へと託すことになった。もちろん、解析後は少女たちの下へ返ってきたという。
『私たちが人格を投影したのはもう少し後の話です。まぁ、その辺りの話しは、あまり人に聞かせるようなものではないので省きますが。ゲレータが物言う機械になったのは、人格を投影した後、他のゲレータとの違いを無くすために行ったものです。実に単純な話でしょう』
再び彼女は嘲笑するようにした。だがそれは、もちろん笑えるような出来事ではない。
しかし、フレッドの頭の中にはもう一つ疑問が浮かんだ。
経緯はともかく、人格を投影できるだけの技術をどうして彼女たちが持っていたのか。ルースの話を聞く限り、彼女たちはごく普通の一般の人間だった。地位も権力もごく普通の一般家庭に、そんな技術もそれを取り合ってくれる機関もないはずだ。
だが、それは少し考えればわかることだった。
歴史の中で、ソルとルーナという国が生まれたのは、ちょうどこの時期である。この国々がすでにある他の大国と並び、更に追い抜けたのはゲレータの開発にあるとされてきた。魔力の変換機能による魔法の効率化。兵器としては申し分ないもので、それは兵力の差を覆すのに十分足りえる代物であったはずだ。
そう、それは間違っていない。ゲレータの開発も、それによる戦力の逆転も史実で起きた出来事。違うのはもっと最初の部分だ。
「ソルとルーナを建国したのは君たちだね」
『――――――ええ、そうです』
フレッドはもう驚きはしなかった。しかし、アレスにとってはこちらの方が驚きだったようである。何しろ、彼女が今手にしているのは初代ソル国女王であり、尚且つ彼女の先祖なのだから。
『もっとも、それは国と呼べるようなものではありませんでしたけど。そうですね、当時は義勇軍などと呼ばれていましたよ。そして、各地で起こる争いを力ずくでねじ伏せていきました。建国をしたのはその暫くした後です』
義勇軍。名称はどうあれ、争いを鎮める彼女たちは、悪を憎む正義の味方に見えたのだろう。そこには自然と人々が集まり、それはいつしか集団から国へと変わっていった。そして国の主となった彼女たちには地位も権力もあった。
「なるほど、順番が逆だったわけだ。国があったからゲレータができたのではなく、ゲレータがあったから国ができた」
それが歴史の真実。このことを歴史学者たちが聞いたらどう思うだろうか。などとフレッドは考えたが、今はどうでもいいことだった。
「しかし、まだ広くゲレータが使われる前だからといって、よく二つのゲレータだけで国と戦えたものだ」
『当時の自身とゲレータは、比べ物にならないほど性能に差がありましたからね。自分自身、使っていて恐れを抱きましたよ。コレさえあれば世界を征服しうるのではないかと』
当時の魔法技術は今と比べれば当然劣る。今の禁呪にあたる魔法を使いこなしていたのなら、それは桁違いなんてものではなかっただろう。
「まぁそれはともかくだ。肝心の真名の方についてだが……」
それについてフレッドはすでに答えを得ていた。すでにここまで聞いたのだ。当然見えてくる。
その二つの真名が地球上の二振りの剣と関係を持っていたとしても、それは彼女たちですらわからないということだ。彼女たちが生まれた時にはすでに剣は存在しており、一つの名を持っていた。
「もう一つの名、真名もすでに存在していたのか?」
『ええ、それを知ったのは私が剣をゲレータとして使った時でした。つまり、二つの真名はすでに存在しており、私でもその由来やこの地球との関連性はわからないということです』
「そうか……」
結局、振り出しに戻ってしまった。ルースに聞けば何かはわかるだろうと考えていたフレッドにとって、それは大きな誤算だった。これで本当に、二振りの剣と彼女たちの関連性を調べる手立てが無くなってしまったのだ。
『仕方の無いことですよ。それに、気になることではありますが、今考えるべきことでもありません』
「それはわかっているんだが……」
これは、気になるという以前の問題ではないのか。フレッドはそう思っていた。ゲレータという、今ではあって当然の機械。しかし、それは人が自ら発明したものではなく、偶然に発見されたもの。名前がどうであるよりも、何故そんな機械が当時のガラシアに存在していたのか。そちらの方が重要ではないだろうか。
オーパーツ。発見された場所や時代に全くそぐわないと考えられる代物。彼女たちを指すに相応しい言葉である。
『考えるな、という方が難しいですか? たしかにそうですが、今は控えるべきですね』
突如、ルースの声色がこわばった。その理由はすぐに二人にも理解できた。
二人は同時に振り返る。
「――――――」
そこには居た。
影の中に。
いつから。
誰にも気付かれず。
そこに佇む。
それは何も見ていない。
「君は誰だ」
「――――――」
だが、答えない。
静かに見つめる。
唯一つの何かを。
「探し物」
ようやく吐いた言葉。
その口から漏れる言葉には、まるで意志がないようで。
