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生の旅人
産声を上げた無限
世界には虚空だけが、虚空には全てが
愛を受けし身は自ら選択し勝利を喜ぶ
全てを求め、全てを失った
運命に抗い失うは自由
目の前には死が待っていた
生の旅人
絶望した。目の前に広がる光景に。
広がるはいつもと変わらぬ景色。
静かだ。あまりにも静かだ。
まるで、世界そのものが生命の活動を停止しているようだった。しかし、それは事実であった。
この世の終わり。それが正しい表現だろう。
人はどこにもいない。木や草は枯れてしまっている。空気は在るだけで意味を成していない。全てが生命としての役割を終えている。太陽の輝きも、それを映す月も、今はもう無い。
「どうして・・・・」
少年がこぼした言葉。絶望と虚無感と入り混じる。
全てが消える。それは決定された事だった。
世界の、宇宙の、概念そのものが消え去る。無が残ることさえない。
「・・・・どうして」
少年から漏れた言葉が、虚しく世界を流れた。