『GRIM』レポート〈DAY 10〉
以下は、「GRIM」に関連して人類側が得た情報をまとめたレポートである。
【前提】
・栃木県上空で異常な火球が閃光爆発を起こした日を〈DAY 0〉と記す。
・ここに記す内容は、日本時間で〈DAY 10〉23:59時点の情報を基準とする。
【GRIM】
・〈DAY 5〉に発見された、「Acu-SHE」の病原とされる微生物。
・NIID(国立感染症研究所)の前田研究員によるシングルセルゲノム解析により、「GRIM」の全ゲノムが解読された。これにより、「GRIM」が地球外生命体であることが確定した。
・AQUAチームでは、アメリカのルイズ・シーカー博士が掲げた「異星性古細菌」説が定着しつつある。
・「GRIM」真球状形態の耐性試験が行われ、以下の環境条件でも不活性化しないことが確かめられた。
・220℃の高温
・極低温(-270℃)
・真空
・即ち、「GRIM」を不活性化するには220℃を超える高温にさらす必要があり、感染生物の焼却処分は合理的な方法だと確かめられた。
・帝都大学の宇梶准教授により、「GRIM」真球状形態の外殻の成分分析が行われた。その結果、糖タンパク質の基礎構造の隙間に、亜鉛や鉄といった金属元素を壁材のように組み込む形で構成されていることが判明した。
・NIIDの比護研究官の監督の下、「GRIM」に対する網羅的な薬剤試験が行われた。その結果、既存の薬剤は「GRIM」に対して完全に無効であることが判明した。
【Acu-SHE】
・「GRIM」の感染によって発症する、致死率99.9%の死病。
・日本国内の被害:死者約26,000名(23:00時点の日本政府公式記録)
〈DAY 10〉茨城県北部久重川流域で新たなアウトブレイクが発生。
新たな死者は他に福島県の朱野川流域で多い。
茨城・福島の他に死者数の多い県を順番に挙げると、新潟、栃木、千葉、群馬である。
九州でも発症死亡事例が報告され、沖縄を除く日本全土に安全といえる場所はなくなった。
・海外の被害:死者約700名(23:00時点の各国記録集計)
朝鮮半島と中国の黄海・東シナ海沿岸地域を中心に死者が多く発生。
ハワイ諸島、北米、シベリア地域でもホットスポットの形成によって散発的に死者が発生している。
・生還者数
日本:26名
海外:1名
【ヒト以外への影響】
・瑞篠山で捕獲されたカエルや淡水魚を含む生物の大半が、NIID(国立感染症研究所)施設内で「Acu-SHE」を発症して死亡した。
・〈Day 10〉那実川流域で大量の魚の死骸が川を下っていることが報告された。
・これまでの情報を総合し、「Acu-SHE」はすべての脊椎動物に感染すると断定された。
【鯨類の大量死亡座礁】
・〈DAY 5〉早朝に三陸海岸で始まった鯨類(クジラ・イルカ)の死骸の漂着事象。
・東北〜北海道一帯における鯨類の死亡座礁はほぼ収束した。
・ただし、海岸付近には「Acu-SHE」に感染したクジラの死骸が多数埋却された状態であり、近隣住民から不安視されている。
・〈DAY 9〉朝方に、「GRIM」で汚染された海流の到達により、対馬海峡を発生源とする鯨類の大量死亡座礁が起こった。以下の地域で被害が発生。
・壱岐対馬を含む九州北部……〈DAY 10〉23:00までに合計で約500頭が漂着。
・韓国南部……〈DAY 10〉23:00までに合計で約650頭が漂着。
【日本政府の対応】
・〈DAY 10〉日本政府は記者会見で以下の発表を行った。
・降雨にさらされることで「Acu-SHE」に感染するおそれがある。不要不急の外出を控えること。
・全国の地方自治体に『Acu-SHE対応マニュアル』を配布した。自衛隊や政府の手が届かないことを想定し、各自治体で住民の命を守るために最善の行動を取ってほしい。
・沖縄以外の全国で、漁業および海産物の出荷禁止命令が公布された。
【日本社会への影響】
・政府発表の直後から、全国のスーパー・コンビニなどの小売店で以下の品目を中心に買い占めや盗難が頻発し、問題になっている。
・水、飲料品
・食料品、特に非常食となるレトルト・インスタント食品や缶詰類
・雨具
【国際社会への影響】
・〈DAY 10〉G7+オンラインサミットが開催され、GTRO(全球脅威対策機構)の設立を含む共同宣言が採択された。
・前例のない国際組織の誕生と、「Acu-SHE」と「GRIM」という脅威の認定が世界中で波紋を呼んでいる。
・また、那実川を下り次第に大きくなる魚の死骸の群れが、世界中の人々の恐怖を引き上げつつある……。




