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ロマンチスト・ソウル  作者: タイラ
二章 「千秋楽山・修行編/邪仙片鱗」
10/11

10話 「故夢」



 俺は『神様』が好きじゃない。


 「神様」のせいにすれば、何でもかんでも「奇跡」とか、「運命」とかで片付いてしまうから。


 人間たちに『能力』を与えたのが神様なのかなんて、知ったことじゃない。

 人間たちが、奇跡が起きたから神様のせいにしてるだけだ。


 神様の目的は、人類の発展かもしれないし、あるいは、魔が差しただけなのかもしれない。


 どちらにせよ、確かに神様にだけ出来る特権だ。

 今の俺たちの世界は、神様にとって、面白いのだろうか。


 格差と不平等と、悪意に塗れた世界は。


─────────────────────


 場面が切り替わる。


 見渡す限りの草原。

 色とりどりの花。

 透き通るほど綺麗な川が流れている。


 遠くに、大きな木が見えた。


 真っ赤な実を付けたりんごの木。


 その木の下で、白い羽が生えた人間……が、二人、草原に寝転がり話している。


 その二人には、純粋な笑顔が浮かんでいた。


─────────────────────


 また場面が切り替わる。


 先程までの美しい草原はそのままだが、りんごの木の周りに柵が出来ている。


 先程の者とは違う、白い羽が生えた人間が、その木に生えるりんごを食べる。


 その様子を、先程の二人が羨ましそうに柵の外から眺めているが、りんごを食べている彼は、分けてあげる素振りを見せない。


 彼は、一人でりんごをおいしそうに食べていた。


─────────────────────


 また場面が切り替わる。


 先程までの美しい草原は消え、黒い焼け野原になっている。


 先程までりんごの木があったところには、一つの切り株が残っている。


 それを見た瞬間、何故か凄まじい怒りが湧き上がる。


 二人の姿は、もう見えなかった。


─────────────────────


 また場面が切り替わる。


 見慣れた、整備されたアスファルトの地面。


 人々の喜怒哀楽、様々な声。


 そして、狭そうに生えている街路樹。


 見慣れていたもののはずなのに、なぜかとても寂しい気持ちになった。


─────────────────────


「…………………………」


 見慣れない場所で目を覚ます。

 外から少し眩しい朝日が差し込んでくる。


 頭がまだ少し痛い。

 手を伸ばすと、首に包帯が巻かれていることに気付く。



「お、起きた?」


 綺麗な銀髪に、豪華な緑の着物を着た青年が覗き込んでくる。


「る…る…すけ…さん……?」


「おはよう。ようこそ我らの千秋楽山へ。」


 にこやかに彼は笑い、Vサインを作る。


「桜は……?」


「桜ちゃんは隣で寝てるよ。しっかり手当てはしたから、大丈夫」


 横に目をやると、桜は心地よさそうに布団にくるまってぐっすり眠っている。

 その寝顔は、とても安らいでいた。


「悠真はもう起きられそう?」


「はい……えっと……俺……どのくらい寝てました……?」


 なんだか、とても長い、悲しい夢を見た気がする。

 そういう日は、長い時間眠っていることが多い。


「丸一日寝てたよ。まぁ、あれだけの事があったら……そりゃね?」


 そうだった……俺は……

 鮮明に思い出せてしまう、あの時の飛び散った血や悲鳴。

 忘れたくても忘れられないのが『残響』の辛いところだ。


「俺はここ、千秋楽山に住んでる仙人、琉琉助だ。改めてよろしく。こう見えてめちゃくちゃ年上ね」


 琉琉助は仙人……らしい。

 仙人と言うには若すぎるし、イメージと違い過ぎる。


「あの……ありがとうございました」


「うん。洗面所はあっち、便所もその近くにあるから。あと、広間はそこの襖開けたらすぐだから」


 廊下に向かって指を差しながら、丁寧に家の間取りを教えてくれる。


「じゃあ、先に広間でご飯の準備しておくから。朝からしっかり食べるのが健康の秘訣ってね」


「本当に……ありがとうございます」


 そこまで準備してくれてるとは……もはや旅館みたいだ。

 ちょっと申し訳ないような気もする。


「それと、大事な話もあるから、桜ちゃんも起こしておいて。ま、ゆっくりしてていいから」


 琉琉助は優しく笑いながらそう告げ、ゆっくりと襖を開けて部屋を出ていく。


 この至れり尽くせりとも呼べる待遇が、ありがたいのと同時に、恐ろしかった。


 彼の『波』は、表面上はとても美しく、凪いでいる。

 だが、奥底には、海底を彷彿とさせるような底知れないどす黒さがあった。


 彼の言う、「大事な話」とは、一体何なのか。


 心の奥底に湧き上がる胸騒ぎを、無視することはできなかった。



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