人と機械の歩みの違いは
「ディブに行くって言ったけど、ユィレお前、そこの状況知ってるのか?」
「知りません。アップデートが正確に行われませんでしたので」
ダイラスは少しため息をついた。
「機械達に全面的に抵抗して街に機械を入れないようにバリケードまで作ってる。彼処は機械に占領されたり取り返したりをずっと繰り返してる」
少し目を細め、ユィレを見た。
「今は、人が勝っている。つまり、機械は入れない。お前は、どうやって街に入るつもりだ?」
「正面から入って......」
「わかってると思うが、なんでも武力行使するなよ」
「......」
黙り込むユィレの様子を見て再びため息をついた。
「いいか?今僕が考えたことだからそこまで高度なことは期待するな。だが、できるだけこれに乗っ取った行動をしろ」
ユィレが頷くのを見ると、ところでと言うように辺りを見回した。
「そろそろ夜になる。野宿の場所を探さないか?これもそこで伝える」
ユィレは首を縦に振った。
「了解しました」
そこからしばらく歩くと、廃家がポツンと1軒だけそこにあった。ダイラスはノックをしてみたが、反応はなく誰も住んでいないようだった。
中は獣に荒らされたような形跡はなく雨漏りをしそうな穴はあったが、それ以外は特に問題はなさそうだった。
「はあ......ユィレ歩くの早くないか?僕はとても疲れたんだが」
ものを地面に置き、そこにあった椅子に腰掛けながらダイラスは言った。
「ワタシは機械であなたは人間ですので。機械は疲れません」
ダイラスは返事をしなかった。
「そういえば、食事の時間を全く取っていませんでしたね。何か食べたいものはありますか?必要であれば獣を狩って来ますが」
「いい、それより寝る。明日にはディブに着く予定だったよな」
「そうですが、どうかしましたか?」
ダイラスは眠そうな欠伸をした。
「いや、じゃあ作戦を言うのは明日でいいか?眠くて」
「了解しました。ワタシもスリープモードに移行します。オヤスミナサイ」
ユィレが寝たのを見るとダイラスも瞼を閉じ、眠りに落ちた。
「っ!!!!」
ダイラスは眠っていたはずの椅子からソファから場所が変わって、ソファに寝かされていることに気づいた。
「オハヨウゴザイマス。良い睡眠は取れましたか?」
ダイラスは少し不快そうな顔をし、おはようと返した。
「起きていたなら、起こせば良かったものを」
「いいえ、人間は疲れを溜めてはいけません。ワタシは医療機械では無いので詳しいことは分かりませんが、よく寝られたのなら良かったです」
「お前、そのレンズ壊れてるんじゃないか?いつでも直すぞ?」
ユィレは少し目をつぶった。
「解析を行いましたがレンズに異常はありませんでした」
「あーあー知ってますよ、お前に冗談が通じないことぐらい」
ダイラスはもう何度目か分からないため息をはくと、言葉を続けた。
「昨日言ってた作戦だが、簡単だからパッとできるようにしてくれ」
「了解しました。どうすれば良いでしょう」
「僕の幼馴染って言う事にして入るぞ」
一瞬ユィレは固まったがダイラスは何事もないように話続けた。
「その腕のツギハギは白衣で隠せる。もうトートの情報が回ってることも考えると違う街から来たって言う方が都合がいい。お前は自分から機械ってバラシそうだから、喋れないって設定で行く。筆談しろって聞いてるか?」
「いえ、思ったよりも一般的な考えだったのでつい。ですが了解しました。ワタシは話せない、ダイスの幼馴染という設定ですね」
一般的と言ったところで少し眉が動いていたが、気の所為であろう。
「じゃあ、準備が出来たら行くぞ。ディブへ」
「了解しました」
そうして、ダイラスはしっかり朝食を食べ、荷物をまとめると、家を出て、歩いていった。
風の噂
ダイラスは機械嫌いでも手先が器用で機械を直せたりできると言っていたが、実はハッキングもできる。結構天才肌で、なんでも1回やればだいたいできるとか。