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拝啓 世界の続きを見るキミへ  作者: 狐の余命り
旅立ちには仲間を
2/13

終わりは始まりとなり得るのか

「世界は滅びた」

 『これは、きっと、争いが消えたということだろう。嗚呼、本当にここは争いの終焉なのだろうか?』


 それは、自らを確かめるように言葉を発した。

 「戦闘機体S-3057。最終接続日は終末152年。現在地は博士の家と推測」

 冷静に記録を整理していく。

ただ、それは他の戦闘機械とは少し違った。


「現在の情報取得のため、アップデートを行います」


 別に、感情を持っている訳では無い。


「正確なアップデートが行われませんでした。データを戻します」


 大して価値はないだろう。


「ワタシはユィレ」


かつて、博士と呼ばれた人物により貰った、ナマエを持っていた。それだけだ。


「博士の命令を遂行する、博士の助手」


 それ、否、ユィレの美しいガラスの瞳があるものに向けられた。

 ユィレの記録にある博士の部屋があったところ。

 保護プログラムがくまれ、守られているそのものに。


 ユィレは美しく光るそれに触れた。

ーー機体番号s-3057 認証しました

データを移行します

 あるデータがユィレに移された。

博士が最後に遺した記録、記憶。

 そのデータを再生した。


「ユィレ、ごめんね。僕はここで終わりなんだ。だから、必要事項だけ君に移行しようと思って」


 博士と呼ばれるその人は若い男性のようだ。


「さて、今ここのユィレは戦闘中だよ。でも、君は絶対戻ってくるよ。僕との約束だから」


 そう言った博士はボロボロだった。


「知ってると思うけど、この戦争で世界は滅びる。だから、君は今いる世界を修復して守って欲しいんだ」


 博士は少し悲しそうに付け加えた。


「ついでに僕の遺体も探して埋めてもらえるかい?野ざらしは少し嫌なんだよね。」


 最後には満面の笑みで。


「このデータは世界の情報を取得し続け、更新しているはずだから、迷うことはない、と思う。ただ、戦争の影響で傷が入っていたりしたら、上手く君に情報を渡せないかもしれない。でも、君にしか頼めないんだ。ユィレよろしく頼む。そして」

ーー今までありがとう


 映像は切れ、今の世界の地図を写し出した。しかし、損傷があるのかほとんどの部分がはっきり表示されず、詳細は分からなかった。

そんな中、ひとつ、黄色の光がある場所を示していた。


「了解しました。博士、無事命令を遂行しましょう」


 そうして、ユィレの旅が始まった。




 ユィレは自身を簡単にメンテナンスすると、白衣を羽織り、簡単な緊急セット、よく使っていた武器を数点、保存食、バッテリーを持ち博士の家を出た。

 黄色い光は相変わらず同じ場所を指していた。


「テスラのあたりが近いか……?!」


 生命体の反応を感じたユィレは武器のひとつを構え、辺りを警戒した。

 反応があった辺りを見ると、そこには少年がいた。


「わっ!!だ、誰だ?」


「ワタシはユィレ。博士の助手です」


 武器を下ろし、そう答えた。


「ユ、ユィレさん。俺はムイ・バース」


「なんとお呼びすればよろしいでしょうか」


「あ、えっと、ムイって呼んで」


「了解しました。ムイ、何をしていたのですか」


 ムイはハッとした様子で後ろを振り向き、焦ったような表情を浮かべた。


「さっき、ドラゴンが出てきて、それで助けを呼びに来たんだ!!助けてくれ!!そうじゃないと、母さん達が……!!」


 ユィレは少し思案すると、ムイを抱え走り出した。


「こちらであっていますか?」


「はっ?!え?あ、あってるよ」


「では、舌を噛まないようにお気をつけてください」


 さすが戦闘機というところだろう。走るのはとてつもなく速く、ムイは誤って叫び、舌を切ってしまわないように必死だった。

 ドラゴンのいる場所に着くと、男性と女性が戦っていた。


「父さん!!母さん!!」


「ムイ?!なんで戻ってきた!!」


 そんな様子はお構い無し、というようにスルーし、ユィレはドラゴンに向き合った。


「お嬢さん?!危ないぞ!!」


「問題ありません。ワタシは機械ですので」


 そう言って持ってきた銃でドラゴンの頭部に弾を乱射した。


「グオオオオオオォォォォォォォオ!!!!」


苦しそうに手を動かし弾から身を守ろうとしているすきに、ユィレは後ろへ回り剣で首筋を切った。


「ガオオオオオオオアアアアアアアアァァ!!!!!!!!」


ドラゴンは断末魔を上げ倒れた。ほんの数分の時間だった。ドラゴンの攻撃はユィレにかすりもせず、一方的だった。


「ユィレさん!!大丈夫か?!」


「全く問題ありません。それより、ワタシに敬称は必要ありません。ユィレとお呼びください」


「わ、わかった。ほんとに怪我はないんだよな?ユィレ?」


「はい」


 ムイはとても心配そうにユィレを見ていた。

ムイの両親は顔から血が引き、青ざめたような表情をしていた。


「申し訳ございません!!感情を抱いてしまいました!!罰は受けます!!なので、どうか、ムイだけはっ……!!」


 地面に頭をつけ、必死で訴えていた。怯えるように、懇願するように。


「?どういうことでしょう?」


「戦闘機械様方により、私たちは感情を抱くことを禁じられております。ご存知ないのでしょうか?」


 ユィレは意味がわからないというような顔をした。


「ここは、どうなっているのですか?ワタシは最近、再起動したばかりなのでよく分かりません。教えて頂けますか?」


 両親はそれは驚いた表情で頷いた。


「もちろんです。私共の知ることは全てお伝え致します」


 その2人の話によると、戦争を生き延びた人はどこの街でも戦闘機械に支配され、二度と戦争を起こさないように、感情を抱かせないようにさせられているらしい。


「戦闘機械は命令がなくては行動しません。誰がそのような命令をしたかご存じでしょうか?」


「申し訳ありません。この街にいるのは機械様方のみで、ちからになれず申し訳ございません」


 ユィレは博士より世界の復興、守護を命じられていた。守護の役割を果たすためユィレは戦闘機械を倒すと決めた。


「戦闘機械の充電施設はどこですか?」


「ここの街の中心にあります」


 ユィレは武器を持ち直し、その場所へ向かおうと足を進めた。


「ちょ!ユィレ!行くつもりなのか?!」


「もちろんです。私が博士に命じられたのは世界の復興、そして守護。人々が苦しんでいてはいけません」


「それなら俺も行く!」


 ムイの両親はムイ縋るように必死で止めた。


「ムイ!足でまといになるだけよ!」


「そうだぞ!お前は大人しく待ってろ!」


 ユィレは両親の我が子を守りたいという気持ちがわからない。


「問題ありません。ワタシは1人くらい守って戦えます」


 両親には冷酷な言葉だっただろう。

しかし、ユィレは機械であるため、そんなに感情は知らない。


 ムイはニカッと笑った。


「大丈夫だって!俺がみんなを解放するんだ!ユィレ!道案内は任せろよ!」


 両親は諦めたように、懇願した。


「お願いします……どうかあの子を守ってください。本当に、お願いします……」


「了解しました。ムイを守るという命令、確かに遂行致します」


「そんじゃ!行くぞ!」


 ユィレはムイに手を引かれ、進んで行った。


ドラゴン:体長3〜10m程

小型のドラゴンは民間人でも対処可能だが、大型のものになると専門機関に依頼し、対処してもらう必要がある。戦争にも利用されていたとかないとか

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