『GRIM』レポート〈DAY 7〉
以下は、「GRIM」に関連して人類側が得た情報をまとめたレポートである。
【前提】
・栃木県上空で異常な火球が閃光爆発を起こした日を〈DAY 0〉と記す。
・ここに記す内容は、〈DAY 7〉23:59時点の情報を基準とする。
【GRIM】
・〈DAY 5〉に発見された、「Acu-SHE」の病原とされる微小物体。
・「GRIM」は、Global Replicating Invasive Microbe-like object(全球増殖性侵略的微生物様物体)の略。発案者は帝都大学の宇梶慧准教授。
・グミ粒状形態、アメーバ状形態、真球状形態の3つの形態を取る。
・亜鉛やヘモグロビンを代謝する。
亜鉛の代謝は宇梶慧によって、ヘモグロビンの代謝はNIID(国立感染症研究所)の研究員によって発見された。
これらの代謝について、AQUAチーム内では「GRIM」が増殖のエネルギー源や自身を複製する材料、または真球状の芽胞を形成する材料として利用しているのではないか、という仮説が持ち上がっている。
・〝増殖〟に加えて〝代謝〟の性質が確認されたことから、AQUAチーム内では「『GRIM』は、ほぼ生物である」という見方が主流になった。
・宇梶慧の調査で、「GRIM」が地球外に起源を持つ間接的な証拠(クロムの同位体比など)が示された。
・「GRIM」の濃縮精製のため、宇梶慧が超遠心分離を用いた手法を考案した。NIIDでの実験によって、この手法の有効性が確かめられた。これは、今後の「GRIM」に関する研究の基礎になると考えられている。
【Acu-SHE】
・茨城県那実川流域を起点として発生した、致死率99.9%の死病。
・被害:死者約19,500名(23:00時点の日本政府公式記録)
近畿地方の太平洋側沿岸で新たに発症者が現れた。また、生物ベクター経由と見られる汚染は中部地方に拡大を見せている。
・生還者数:20名
【ヒト以外への影響】
・栃木や茨城などでカラスを含む鳥類の死骸の目撃例が増えている。
NIIDの調査によって、死因が「Acu-SHE」であることが確認された。これにより、カラス以外の鳥類も「Acu-SHE」を発症することが判明した。
【鯨類の大量死亡座礁】
・〈DAY 5〉早朝に三陸海岸で始まった鯨類(クジラ・イルカ)の死骸の漂着事象。
・〈DAY 7〉23:00までに東北〜北海道の太平洋沿岸に漂着した死骸の数は合計で約2,800頭。
内訳はイルカが約2,250頭、クジラが約550頭。
・〈DAY 7〉23:00までにイルカ約2,000頭、クジラ約300頭が処理された。
イルカは焼却、クジラは埋却にて処理された。
・関東地方や東海地方の太平洋沿岸でも、この日までに合計で50頭弱のイルカの漂着が見られた。
これらは全て、地元の警察や保健所等を主体とする活動によって焼却処分された。
【全球汚染予想】
・宇梶慧が作成した、「GRIM」による汚染の拡大・進行を予測するシミュレーション。
・海流や気流の動きに加え、主要な長距離移動生物群に重みを置いて生物ベクターの振る舞いを組み込んだモデルを構築した。
・AQUAチームや、アメリカの科学技術政策局、NASA関係者などの間で精度の高い予測だと考えられている。
・概要:
・〈DAY 20〉日本の国土全域が汚染される。
・〈DAY 45〉北半球の居住可能な土地の全域が汚染される。
・〈DAY 90〉南半球も含め、地上の居住可能な土地全てが汚染される。
・〈DAY 180〉地球全球が完全に汚染される。
【日本社会への影響】
・海岸封鎖と漁業および海産物の出荷禁止命令の範囲に、近畿地方の太平洋側が加えられた。また、中国・四国・九州地方にも漁業の自粛要請と、海産物の摂取に対する再度の注意喚起が出された。
・国民の間に強い不安が広がっている。
・〈DAY 7〉午前に開かれた政府記者会見の後、インターネット上で「Acu-SHE」や「GRIM」に関連する様々な終末論や陰謀論の活発化が観測されている。
・給水停止措置が続く栃木・茨城の那実川流域において、スーパーやコンビニなどで飲料品の盗難が頻発している。
【その他の日本政府の対応】
・栃木・茨城の那実川流域において「地の真名井作戦」が実施され、飲用利用が可能な複数の井戸が確保された。
一方で、各県の被災者に対し、県内の非汚染地域への避難も進められている。
【国際社会への影響】
・秘密同盟『プレアデス協定』に属する7か国の間で、上の「全球汚染予想」を含む日本側の情報の多くが共有された。これによって、同盟に属する政府首脳陣を中心に動揺と強い危機感が広がっている。




