v2.0.23 - 静けさ
翌朝。
昨晩のことが気になって、俺は起きてすぐにARグラスをかけ、メールの着信を確認した。
新着メールは……なし。
念のため迷惑メールフォルダも確認してみるが、そちらにも小堀田さんからのメールは届いていない。
ま、まあ、いいか。
必要ならまた何かしら連絡があるだろうし。
それよりも気になるのは――今朝、未だにミントからのメールもLINCメッセージも何もないことだ。
昨晩ミントは「親から呼び出し」とか言って珍しく家に帰っていった。
こういうパターンの時は、朝から重たいメッセージが届いたりして何かしら面倒事が発生するのだが、今日は何もない。あまりに静かすぎる。
……嵐の前の静けさ、とかじゃないといいんだけど。
色々と何となく腑に落ちないまま、俺は朝の支度をした。
服を着替え、パンを焼いて軽い朝食を済ませる。
ミントとのやりとりが何も発生しない朝、というのも久しぶりすぎて、無駄に早く支度が済んでしまい、なんとなく普段は見ない朝の情報番組を見ていたら、占いコーナーで俺の今日の運勢が最下位だった。泣きたい。
まあいいや、と靴を履き、恐る恐る家の扉を開ける。
そこにミントは……いない。
登校中に後ろから「ダーリーン!」と言って飛びついても来ず、LINCメッセージもメールも何の着信もない。
いくらなんでも静かすぎる。
こんなに静かな登校は、朝はミントに侵入されて以来、初めてだ。
ここまで静かだと、逆に心配になってくる。
「親からの呼び出し」とやらで何かあったのだろうか。
……ほんと、嵐の前の静けさ、とかじゃないといいいんだけど……。
結局そのままミントは登場せず、無事、学校に到着してしまった。
校舎の中に入っても、ミントの気配はない。
代わりに……何か普段よりも視線を感じるような……?
チラチラと俺を視てる、そんな視線を感じる。
……また何か、名札とか変わってるのかな? と心配になってトイレに寄って鏡を見たが、特におかしい様子は無い。
ってこんな事を心配しなくちゃいけないって時点で大分アレなのだけど。
そしてそのまま1日が過ぎ、下校の時間になり――
その日、ようやく初めてのミントの姿を、俺は廊下に見た。




