表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿版有】気まぐれ魔法店  作者: 春井涼(中口徹)
Ⅱ期 二正面戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/41

第二話蛇足

載せ忘れてたので割り込み追加。

 十人の下級悪魔を掃討した細川は、『白兎』に後処理を任せると、精霊の目を通じてライの行動を見ていた。

 総合魔法適性が高く、契約者である細川は、精霊たちの視界を基本的には自由に見ることができる。唯一の例外は、大精霊であるライの視界だ。なので、細川はライが連れている精霊の視界から行動を知ることになる。もちろん、精霊たちの承諾を得た上でだ。

 そうして中略、ライが下級悪魔と相対する。

「後輩を死なせる気はないからな」

 消耗した零火を見て、彼は一瞬で判断を下す。

 魔法陣を開いて仮想空間に飛び込み、精霊術の風を使って飛んでいく。

 現地に着くと、既に戦闘は終わっていた。ライは風の力で戦闘の跡を消し、零火は意識を失ってゆずなに支えられている。彼女は泣きそうな顔で零火を抱き抱え、時折放心したような声で敬愛する先輩に呼びかけていた。敬愛される先輩の方は、今のところ、目を覚ます気配はない。

 細川はすぐにでも少女たちの元へ行って安心させてやりたかったが、心情を抜きにしたとき、どうやら優先事項は下になるらしい。如何(いかん)せん、氷のスロープは目立ちすぎた。

「裕兄い……」

 ゆずなが細川の姿を視界に捉えたようだ。申し訳ないが、今は無視する。

「【コード『ι』、風切の即時結界】」

 風の防音膜が、スロープを囲む。続けて詠唱。

「アル・マーニャ」

 爆炎がスロープを破壊し、煌めく氷が舞い散る。防音膜の内部を揺蕩(たゆた)い、校舎下部からの視線を一時的に遮断。その間に、細川は零火を抱えるゆずなの元へ赴いた。

「悪魔は倒せたか?」

「うん、そこの狸さんが」

「詳細は後で聞こう。零火に関しては問題ない。疲れて寝ているだけだろう」

 地面に転がされた氷剣を見て、判断する。ただの氷だ。振り回すには、彼女の体力がもたないだろう。

「こいつは俺が精霊病院に連れて行く。寝かせるにはちょうどいい。保健室では状況の説明がしにくいからな」

「ほんとに、大丈夫?」

「まだ、心配か?」

「うん……」

 あまりに突然のことだったからだろう。ゆずなはなかなか、状況を呑み込めないようだ。細川も三年前なら、同じように思ったに違いない。信用が足りないのではないはずだ。直感的に。

「まあこれに関しては議論しても仕方ない。それより、一つ頼まれてくれないか」

「……?」

「こいつの荷物を回収してきてくれ。俺はそもそも、本来この場にいる人間じゃない。関係の説明が面倒だ」

「分かった。先輩の荷物、持ってくる」

 眠り続ける零火の身体を引き取り、ゆずなが立ち去ったのを確認すると、細川は物陰に隠れ、ラザムを呼び出した。マナによる魔法陣。ちょっとした自由研究のようなものだ。

「──ここは、細川さんが以前通っていた中学校ですよね? 零火さんも同じだったんですね」

 声量を抑えているのは、零火に配慮してのことだ。気遣いのできる天使である。

「頼みたいことは二つだ」

 細川も声を抑えている。零火に対する配慮と、無断で敷地内に入り込んだことに対する引け目だ。

「一つ目、高校から俺の荷物を回収してきてほしい。訳あって、置いてくるしかなかった」

「承知しました。もう一つというのは?」

「こっちはどこまで話すべきか、線引きが難しいんだが……」

「秘密は伏せたままで構いません。指示だけいただけば、私は動きますから」

「それは助かる。多分高校の周辺にいるはずだ。学校敷地内かもしれないな。『白兎』というコードネームの女性に会って、暗号を伝えて欲しい。機密性の高い仕事でね、連絡先を知らないんだ」

 あるいはないのかもしれないが。

「黒い服で、背中に伸びる黒髪の女性だ」

 思えば、『白兎』というコードネームのくせに、白い要素がほとんどない。

「私も知らない方なんですが……?」

「だろうね。端的に言えば、堕天使討伐のために動いている。俺たちの味方だ」

「なるほど。言ってましたね、堕天使討伐の目処がたったと」

「ああ、その話で間違いない。暗号は──」

 細川は、白兎に伝えられた法則の暗号を伝えた。

「──以上だ」

「分かりました。この後、細川さんは?」

「俺は零火を精霊病院に連れて行ったあと、頃合いを見てこいつを家に返す。君はさっき頼んだことをやったら、もう帰っていて構わない」

「承知しました。では」

 ラザムは再び魔法陣に消える。細川の腕の中で、零火はすやすやと眠っていた。


 ゆずなが零火の荷物を回収し、倉庫付近に戻ると、既に細川たちは姿を消していた。回収しろとは言われたが、一体これはどうすればいいのだろうか。きょろきょろと周りを見ていると、後ろから声をかけられた。

「キミが、川端ゆずなちゃんかな?」

 驚いて振り返ると、そこにいたのは一人の少女──零火と瓜二つの姿をした、知らない人物だ。容姿はよく似ているが、声と話し方が決定的に違う。自然、恐怖が湧き上がった。

「……そう怯えられるのは初めてじゃないんだけどね、どこまで信じてもらえるか分からないけど、私はキミに敵意はない。ちょっと手伝いをしに来たんだ。悪魔一人、早速倒してくれたのは僥倖(ぎょうこう)だった」

「は、はあ……?」

 いまいち状況が呑み込めない。細川なら、これを混乱なく受け入れられるのだろうか。少なくとも、平和に生きてきたゆずなには不可能だった。

「彼に連絡をもらったからね、その子が悪魔との戦いで消耗し、眠ってしまったことで起こる不合理は私が片付ける」

 よくわからないが、荷物を渡すよう言われたので、そうすることにした。細川の名前を出されたのも理由だ。少なくとも、敵対者ではありえないだろう。目の前にいる”彼女”が細川の味方なのか、あるいは細川が”彼女”の味方なのかはわからないが……。多分、訊いても答えてくれないだろうということは、会話の端々に感じられた。

「物分かりはいいようだね。キミも私の協力者にしたいところだーぁけど、彼に怒られそうだし、やめておくよ。彼女のメッセンジャーにしたいところだったけど」

 半ば独り言のように呟いて、目の前の”彼女”は立ち去った。ゆずなには、その呟きの全てを理解することはできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