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ロマンチスト・ソウル  作者: タイラ
二章 「千秋楽山・修行編/邪仙片鱗」
13/21

13話 「一歩」


 遠くから聞こえる「ドゴォォォン!!」という凄まじい炸裂音で、悠真は目を覚ます。


 …………ん……? あれ……空が青い…………

 というか外で寝てた……?


「お……起きたか。全く……軽く小突いた程度で失神しおって……」


 お地蔵さんが倒れている俺の顔を覗き込んでくる。

 地面に手をつき、ゆっくりと身体を起こす。


「いっ……」


 後頭部がズキズキと痛み、反射的にさする。

 頭には包帯がぐるぐると巻かれているようで、布のザラザラとした感触がする。


「桜はもう先に修行始めとるぞ、今の爆音もそれじゃな」


「えっ……」


 心の奥が、じわりと焼け付く。

 桜は俺よりも圧倒的に〈強い〉。

 それは分かっていたことだ。

 それでも、これから戦う時、また桜に守られるだけなんてのはごめんだ。


「さて、悠真よ……お主は基礎からなっとらんからな。格闘技とか全然やったことないじゃろ?」


「あ……はい……学校の授業くらいしか……」


 空手でも柔道でも、なんかやっとけばよかったなど、少し後悔してしまう。


「それじゃまずは筋トレからじゃな。一日腕立て500回と腹筋500回とスクワット500回とランニング……」


「えぇ……」


 とんでもない事言い出したなお地蔵さん……マジで……?


「それからわしと毎日スパーリングじゃな、何度でもボコボコに叩きのめしてやるわい」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ……さすがにそれは……」


 言い訳を遮るように、お地蔵さんはため息をついた。

 お地蔵さんの雰囲気が重たくなり、圧迫感を纏う。


「素人のまま戦う気か……? 本当に死ぬぞ」


「っ……」


 そうだった……この修行の結果に、俺達の命かかってるんだった……


 お地蔵さんの雰囲気が打って変わって明るくなり、励ますような調子の良い声色で話し出す。


「努力は裏切る、裏切らない以前に人間不信じゃ。努力が振り向いてくれるまでこっちから信じてやれ、わしも付き合う」


「……それ、言いたかっただけでしょ」


「バレたか」


 お地蔵さんは生物じゃないのに、どこか生き生きとしているように感じた。


「分かりました……頑張ります」


「それでいいんじゃ。それじゃ早速腕立てから行くぞ!! 1セット50回!! わしが上に乗るから加重もバッチリじゃ!!」


 お地蔵さんは瞬時に跳躍し、俺の背中に飛びかかってくる。


「ちょっえっ、乗るの!? ちょ待っ……!!」


 お地蔵さんは石の塊、上になんて乗られたらたまったもんじゃな……

 必死の抵抗も虚しく、お地蔵さんが背中におぶさる。


「おっ……もっ……てぇ……」


 冗談抜きでマジで重い、多分100キロ近くある。


「ほら、腕立てせんかい!」


「くっ……そっ……がぁぁぁっ!!!」



 悠真の絶叫が、白昼の山にこだました。


─────────────────────



 時は悠真が目覚める前まで戻る。



───


(桜ちゃんには、まずはこの木を真っ二つに斬れるようになってもらう)


───


「そうは言われたけど……」


 桜の目の前には、しめ縄が巻かれた、太く大きな木が堂々と立っている。


(これを……斬る……)


 桜はゆっくりと屈み、鞘に手をかけ構える。


「……ふぅぅぅぅ……………」


 集中による小さくも猛々しい呼吸音が、響く。


 直後、凄まじい踏み込みにより、地面が割れる。


「しっ!!」


 短く息を吐き、刀を振り抜く。


 そして、刀を静かに鞘に収める。

 チン……と刀の柄と鞘がかち合う音がした瞬間、ギシギシと音を立てて大木がズレていくのが分かる。


 そして、轟音と、鳥たちの悲鳴とともに、大木は倒れた。

 ほんの一瞬、刃に付いた感触を思い出す。


「ふぅ……終わり。新しい修行内容教えてもらおう……」



 桜は真っ二つになった大木に背を向け、琉琉助の元へと歩き出す。



 木の断面が、ぐにゃりと歪む。

「何処に行くつもりですか?」


「えっ……?」


 誰もいないはずの背後から低い声が聞こえてきて、桜は咄嗟に振り向き、木の方を見る。



「私の森を荒らしておいてどういう了見なんですかね?」


 なんと、斬ったはずの大木から、人が〈生えてきて〉いた。


 見た目は30代ほどに見え、薄緑色の髪の毛をしている。

 さらに大量の緑色の数珠を全身に身に纏い、まるでつたが巻き付いている様に見えた。


(いや……え……? え……? えぇ……!?)


 混乱する桜を、その男は鋭く睨みつける。


「私は森の大妖精『キュピー・キュピー』 私は、貴方のような森を荒らすクソガキが大っ嫌いなんですよ……!」


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