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v1.0.16 特定しますた★

 とにかく、クラスの空気が悪い原因の一つは、この掲示板だろう。

 それは、理解した。


 なぜそんな掲示板の存在を報せるメールが自分のところに届いたのかは分からないけど、SNSでオンラインになった事が話題になっていたから送ってきたとかそういう事なのかもしれない。


 それにしても……一体誰があんなもの作ったんだろう。

 そして誰が書き込んでるんだろう。

 それを特定して、犯人にビシっと言ってやって、クラスに漂う微妙な空気をカイゼンできたら、あわよくばヒーローっぽい感じで褒め称えらえれて、ダークナイトからナイトにジョブチェンジな感じになって、クラスのみんなと青春とかできたりしないだろうか。

 無理?

 聖騎士になるには徳が足りなすぎで「やってもらった事はありがたいけどなんかキモいから無理です」とかってアンタッチャブルな感じの扱いにされる?


 って、取ってもない、どう考えても取れなさそうな狸の皮の儲け話考えても仕方ない。

 そもそも掲示板を作った人とか書き込んだ人なんて、特定できるのかすらよくわからない。

 昔、ネットの掲示板サイトで「特定しますた!」なんて、個人情報を特定した風な事を書かれるのを何度か見たことがあるけど、あれは実際に特定したんじゃなくそういうネタとして書き込んでいたものだった。

 もし俺にミントくらいの技術力があったら、それを特定できたりするんだろうか。


「なあなあミントさんや」

「なんだいダーリンや」

「たとえば掲示板の書き込みとか見て、それが誰の書き込んだものなのか、とか特定することってできるものですか」

「んー、その掲示板によるかも。とりあえずそんなに簡単な事じゃないよ」

「そうなのか」

「何かひどい事されて訴える、とかだったら、法の力を借りて特定することもできるし、あとは殺人予告みたいな事件っぽいのだったら、しかるべき手段で通報して警察とかに調べてもらうのが正解なんだけど」


 なるほど。そういえばあの事件の時も開示請求だのなんだのでひどい書き込みをした相手を特定するだの何だのっていう話があったような……。


「ダーリンの様子からして、そういう話じゃないよね」

「うん」


 今回は法的にどうこう、っていう話じゃない。

 単にクラスのちょっとした問題行動の犯人を特定したいだけだ。司法様にわざわざ登場いただくような話ではない。


「だと、結構難しいかも」

「そうか」

「そういう場合は……どっちかというと、書き込んでる内容から探っていくほうが簡単かもね」

「というと?」

「書いてる内容から、たとえば男なのか女なのか、みたいなことはわかる場合もあるし」

「ああ、なるほど」

「写真が投稿できるような掲示板だったら、写真から好きなものの傾向とか、住んでるエリアとかわかったりする事もあるし、言葉の使い方にもクセってあるから、そういうクセで何かわかることもある」


 書き込みの内容からプロファイリングしていって、犯人像を暴き出していく感じ、ってことか。


「その辺何かつかめたら、今だとSNSで……ってあんまり教えるとダーリンがネットストーキングとか始めそうだから、これくらいにしとくけど」

「……」


 こいつは俺をいったいどういう人間だと思ってるんだ……。

 ネットストーキングだなんて、そんな事できるほどの技術力も度胸も持ち合わせちゃいませんよ畜生。


 まあでもミントの言いたい事はなんとなくわかった。

 犯人像が見えてきたら、あとは実際の人が誰かわかる場所、今回で言えば表のほうのチャットと照らし合わせれば、書き込んでる人間が誰かを推測する事はできるかもしれない。


 もちろん、犯人が誰か別の人を装って書き込んだりする可能性もあるので、100%完全に犯人を突き止められるわけじゃないが、その辺はまた別の手段で確認すればいい。


「まあ、何にしても、本気で調べようとしたら、結構調べることはできたりするから。ボクの事が好きだからって変なポエムとか投稿したらダメだよ?」

「するか!」


 ポエム……は中学校時代に確かに書いてた事あるけど。

 ……そうか、俺が中学生時代にネットにどっぷりハマってたら、あのポエムをネットに公開して見事な黒歴史を構築していた可能性も……。

 インターネット、なんて恐ろしい場所なんだ……。


「そいえばダーリンは長いことネットとか使わないようにしてたみたいだったし、ほんと探すの苦労したなぁ……」

「へ……?」


 待て待て待て待て。

 なぜその事――俺がネットを長いこと使ってなかった事を知ってる?

 そんな前から俺のことを知ってたって事なんだろうか。

 それに、「探すの苦労した」って、どういうことだ。ミントはたまたま俺のグラスに侵入してきたわけじゃなくて、俺をはっきりと狙い撃ちしていたって事なのか?

 そうなると、何だか色んな考えの前提が変わってくるわけなんですが……。


「あ……なんでもない!」


 あからさまに慌ててる様子のミント。こいつがここまで慌てた感じになるのは、初めて見る気がする。


「にしてもダーリン、なんか調べ物?」


 またいつぞやの如く、あからさまに話を逸らすミント。


「頑なに見ようとしてなかったWebとかも見てるっぽいし」

「……ちょっと、な」

「あんまり危ない事しちゃだめだよ?」

「オカンか。……それよりさっきの話もう少し詳しく伺いたいんですが」

「さっきのって何の話? ボクのスリーサイズなら秘密だって言ったよね」

「そんな話はしとらん……。俺が中学時代にネット触ってなかった事、何で知ってる?」

「そんな事、ボクの手にかかれば簡単な事だし」


 確かに、ミントくらいのITスキルがあるなら、俺の過去を調べるくらいのことは朝飯前だろう。でも、さっきの一言はそういうのとはちょっとニュアンスが違っていたように思うのだけど。

 プレッシャーをかけるように無言でじっと見つめる。

 するとミントは「あ、そろそろ行かなきゃ」と言って、ふわっとその場から消えた。

 ……逃げおったか……あいつめ……。


 まあ、ミントの事はまた問い詰める機会もあるだろう。

 ひとまず掲示板の事はちゃんと聞けたし、プロファイリング的な方法があることもわかった。また少し裏掲示板のほうをじっくり読んでみよう。


 そう考えていた矢先に、「ポーン」という音が耳元で鳴り、メールの着信を知らせた。

 ほんと、今日はよくメールが届く日だな、と思いながら、メールアプリを立ち上げる。


 新しく届いたメールのタイトルは、またしても「1-Cの秘密」――

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