言葉ではなく音のようで。
それなのに、はっきりと意味が伝わってくる。
「探し物?」
フレッドが聞き返すと、それは静かに近付いてきた。影から光へ歩みを進め、徐々にそれを光が照らす。
「これ……」
それは手を出すと、掌の上に漆黒の石が乗せられていた。
「ドディックジュエリ――――――どうしてこれを?」
フレッドは問うが、一貫してそれは口を噤むままだった。
あどけない少女。それなのに大人びた静かな立ち振る舞い。否、それは人間味すら帯びていない。静かに、ただひたすらに静かで、何物をも見通し、何も見ていない。見つめるは唯一つ。
「太陽の子」
そしてもう一言。
「太陽の……子?」
フレッドは一瞬、何を指すのか理解できなかったが、すぐにそれが隣にいる少女のことだとわかった。アレスもそれが自身を指していると理解したようである。
「また、どこかで、会うかもしれない。その時は、よろしく……」
無感情な声。ルースのそれに近いものだ。
「え、あ、よ、よろしく……ね」
アレスは戸惑いながら少女に返した。
その言葉を聞くと同時に、いや、その前に少女は背を向けた。恐らくアレスの返事は待っていなかったのだろう。
そして、その少女は何も言わず、何も音を立てず、深い森の中へ消えていった。
「……」
絶句。呆気に取られた、というべきか。今のほんの数十秒の出来事は、まるで違う世界での出来事だったと感じていた。
しかし、それでも冷静でいられるのは職業柄か。フレッドは今起きた出来事、少女の言動について考えていた。
「――――――僕たちの事を知っている? いや、それだけじゃなく、ドディックジュエリのことも」
『知っているというよりも、見透かしているといった感じでしたね』
もう一人の冷静なモノの言葉。
『彼女のあの瞳は、私たちではなく遠いどこかを見ていました。今ここにいる私たちには興味がなく、その一点以外は無関心であるような』
ルースの言葉通りの事をフレッドも感じていた。
何も見ておらず、ただ一点のみを見つめる。それなのに、全てを見透かしているようなそんな瞳。
「情報が漏れた……というわけではないようだね」
そもそも、どうのようにして情報が漏れようというのか。地球に降り立ったのはここにいる三人だけ。そして地球人でそれを知っているのは二人。その二人が第三者に何かを喋る可能性は――――――
「あるかもしれない……」
一般人の「口が硬い」などたかが知れている。がしかし、彼らの知っているところを話したところで、目の前で事を見ていない限り、地球の人間が信じるとは思えない。
『まぁ、そんな可能性はありえないでしょう。それよりも「何故知っているのか」もうそうですが、「どうやって」の方も気になります』
「そうだな……」
どのような経緯でドディックジュエリを手に入れたのか。地球に来てからドディックジュエリの反応を追い続けている彼女たちだが、見つけた全てのドディックジュエリは暴走をしていた、あるいは始まる寸前だった。そして、その全ては彼女達か、もしくはファルスコールが手に入れている。その中に、今フレッドが手にしているものは存在しない。そう、それは彼女達では反応を探ることができないものだ。
少女はいったいどうやってこれを手に入れたのか。
地道に探し当てたか? それとも偶然?
いや、そんなはずはない。これは偶然で見つけられるようなものではない。あれだけ探し回っても、見つけることができたのは暴走したものだけだ。
「……」
フレッドの疑問は深まるばかりで、一向にそれが解けそうな気配はない。
『しかし、これだけは言えます』
頭を悩ませるフレッドにルースが言った。
『あの少女は、私たちを邪魔しようとしているわけではない、と』
それはフレッドも同じ意見だった。そんなことは見てわかるようなことだが、かなり重要なことである。
そしてそれは、こう言える事にもなる。
『ルーナに対しても同じように言えるでしょう』
つまり、あの少女が何らかの手段でドディックジュエリを手に入れた場合、今フレッドたちにしたようにファルスコールにもする可能性があるということだ。
そんなことが起きないようにあの少女を監視するか?
――――――いや、果たしてそんなことができるのか?
あの少女は深い森の中、誰にも気付かれずに近付いてきた。しかも、然もここに人がいるのがわかっていたかのように。ここにいた全員、高村月海も含めて、この町の誰にも気付かれぬように来たはずだった。それなのにあの少女はここへ来た。こんな誰も近寄らない森の中に。
それも偶然であるのか? そんなことで片付けてしまっていいのか?
「はぁあ、頭が痛くなってきた……」
フレッドは深く溜息をついた。
この地球に来てから予想外のことが起き過ぎている。そしてまた一つ、彼女の頭を悩ませる物が増える。
あの少女はいったい何者なのか。頭の中が疑問だらけになっていきそうな、そんな恐れを彼女は抱かずにはいられなかった。