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『GRIM』レポート〈DAY 8〉

 以下は、「GRIM」に関連して人類側が得た情報をまとめたレポートである。


【前提】

・栃木県上空で異常な火球が閃光爆発を起こした日を〈DAY 0〉と記す。

・ここに記す内容は、〈DAY 8〉23:59時点の情報を基準とする。


GRIM(グリム)

・〈DAY 5〉に発見された、「Acu-SHE」の病原とされる微小物体。

・NIID(国立感染症研究所)の研究チームによって「GRIM」個体の質量が約0.73ピコグラムと計測された。

 水よりも重く、水に対する比重は約1.39である。

 JAMSTEC(海洋研究開発機構)の六津(むつ)が考案した「虚潮(うつしお)」発生のメカニズムを裏付ける事実となった。

魚渕(うおぶち)虎吾郎がJAMSTECで行った実験によって、「GRIM」が海水中でも増殖していることが確かめられた。正確な倍加時間は不明だが、血中よりはかなり遅く、少なくとも数時間を要すると考えられる。

・カリフォルニア工科大のルイズ・シーカー博士によって、「GRIM」を〝異星性古細菌〟とする仮説が掲げられた。


Acu-SHE(アクーシェ)

・「GRIM」の感染によって発症する、致死率99.9%の死病。

・被害:死者約20,500名(23:00時点の日本政府公式記録)

 福島県の朱野川(あけのがわ)流域でクラスター感染が発生。会津若松市を中心に数百名の犠牲者が出た。

 関東地方で、降雨による感染と見られる事例が複数件報告された。

 四国地方の太平洋側でも発症死亡者が現れた。

 近畿地方以東で、生物ベクターに由来すると思われる汚染が拡散している。

・生還者数:21名


【ヒト以外への影響】

瑞篠山(みずしのやま)で捕獲されたヘビやトカゲの一部が、NIID施設内で「Acu-SHE」を発症して死亡した。

那実川(なみかわ)流域のペットショップにおいても、ヘビやトカゲなど爬虫類の発症死亡報告があった。

・以上から、「Acu-SHE」は哺乳類・鳥類に加え爬虫類にも感染すると判明した。


鯨類(げいるい)の大量死亡座礁】

・〈DAY 5〉早朝に三陸海岸で始まった鯨類(クジラ・イルカ)の死骸の漂着事象。

・〈DAY 8〉23:00までに東北〜北海道の太平洋沿岸に漂着した死骸の数は合計で約3,000頭。

 内訳はイルカが約2,400頭、クジラが約600頭。

・〈DAY 8〉23:00までにイルカ約2,400頭、クジラ約550頭が処理された。

・近畿地方の太平洋沿岸でも鯨類の死骸の漂着が見られるようになった。


【日本社会への影響】

・海岸封鎖と漁業および海産物の出荷禁止命令の範囲に、四国地方の太平洋側が加えられた。

・この日の政府会見によって、全国的な漁業及び海岸付近への出入りの自粛要請が発布された。

・給水停止措置が続く栃木・茨城の那実川流域において、熱中症や衛生環境の悪化が問題になっている。

 これに対し、行政は非汚染地域への避難を進めることで対応している。

・インターネットを含む各種メディアにおいて、政府への不信や責任を追及する論調が広がりつつある。


【国際社会への影響】

・AQUAチームによって、これまで「GRIM」や「Acu-SHE」に関して判明した科学的発見を報じる3つの論文が各分野のプレプリントサーバーにて公開された。

 日本で猛威を振るう死病と、新種の微生物様体の驚異的な性質に迫るそれらの論文は、世界の科学者たちに少なくない衝撃を与えた。


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