旅の初めに必要なのは
ユィレは鎮魂歌を演奏し終わると、ムイに向き直った。
「ダイスはワタシと旅をすることにしたようです。ムイ、あなたはこの後どうするつもりですか?」
ムイは小さく目を見開くと、穏やかに微笑みを浮かべた。
「そっか、ダイス行っちゃうんだ......あ、引き留めるとかそういうことじゃなくて、なんか、嬉しくて。やっと、前に進めたんだなって思って」
「そうですか」
「でも、俺は行かない」
そう言ったムイの瞳には強い決意がこもっていた。
「俺はこの街に残って充電場の管理をするよ。もう、絶対にこんなことが起こらないようにするためにね」
決意と少しの寂しさを含んだ瞳をまっすぐユィレに向け、万遍の笑みを浮かべた。
「頑張れ、ユィレ!!
俺はこの街トートからお前を全力で応援してる!!旅が終わったら戻ってきてくれ!!そしたら俺はお前を全力で褒める!!きっと、いや絶対大変だと思う。
でも!!俺は待ってる。絶対無事に帰って来てくれ」
ユィレは少しの間をおき、返事をした。
「そうですね。ワタシとダイスが無事であれば必ず帰ってくると約束しましょう」
「そうだな、僕は死ぬのはここって決めてるんだ」
いつの間に戻っていたダイラスも返事をした。
「準備は出来た。ユィレは行けそうか?」
「はい」
ユィレは敬礼をすると、振り返らず進んで行った。
「ムイ、寂しくなったらルックでもしろ。少しぐらいはつきあう」
そう言いダイラスもあとに続いて行った。
「余計なお世話だっつーの!」
ムイはそう言いながら腕を大きく振り、彼らが見えなくなるまでその場に留まっていた。
「ユィレ、どこに向かうつもりなんだ?」
歩き始めて少し経った時にダイラスは尋ねた。
「墓場と呼ばれた街。と言えば伝わるでしょうか」
それを聞くとダイラスは眉を顰めた。
「そこって今でもまだ争いやってるんじゃなかったか?」
「そのようですね。だからこそ、それを止めるために行くのです。戦争の終わらない、ディブへ」
ルック
ビデオ通話をしたり、メッセージをしたりできるアプリ。多くの人に利用されている。
機械同士の連絡に使う時もあるとかないとか