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v3.0.6 - 登録

 ……ふぅ。

 呼吸を整えて、前にLINCを入れる時にも使ったアプリストアを開く。

 よくよく見てみれば、LINCの時と同じように「はじめてのmGlassアプリ」の枠にそれらしいアイコンがある。

 黒地に「Z」と書かれたアイコン。『短いメッセージでやりとりするSNS』という解説文。

 うん、これに違いない。


 早速そのアイコン横の「入手」を押す。

 しばし待つと、インストールが終わったのだろう。「入手」が「開く」に切り替わったのでそのボタンを押した。


 と、真っ黒な中に「Z」のアイコンが浮かぶ起動画面の後、四角いスクリーンの中に「世界の今をみつけよう」というよくわからないキャッチフレーズと共に


====

[ Apricotアカウントで続ける]

[ Googolアカウントで続ける]

---- または ----

[ アカウントを作成 ]

====


 というボタンが表示された。


 ムック本に書かれていたものとは色や置き方が少し違うが、表示されているボタン類は同じだ。

 とすると……えっと、多分この「アカウントを作成」押せばいいんだよな。

 俺は恐る恐る「アカウントを作成」に目線を向け、OKのジェスチャーをした。


 すると画面が切り替わり、


====

【名前】

【電話番号またはメールアドレス】

【生年月日】

====


 という表示になった。

 ここはムック本に書かれていたのと同じ。

 名前のところは、本名じゃなくてもいいと書かれていたので、一旦「匿名希望」としておく。

 電話番号は当然の事ながら登録したくなさしかないので、LINCと同じくメールアドレスでの登録にしよう。


 学校のメールアドレス……は、つい先日痛い目を見たところだ。

 変なメール届いたら嫌だし、迷惑メールが一気に増えたりすると、迷惑メールのチェックが大変になる。

 そしたら……例の事件の後に親から渡されて、本当に必要な時(主に親とのやり取り)で使っている個人のメールアドレスのほうにしておいてみようかな。

 パスワードは……いつものでいいか。


 俺はあたふたと手間取りながらメールアドレスとパスワードを入力し、登録ボタンを押した。


 画面が切り替わり、「認証メールを確認してください」というメッセージと共に入力欄が表示されたので、なるほど……と思いながらメールアプリを確認。六桁の数字が書かれたメールが届いていたのでそれを入力して送信する。


 入力が終わると自動で画面が切り替わり、「名前を入力」という画面になった。


 ……あれ?

 名前は最初に入力したような?


 ……ああでも英数字だけ、って言ってるし。

 これがムック本に書かれてた、サイトで@マークつきで使うID的なものになるのかな?

 何やらランダムっぽい文字列が自動で入っているし、ひとまずはこのランダムの文字列のままでいい気がする。

 後で変更できる、って書いてあるし、必要になった時に変えればいいだろう。


 「次へ」のボタンを押すと、今度は通知の設定がどうとか興味のあるトピックがどうとか聞かれた。

 正直、めんどくさい。

 とはいえここで止めるわけにもいかないので、適当に選んでさらに次に進める。


 と、リストの中から誰か一人以上フォローするように、という画面になった。

 えっと……フォローとやらをするとその人が投稿したものが見られるようになる、だったっけ……?

 じゃあ多分、何かしら興味ある人をフォローしておくといいんだよな……と思いながらリストを下にスクロールしていくと、好きで読んでる漫画の作者さんの名前を見つけたので、フォローボタンを押してみた。

 それ以上は何となく怖いのでスルーして次に進む。


 どうやらこれで登録の手続きは終わったらしい。

 フォローボタンを押した作家さんの投稿らしきものが表示された状態の画面に切り替わった。


 ……よ、よし。

 登録はできた……っぽい?


 画面が切り替わり、タイムラインと呼ばれる、フォロー中の人の発言が流れてくる画面になった。


 ……へぇ。

 あの漫画家さん、ネットだけでやってる連載なんてあったのか。

 読んでみたいけどネットか……

 ……

 ……ってそんな事してる場合じゃなかった。

 早く鍵かけておかないと。


 付箋を貼っておいたムック本のページを開き、慌てて「鍵アカウント」とやらの設定をする。

 えっと、「設定とプライバシー」から「プライバシーと安全」の「オーディエンス」の……

 あった。「ポストを非公開にする」。これだ。

 これにチェックを入れて、と。


 これでいいのかな。

 確認のため、本に書いてあった手順に沿って「プロフィール」のページを開いてみる。

 「匿名希望」とした名前の横に鍵マークは……ついてるな。

 あとはフォロワーの数を確認して……と。


 ……あれ?

 「1」になってるのは何でだろう。

 この設定をした場合は、俺をフォローするには俺の許可が必要になるはずなんだけど……。

 設定してる間にフォローされたとかそういう事か?


 じゃあ、とその「1」の数字をタッチして、フォロワーのリストを確認してみる。

 と——


 ……ああ、うん、なるほど?


 胸の内に「コワイ!」という感情がよぎったが、もはやそれも一瞬の事でしかない。


 LINCあたりで見覚えのありすぎるアイコン。

 「mint」という名前。

 そしてmint_89というIDが目に入り、俺は全てを察せざるを得なかった。


 ……ま、まあ、そうなりますよね。

 だってミントさんだしね。

 俺がかける鍵を全て破壊して侵入してくるのがミントさんという存在だ。

 っておい、ミントに「さん」をつけるなデコ助野郎。色んな危険が危ないぞ。


 とはいえ全てがミントの思いのまま、というのは面白くない。

 何か抵抗できる余地はあるのか……と画面を見ていると、ミントの名前の横の「フォロー中」という表示に目線を合わせた時に、そのボタンが「フォロー解除」に切り替わる事に気がついた。

 試しにそのボタンを押してみる。

 と、ミントはリストからあっさり消え、フォロワーの数字が「0」になった。


 ……が、他のところの様子を見ようといくつかの画面を経た後、プロフィールページに戻ってみると、ムック本にあったフォローリクエストやフォロー許可のステップも何も経ないまま、フォロワーが「1」になり、フォロワーのリストにミントの名が復活していた。


 ……だろうと思った!


 ま、そうですよね。何せミントだしね。

 抵抗は無駄だ、と。


 ……ほんと、どうなってるんでしょうね。

 ここまでくるともはや恐怖の心も、驚く気持ちすらも湧いてこない。

 これこそが当たり前の日常、という感覚になりつつある俺ですが、それで大丈夫そ?


 ……ま、まあいい。

 どう対策しようが、ミントにはどのみち全部筒抜けなのだし。

 こんな事にかかずらってる場合じゃないのだ。

 いち早く七橋さん&采里の見ている情報に近いものを把握するのが今の俺のミッション。

 それ以外はノイズ。

 ミントの事など些事だ。


 そう自分に言い聞かせ、俺は「Z」の世界にダイブした——

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