狼月の帆
電光に光るススキの穂は馬の立て髮のように揺れる
寒気団の雲は泡霞山の峰を覆いその上に浮ぶは小望月
カチャリ
鍵穴の隙間に挟まれ動けなかった時間
カチャリ
その音にネジまかれる
わたしは鍵穴の内側なのか外側にいるのか
わからなかった
外側なのか内側なのか
ふたつの中心に挟まれて
自らの狭さに挟まれて
互いが見えない小さなふたつの世界の中心
カチャリ
あたたかな布団の中で鍵穴の冷たさに身をよこたえる
心を溶かし鍵穴の凸凹の型を記憶し流れる時間を
刻むように
解ける前に打てずに
ただ手遅れとなるばかり
だからゆっくりと時間をかけて
水を飲み流れに身を任せている
太陽が月を食べ
月が太陽を食べ
繰り返される日食と月食の軌道の運命なら
そのまま鍵穴を型取った身のまま満月の内側までゆきたい
力なくただ寂しいギターの音色を聴くと涙が零れた
悪い癖を反転させたい
なにもかもに躊躇し
違う受け取り方をしてしまい
いつも手遅れとなる
遅く遅く 後から
よく噛み締めてゆくことしか出来ない
それでもまたひとつ循環の流れを造ってゆくなら
あのさみしい音色にまた耳を澄まして
型を身に記憶するように
全て解かすような陽光を身に纏わせて
寒風にも浮ぶ満月へと帆を拡げて
【短歌三首】
震える声ウルフムーンの遠吠えが伝わるほど近づく星に
カマキリが掛けた鍵、微かに明ける音して陽光流れ込む部屋
梢から沢山の陽を浴びて今夜は満月見上げて笑おう




